川の名前

数年前、友人たちの間でひそかに話題沸騰した本。近所の図書館で探したのだけれど、取り寄せなければならないのが面倒くさくてそのままにしていました。
このほど文庫本を見つけたので、満を持して?読みました。
(カバー裏にある「著者近影」のイケメンぶりにびっくりです。どうでもいいことだけれど(笑))

友人たちが絶賛していたとおりでした。
4回繰り返して読んで、他の本が読めなくなるからと、歯を食いしばって読むのをやめた「一瞬の風になれ」には負けるけれど、この本も相当面白い。なにしろ3回繰り返して読んだのですから。
友人たちは「ランサムに似ている」と感動していたのだけれど、確かに似ています。

でも、著者の川端裕人氏はランサマイトじゃないのです。
自らのブログに書いていらっしゃいます。(数年前、ランサム写真展の折りに、全国のランサマイト発掘調査(!)をしていて見つけたのです。)
こちらのポストで、ものすごくわかりやすいたとえで説明してくださってます。こんな説明してくれるだけでも、限りなくオトモダチです。それだけでもう私は十分に満足(^^;
指輪物語のファンだということは、この本を読んでよくわかります。人はえてして好きな本のことをあんな感じで利用(!)するものです。


要するに、「川の名前」とは、子ども時代に英国児童文学に親しんだ人が書いた作品なのです。
だからその影響が感じられる。(などと言うと失礼なのでしょうか。少なくとも、同じような読書体験をしてきた人間にはそう感じられます。)

特にフィリップ・ターナーに似ています。

実は「ダーンリー・ミルズ・シリーズ」の第1作「シェパートン大佐の時計」、私はあまり得意じゃないのです。最初の部分の、教会で遊ぶところでついていけなくなって。小学生のときもそうだったし、中年になってから読み直しても、あそこで大ブレーキがかかりました。抜けたあとはびゅんびゅん飛ばせたのだけれど。「ハイ・フォースの地主屋敷」と、「シーペリル号の冒険」は、私が子どもだったときにはまだ出ていなかったので、中年になって初めて読んだのですが、この2冊は問題なく楽しめました。(ちなみに私のいちばんのお気に入りは「ハイ・フォース」です。語れるほどは読みこんでいませんが。)

でも、このシリーズ、小学生のときに読んだとしても、それほどハマらなかっただろうと思うのです。
だって、女の子が活躍しないから。

同じ意味において、「川の名前」も、もしも私が今、子どもだったとしたら、たいしてハマらなかったことでしょう。大人になっていて、作品中の子どもに同化したいという欲求が生まれようがないから、欲求不満にもなりようがなくて、かえって物語を楽しめるのです。

この作品が、(ターナーよりも)ランサムに近いように見えるとしたら、その大きな理由は、重要テーマとして「自然」を扱っていることにあります。
今、ランサム、特にノーフォークものとかシロクマ号を読み直すと、実に今日的な話題であることに驚かされます。ま、ランサムは単に「鳥オタク」だったということなんだけど。

この本にぴったりくるカテゴリーは「ジュブナイル」
主人公こそ小学生だけれど、案外これは大人の雰囲気なんです。
でも、しょうがないので「児童文学関連」にしておきます。

この本に関する情報はこちら




合唱をやっていた私にとって「河口」というと、合唱組曲「筑後川」。その最終章「河口」で「川はフィナーレを歌う」というのが頭にこびりついてしまっていて。
だから、「河口は川の終わりではない」というところが新鮮で、感動しました。
「河口は世界へ続く」という感覚は、上流から河口まで下った経験があってこそなのでしょうね。

そして、カヌー。
私はほんのちょっぴりだけ経験があるけれど、わずか10メートルすらまっすぐに進めなくて、楽しむどころではありません。それはそれとして、カヌーというのは、やっぱりもともとは移動の手段なのです。単なるレジャーではなくて。
河童が修理したカヌーが、最後には実際に役に立つという筋書きを、「出来すぎ」と言うのはたやすいことです。
でも私は、あの場面でカヌーが再び命を得て大活躍し、役目を果たして沈んでいくということに、一種の感銘を受けました。
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by foggykaoru | 2009-12-02 21:36 | 児童書関連 | Trackback | Comments(5)

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Commented by sugachan at 2009-12-03 22:54 x
絶賛ですね、”川の名前”。是非読んでみたいです。イギリスの職人の本、面白いです。この本に興味を示した知り合いが実はランサマイトであることを発見!
Commented by foggykaoru at 2009-12-04 21:56
sugachanさん。
この本、ランサムが好きな男性には特に自信をもってお薦めです。
きっと何度も読み返したくなるから、買ったほうがいいかも?
(でも今度のお茶会に持っていきますね。・・・忘れなかったら(自爆))

>知り合いが実はランサマイト
おおおお!!! 
ARCのこととか、ランサム掲示板のこととか、ぜひ教えて差し上げてください!!!!!
Commented by Dreamscape at 2009-12-05 00:22 x
解説が神林長平だったので、以前買いました。でも未読(笑)。今度読んでみます。
Commented by foggykaoru at 2009-12-05 20:21
Dreamscapeさん。
ランサムファンで博物学関係の男性には超超超お薦めです。
ぜひ時間を見つけて読んでみてください♪
Commented by leirani@crann at 2009-12-06 12:45 x
>Dreamscapeさん

解説が神林長平!!知りませんでした!!!
私も話題になっているのは知っていましたが、未読です。
チェックしなくちゃです。

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