やめなくちゃならないのはダム工事だけじゃないのです。

旅の終わりに成田に近付き、上空から日本を眺めるとき、我が母国の美しさをしみじみ感じます。
四季があり、陽光と水に恵まれた日本は、ほんとうに美しい。
たとえば、中世以前にヨーロッパを蔽っていた広大な森。ひとたび人間が木を切り倒すと、再生することはなかった。ドイツ語を習っていたとき、先生が「日本の自然はドイツの自然よりも強いように思う」と言っていました。失われたままよみがえることのないドイツの森をさしてのことだと、私は勝手に解釈しているのですが。

もしも日本だったら、はげ山には間もなく草が生い茂り、灌木が生え始めるはず。(たぶん)

そんなふうに自然に恵まれているのに、日本人はヨーロッパに行くと、「美しい。それにひきかえ日本は汚い」と嘆くのです。
それはなぜか。
日本人が日本が本来持っている美しさを大切にしないできたから。
あまりにも恵まれているせいです。
だから与えられた自然の恵みをわかっていない。

この国は土建業者と心中しようとしているのだよ。
そのあとに残るのはコンクリートで固められた国土だけ。

最近、生物学の専門家である友人から、こんなメールをもらいました。


===========
日本列島は南北に長く、南からは暖流の黒潮と対馬暖流、北からは寒流の親潮が来るため、世界的にも豊かな海洋生物相(ベントス(=底生生物)を含む)を誇ってきました。
しかし高度経済成長期に、大都市近辺を中心に干潟・浅海域(藻場を含む)の多くが埋め立てられてしまいました。
そうした「暴挙」はもう終息したのかというとそうではなく、まだ埋め立てられていなかった地方でも埋立の脅威が現在進行形で迫っています。
海だけでなく陸上も含め、日本列島は全域が生物多様性のホットスポット(生物多様性が高く、破壊の危機に瀕している場所)となっています。
こちらをご覧ください。

現在も、住民や生態学者の反対を押し切り、埋立などの工事が強行されようとしている所がいくつかあります。
特に緊急性が高いものは、山口県祝島の「上関原発」です。
ここはナメクジウオ(我々脊椎動物の祖先に近い、稀少な動物)や稀少なカクメイ科の貝が棲み、スナメリが遊び、カンムリウミスズメとミズナギドリの営巣地があり、島民は漁業で生計を立てています。
島の漁師さんたちは、中国電力の工事の台船着岸を阻止しようと、9月半ばからほぼ連日、漁船でピケを張っています。
シーカヤッカーたちも、海を愛するシーメンとしてピケに参加しています。
祝島における最新情報はこちら

そして、10月1日に日本ベントス学会自然環境保全委員長が山口県知事と中国電力に出した声明がこちら

日本ベントス学会では今まで2回、日本生態学会でも1回、声明を出して来ましたが、すべて黙殺されています。
学術的な環境評価さえしないまま、埋立が強行されようとしています。
==================


友人は「この開発の存在自体が知られていないので、1人でも多くの人々に知ってもらいたい」と言っています。
確かに全然知らなかった。
例のダムの話題ばかりで。

それにしても、きれいなところですねえ。
この夏に行ってきた、フランスのブルターニュの海岸を思い出します。

もう始めてしまった工事をやめさせるのは大変。
でも、まだ始めていない工事を中止するのはそれに比べたら何分の一かの労力でできる。
そして、そのほうが効果が高いんじゃないでしょうか。

こういうのもしっかり報道してくださいよ>マスコミのみなさん
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by foggykaoru | 2009-10-12 10:13 | ニュースから | Trackback | Comments(11)

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Commented by fu-ga at 2009-10-12 11:08 x
そうですね、人間は便利さと引き換えに大事なものを失っていくように思えます。

マスコミって自分たちに都合がよいことしか報道しないし、自分たちに都合のよいように中身をつくりかえるので信用できません。
自然や開発とは別の分野ですか、憤りを感じることもありますよ・・・ほんと。
Commented by むっつり at 2009-10-12 19:37 x
日本の政治は特定団体の利益の為に活動しますから
残るのは耐用年数が尽きたコンクリート塊と借金だけでしょう
例のダムにしたって七割と言っても予算の七割を使ったと言う意味で、工事の進捗状況は半分もいっていません
金が全てを狂わせています

そういえばランサムにも「昔は森だった四本の木」と言うような表現がありましたね
森の再生は至難の業なのは百年も前から知られていたのに…
Commented by とーこ at 2009-10-13 12:53 x
ごめんなさい。建設業界の者としてひとことだけ。

