ネヴァーランドの女王
2010年 02月 10日
メアリアン・バーバラ・カーステアズ、通称ジョー・カーステアズという、大富豪の女性の伝記。
見開きの説明には「アメリカ生まれのレズビアン。モーターボートレースの英国代表として活躍」などとある。
これだけだとさしてそそられないのだが、新潮クレスト・ブックスというのは、裏表紙に推薦文が載っているのである。
もし、今世紀のある時代にタイムトリップできるとしたら、私は迷うことなく1920年代を選ぶだろう。1920年代。この言葉にやられた。
ジョーは1900年生まれ。自分を女だと思ったことが一度もなかった。今やよく知られるようになった「性同一性障害」だったのだろう。彼女にレズビアンの手ほどきをしたのは、オスカー・ワイルドの姪なんだとさ。舞台はパリ。第一次世界大戦で痛手をこうむりながらも、最後の輝きを放っていたパリ。だからいろんな人が集っていた。アメリカの大富豪の跡取り娘も。
かつ、戦争で多くの男性が命を落としたため、女性の労働力が必要とされていた。
このパリの描写はかなり個人的にツボ。というのは、ココ・シャネルとリンクしたから。当時の社会的風潮の中で、働く女性のための新しいファッションを生みだしたのがココ・シャネルだったのです。。。
脱線しました。
で、そんな中、ジョーは充実した20代を送る。
生来の乗り物好きで、モーターボートに入れ込み、湯水のごとくお金を注ぎこみ、自らモーターボートレースに出場する。
でも、ついにチャンピオンにはなれずに終わる。
そうこうしているうちに、「やっぱり女は女らしく」という風潮になり、自分の居場所を失ったジョーは英領西インド諸島の島を買い、そこに自分の王国を作る・・・
まあそこそこ面白いのだけれど、所詮は暇とお金をもてあましたドラ娘の生涯なわけで、感動するというわけにはいかない。そして、言い古された言葉だが「お金では愛は買えない」のだな、という気分になる。欠落感が伝わってきて、ちょっとつらい。いちばん引いたのが、彼女の無二の親友トッド・ウォドリー卿。これは人間ではなくて、昔の愛人からプレゼントされた人形なのです。どうです、引きませんか?
ジョーの周囲の人間の多くは、麻薬中毒で亡くなっている。大金持ちで働く必要がないという境遇で、前向きで健全な人生を送るのは、非常に難しいことなのかもしれない。そんな中、決して麻薬に手を出さず、93年の生涯をまっとうしたジョー。これはもしかしたら偉いのかも。
というわけで、そんなにお薦めというわけではないのだが、この本の222ページの1文をご紹介するのは私の義務なのだろう。
こうした海賊ゲームには、アーサー・ランサムの『ツバメ号とアマゾン号』の気分も多少入っていた。おお、ランサムはいろんな人に影響を与えたのね!と、感慨を覚えるのだが、この病的なジョーがナンシイだなんて、考えたくもない。だからあんまり嬉しくない。
ここで一句。
嬉しさも 中くらいなり 言及も・・・ひじょーにおそまつ!
# by foggykaoru | 2010-02-10 20:31 | 伝記・評伝 | Trackback | Comments(0)

