おバカさん

遠藤周作の小説。
私が子供のころ、遠藤周作は「違いのわかる男」としてテレビCMに登場する、「超」がつくほどの売れっ子小説家だった。そのせいで、とてもよく知っているつもりだったのだけれど、思い返してみたら彼の小説は最晩年の「深い河(ディープ・リバー)」ぐらいしか読んだことがなかった。

この作品も題名だけは昔から知っていた。
そして、モデルとなったネラン神父の本のほうを先に読んでしまったために、読まないうちから内容を知っている気になっていた、、、のだが、読んでみて驚いた。
意外な内容だったし、しかも予想をはるかに超えて面白かった。

本人が認めているのだから、確かにモデルはネラン神父なのだろう。
でも、この作品に登場する「おバカさん」は、まるきり違うタイプの人物なのだ。
共通するのは、フランス人だということぐらいで。

でも、考えてみたら(考えなくてもわかるのだが)小説はフィクションであり、想像、もとい、創造なのだ。
だから、実在する人物に触発されたとしても、結果的にまったく違う人物像を創造することもあるし、創造することができてこそ、小説家なのだともいえる。
遠藤周作ってただCMでコーヒーを飲んでただけじゃなくて、ほんとうに優れた小説家だったのね・・・と今さらながらに認識した次第。

この作品は文庫化されたのが昭和37年なので、最初に新聞小説として連載されたのはそれよりもさらに数年前だろう。だから、世相などには古さを感じる。でも逆にそこが興味深かったりもする。

ジャンル分けすれば「ユーモア小説」だが、奥底ではキリスト教精神、信仰といった、カトリック信者であった遠藤周作自身の人生のテーマに結び付く。
でも、前述の「深い河」のような、正面切って真面目に信仰を扱った本に比べて内容が浅いとか、受ける感銘が薄いとかいうことでは決してない。
それどころか、キリスト教を信仰しない一般読者の心に刻印を残すのは、むしろこの作品のほうなのではないかと思う。少なくとも私は、こういう小説のほうが素直に感動できる。


私が読んだのは角川文庫の古本。どうやら絶版状態のようで。
新刊で買うならこちらのようです。
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by foggykaoru | 2009-09-25 23:16 | 普通の小説 | Trackback | Comments(16)

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Commented by tabinekophoto at 2009-09-26 00:47
あ、かおるさんのブログでも遠藤周作ですか(笑)。
私はこの人の本をあまり読んでないのですが、ちょうどこのあいだ『さらば、夏の光よ』(遠藤周作の青春小説)を読み返していて、面白いなあと思ったばかりです。
この本も取っつきやすそうでいいですね。
Commented by むっつり at 2009-09-26 01:09 x
私は「海と毒薬」「イエスの生涯」「キリストの誕生」の三作しか読んでいません…
狐狸庵先生と呼ばれて、ドクトルマンボウ(北杜夫)と人気を二分する存在でしたのに
Commented by hajjikko at 2009-09-26 01:29
遠藤周作は読んだことないなぁ。。。
でも、映画は見た。。。
(けど。。。霧のように(笑)忘れて・・・)

ガンジスの朝日のシーンがあったと思う。。。

宗教のひとつとしてのキリスト教が、テーマにあったと思うけど、
ガンジスのベナレス(バラナシ)で、出演者たちが何を感じたか、
っていうような内容しか憶えていない。。。

自分も、何度かベナレスで朝日見ていて、
追体験のようなつもりで見にいったんだと思う。。。

監督が社会派の熊井啓だから、
なんかドキュメンタリータッチだったんではなかろうかぁ。。。
もう記憶が定かではないけど、
ユーモアも盛り込まれていたのかもしれない。。。

ベナレスというか、ガンジス(もっと上流とか)の存在が、
火葬したり、そのままだったりの死体が流される(帰る)場所であり、
産まれた赤ん坊に、水浴をさせて、これからの生を願う場所。。。

宗教を超えて、人間として、
生と死を見つめる場所だなぁというのを、真剣に泣きながら感謝する
川岸を埋め尽くす人たちの目を見ながら思ったものです。。。
そして、自分が客観的にしか見れていないことに寂しさも感じたものです。。。