地球温暖化になりカスリーン台風時代より豪雨が増えていますが、あのような洪水にならないで済んでいるのは既存のダムがきちんと働いているからです。

重要なのは国民の生命と財産を守るために必要な施設を必要なだけ造ることなので、ここをきちんと検証するのがマスコミの役目なのですが、実はこのあたりも最近はきちんと報道されていません…ということをちょっと心の隅にでも止めておいてくださいませ。

と言っても建設業界の者が何を言っても今の世は悪役にされてしまうんですけれど。でもちょっと最近、報道が一定方向に傾き過ぎているところがある(というか、新聞によってあまりに記事が違う)のが気になるので、恐縮ながら、一言だけ。
Commented by デルタダート at 2009-10-13 23:57 x
私も、自然や美しい風景を護ることは本当に大切な事だと思います。
その一方で、市場原理主義という大きな波の中で、日本と言う国が無くなってしまうかもしれないと言う現実に自然保護主義者は目を向けていません。
これをバランスさせる事は並大抵の事ではないと思います。
どっちが良くて、どっちが悪いではなくて、日本をどうしていけば良いのか、極論を言えば自然を守ってご飯に事欠き、介護や医療の不足した国になるのか、自然を壊して国民の命を護るのか?

私も課題の答えは見えません。

エコ技術で世界に乗り出すにしても、その技術を支えるのは、超不自然(超高純度)な海外から輸入した化学物質や地面を掘り起こして得られる鉱石です。医薬品も海外に特許料を払わなければ作れません。
経済と自然保護のバランスが本当の意味で議論されるようになって欲しいと思います。
Commented by foggykaoru at 2009-10-14 20:05
fu-gaさん。
電力も必要としているんですよね、われわれは。
でも、この件に限らず、報道されないいろんなことがあるんだろうなあと思います。
Commented by foggykaoru at 2009-10-14 20:07
むっつりさん。
特に原発には巨万の利権がからんでいそう。
干潟とか、磯の再生というのは、森の再生と同じぐらいの時間がかかるんでしょうね。
Commented by foggykaoru at 2009-10-14 20:14
とーこさん。
もちろん、ダムのすべてが悪いわけじゃないです。
というか、役に立っているのがほとんどだろうと思ってます。
(そうでなければ悲しすぎます。。。)
でも、税金の無駄遣いもあった。
なにしろ水をためておくことができないダムもあるそうですし。
われわれ素人は、検証を専門家に任せるしかない。
しっかりやっていただきたいものです。
Commented by foggykaoru at 2009-10-14 20:16
デルタダートさん。
>経済と自然保護のバランスが本当の意味で議論されるようになって欲しいと思います。

まったく同感です。
でも、バランスがとれているかどうかは、素人にはわからない。
しっかり検証してもらうためには、素人である一般国民が、感度の高いアンテナを張っておかなくてはならないのでしょう。
Commented by サグレス at 2009-10-15 07:49 x
>かおるさん、
転載ありがとうございます。
>素人である一般国民が、感度の高いアンテナを張っておかなくてはならないのでしょう
おっしゃる通りです。しかしそのために、自然科学の研究者も「伝える」ことについてもっと努力すべきだ、と私は考えています。
難しいのは、自然科学の研究者の多くが、元々ヒトに関心が薄いため、コミュニケーション能力があまり高くなく、心に訴える文章も上手く書けないということですね・・・(溜息)。
Commented by サグレス at 2009-10-15 07:51 x
>とーこさん、
>建設業界の者が何を言っても今の世は悪役にされてしまう
そう考えていない人も、ちゃんといます。ですから大規模な工事ではその必要性を、建設業界の方々がデータを示して説明し、住民(国民)の合意形成を図っていただければ、と思うのです。
もちろんそういう努力はすでに為されているのでしょうし、マスコミはあまりにも「地道な努力」を取り上げませんから、徒労感の多いこともお察ししますが。(野生生物の基礎調査も同様に、マスコミには注目されないことが多いのです)
Commented by サグレス at 2009-10-15 07:53 x
>デルタダートさん、
経済と自然環境のバランスは、確かに難しい問題で、解決方法は容易には見いだせません。
しかし、自然環境を壊すことで一時的に経済状態が良くなったとしても、後々まで良い経済状態が保てるとは限らず、長期的視野に立てば、やはり自然環境をできるかぎり保全した方が良いように思われます。

自然環境の破壊によって人間社会にも壊滅的打撃があった例が、環境考古学の分野でいくつも分かってきました。こちらにいらっしゃる方はご存知かもしれませんが、私が読んで興味深かった本は、
「文明崩壊」(上下)(ジャレド・ダイアモンド、草思社)←文庫化もされています。
「環境世界と自己の系譜」(大井玄、みすず書房)
です。興味がおありでしたら、是非どうぞ。

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