一瞬の風になれ
2009年 10月 22日
大評判になったこの本、ようやく読みました。
ようやく図書館でフリーになっているのを見つけて。
で、一気に読みました。それが10日前。
読み終わったとたんに再読し始め、「これは買うべきなのかも」と思いながら著者の佐藤多佳子さんのサイトに行って、文庫化されたのを知って、その足(?)で熱帯雨林に行って「ぽちっとな」
届いた文庫はそれから毎日の通勤の友となり、今日文庫3回目(通算5回目)を終えたところ。
今までに借りて読んだうえで「マイ・ブックが必要だ」と考えて買った本は、「指輪物語」「りんご畑のマーティン・ピピン」、そして今回のこれ。
でも、こんなに飽きもせずに同じ本を読み返してるのは、小学生のころのランサム以来かも。
文章がいいし、筋立てがいいし、キャラが魅力的。何もかもいい。
読み始めてすぐ、ど真ん中のストライクがきたのがこの場面。
次の瞬間、何か強烈な熱い風を胸に吹き込まれた気がした。うまいなー、、、と唸りました。
「おう」
運命のようなものを感じたにしては間の抜けた返事になった。
ここだけ抜粋してもピンとこないかもしれないけれど。
学生なのに、部活のことばかりでそのほかのこと、たとえば勉強の場面がないというようなレビューも見かけましたが、私に言わせればそれは余計なこと。
部活のことだけでこんなに長い物語を引っ張っていくのはすごいことです。
「他のことも書かないと変化に乏しくなるし、陰影が生まれないんじゃないか」と弱気になってしまうところなんじゃないかな、普通の作家だったら。
で、読み返すごとに、私の心の中にだんだん強くなってきた思いがあります。
それは
ランサムと同じだ
ということ。
ひたすら走ることに打ち込む新二たちは、湖でひたすら「ごっこ遊び」を追求する子どもたちと同じ。
その意味において、今までに読んだ本の中で、ランサムに最もテイストが似ています。
少なくとも私にとってはね。
スタートダッシュからわくわくどきどきして、がんがん飛ばせるという点では、ランサムよりも上(苦笑)
あと、これはどうでもいいことなのですが
こういう語り口の本は、日本人にとってはめっちゃ読みやすい。
でも、日本語を学ぶ外国人には難解極まりないはず。
もしもこれが読みこなせたら、ネイティブ日本人並みである証拠だと思います。
翻訳するのも超ムズイよー
この本に関する情報はこちら
by foggykaoru | 2009-10-22 21:25 | 普通の小説 | Trackback | Comments(11)
というような事情で、この本も出る前の予告のころからチェックしつつまだ読んでいません。Foggyさん同様、図書館の棚でフリーになっているのを見つけられないからなんです。でもこのレビューを読んだいま、ああ~いかん、買ってしまいそうだな…。
かおるさんほどの密度で読み返しているわけではありませんが、刊行時に買って以来、年に1~2回読んでいるので、大人になってから出会った小説としては破格の再読回数です。
この2冊はよく名前が並んでいるのを見かけるので、『一瞬の風になれ』の方も気になってはいたのですが、
「ランサムと同じだ」と言われると、やはりこちらも読まねばならないなと思いました。
>イグアナくん
チェックチェック! 見つけたら読んでみます。
まあ、私の感想文はかなり独断と偏見に満ちてますから、話半分に聞いててください。
特に、「ランサムと同じ」ということは、1回目には思わなかったので。
三浦しをんね・・・。
読書好きな若い女の子が大ファンだと言ってました。
読んでみようかなー
最初に読んだときは「ランサムと同じだ」とは思わなかったので、くれぐれも話半分に聞いててくださいねー
『風が強く吹いている』は買ってきたばかりです。駅伝ファンな娘と読もうとずっと思ってたのに、文庫版が出たのを最近まで知らなくて。映画を先に見るかなあ。
『風が強く吹いている』は舞台化されたものをテレビ(WOWOW)放送で見ました。ほんとは先に読みたかったのですが。
うちはコドモがちょうど陸上部に入ったのでどっちの作品も一緒に読みたいなあと思っています。
陸上のことだけで引っ張っていく、読み物としてもそうだし、
主人公たちの生活がそうなんでしょう。
ランサムと同じというのは、思いあたりませんでしたが、
このところ、ランサムの作品の特徴として、
・自分の世界(学校などから離れたヨットやキャンプの生活)がある
・他の人は関係ない
・そのことを通して、世界とじかにつながっている喜び(と厳しさも)
は、大事なポイントだと思っていましたが、
大事どころか、それがランサムの作品の主題なんじゃないかと
考えていました。子どものときには考えもしなかったことですが、
漠然と感じているからこそ気にいって何度も読み返したのかもしれません。
『一瞬の風になれ』とはこの感覚が通じるのかな?
>主人公たちの生活がそうなんでしょう。
そっ、、、そんな身も蓋もないことを・・・!
あくまでも作者がそういう設定にしたのですから。
ちょっと前に読んだ「風の靴」は、全編ランサムネタのオンパレードなんですが、本質的にはあまりランサム的じゃないんですよね。
あれはヨットの素晴らしさを描きながらも、それは主題ではない。問題を抱えた子どもが、大好きなヨットによって癒され、一皮むけるという物語なのです。
つまり、主人公である子どもが、夢中になっているものを徹底的に追求していく、という物語ではない。
「一瞬の」は、新二と仲間たちが、大好きなスプリントをひたすら追求していく物語。だからランサム的。
きっとケルンさんの思っていらっしゃることと、私の思っていることは同じですよね?