「深い河」。。。読んでみようかなぁ。。。
Commented by naru at 2009-09-26 10:52 x
「沈黙」もお忘れなく・・・

実は「おバカさん」大好きでした。たぶん中学生の頃に読みました。周りにドクトルマンボウのファンが多かったから、逆に狐狸庵先生の方に惹かれたので。
Commented by sugachan2 at 2009-09-26 12:12 x
私も「沈黙」を読んで感動しました。狐狸庵先生の”軽さ”からは想像できない深さが印象的です。
あと、古いですが、日経新聞で1ヶ月ごとに連載される「私の履歴書」の遠藤周作の編も印象に残っています(何かと言われて忘れましたが、無用の用について語られた章など)
Commented by foggykaoru at 2009-09-26 21:30
旅する猫さん。
『さらば~』は映画の題名として知っています。
でも、遠藤周作原作だったとは知らなかった。
Commented by foggykaoru at 2009-09-26 21:31
むっつりさん。
むっつりさんが挙げられたような作品、私はなんとなく敬遠してしまうんですよ。
正面切って真面目でしょ。
Commented by foggykaoru at 2009-09-26 21:33
hajikko@kiri:さん。
『深い河』、実はろくに覚えちゃいないんですよ。
正面切って信仰の問題を描いていたなあということ以外は。
Commented by foggykaoru at 2009-09-26 21:34
naruさん。
そうそう『沈黙』
ああいうタイプの本は、内容を聞いただけで敬遠してしまうという、悪い癖を持っています私って人間は。




Commented by foggykaoru at 2009-09-26 21:39
sugachan2さん。
『沈黙』、評判いいですねー 
まあ遠藤周作の代表作なんだから当たり前といえばいえるけど。
なんというか、いかにも学校の先生が推薦しそうな小説に対して、私は「読まず嫌い」のケがあるのです。
悪い癖ですね。

私が初めてランサムを手にとったとき、推薦図書じゃなかったのはラッキーだったと今も思っているんですよ。
もしも推薦図書だったらきっと読まなかったに違いない・・・
Commented by tabinekophoto at 2009-09-26 22:21
映画があるみたいですね。
私はブログ書くために検索して初めて知りました。有名な映画なんですか?
映画のあらすじを見たのですが、タイトル・主要な登場人物の名前・友人同士が同じ女性に恋をするという設定以外は、あらゆる点が原作とは異なっているみたいで、ここまで違うと逆に気になってしまいました。
Commented by hajjikko at 2009-09-27 05:15
あぁ、そっかぁ。。。
"おバカさん"ってタイトルの本ねぇ。。。
おもいっきし、勘違いしてた。。。
("深い河"の話題だと・・・)

遠藤周作が自分のこと
"そう"呼んでいたのかと思った。。。(笑)
Commented by foggykaoru at 2009-09-27 14:58
旅する猫さん。
あっ、映画の話題じゃなかったんですね。。私も題名しか知らないけれど。
Commented by foggykaoru at 2009-09-27 15:00
kiri:@hajikkoさん。
あら、勘違いなさってたんですか。
私はまた、よっぽど「深い河」がツボなんだなと思ってました。
Commented by KIKI at 2009-09-27 18:25 x
とうとう読まれたのですね。
私は母親の影響か思春期に遠藤周作、北杜生、佐藤愛子などその時代の人達の本を読むのが好きでした。
リアルタイムだとより面白かったのでしょうね。当時はまだまだ文壇が活力あったみたいですし。
「わたしが・棄てた・女」もオススメです。
Commented by foggykaoru at 2009-09-28 21:59
KIKIさん。
そう、とうとう読んだのです。

北杜夫や佐藤愛子はたくさん読んでいるんだけど、遠藤周作はなんとなく敬遠していたんです。
ひとつには、実はとても嫌な奴だという噂を聞いていたということもあります。
某カトリック系女子高に講演に行ったとき、酔っぱらっていて態度劣悪だったとか。
あくまでも噂です。実際に目撃したわけではないんですけどね。

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