世界を旅した女性たち

著者はD.ミドルトンという人。
副題は「ヴィクトリア朝レディ・トラベラー物語」
なぜVictoriaが「ヴィ」で travellerが「ベ」なのか? という疑問はおいといて。

まえがきによると、19世紀末から20世紀初頭にかけて、旅に出た女性がたくさんいるのだそうで、そういう女性たち7人にスポットをあてて紹介している。
一応私も「旅する女性」だったりするので(笑)

でも、前半はわりと退屈だった。
中ほどではアメリカ人女性2人が取り上げられている。
そのアメリカ女性ときたら、バリバリのフェミニストなのである。
正直、ちょっと興ざめした。「詐欺だ」とすら思ったぐらい。
別にフェミニストに文句があるわけではないのだが、私は、「かちんかちんのヴィクトリア朝のイギリス女性が女だてらに頑張って旅した話」に心惹かれたので、自由の国アメリカで自由に育った女性が世界を縦横無尽に旅する話にはあまり興味が湧かなかったのだ。

ただし、後半の3人の話は掛け値なしにすごい。3人ともイギリス人。

・キリストの福音を伝えるためにチベットに行ったアニー・テイラー
・シベリアのらい病患者の実態を調査に行ったケート・マーズデン
・人類学者だった父親のやり残したことを引き継いでアメリカを調査したメアリ・キングズリ

この3人は「旅のための旅」をしたのではない。
自分の目標を達成するためには、旅をせざるを得なかった人々なのである。
結局のところ、物見遊山の旅行なんて、たいしたことないってことね。

アニー・テイラーの旅は河口慧海の「チベット旅行記」を彷彿とさせる。キリスト教の伝道師である彼女はチベット仏教を「邪教」としか見ないのだけれど、それはそれとして、信ずるところに従って艱難辛苦を乗り越えようとする意志の強さには、感嘆とともに感動を禁じえない。
ケート・マーズデンは極寒のシベリアを旅し、病んでいる人々に紅茶を淹れて癒してやり、自らの身体をボロボロにしてしまい、そのダメージから回復できないままに生涯を終えたという。うう、まるでフロド・バギンズだ・・・
この2人の旅は、夜になると狼に襲われかねないという危険なもの。

危険という点では、メアリ・キングズリも負けていない。
ヒルに血を吸われ、ワニを間近に見て、人肉を常食としている原住民とも接している。
アフリカの原住民が小さな部族ごとに分かれて暮らし、お互いにあまり交流していなかったということがよくわかり、ひいては、今のアフリカの国境線が諸悪の根源だということもよくわかる。
・・・などと考えていたら、がぜんリビングストンの伝記を読みたくなった。小学生のころ、子供向けの伝記は読んだけど、大人のための伝記を読んでみたい。あるのかしら。



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by foggykaoru | 2009-12-19 21:25 | 伝記・評伝 | Trackback | Comments(8)

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Commented by leirani@crann at 2009-12-20 00:25 x
この本のタイトル、そそられるんですよね。おっしゃるとおり、前半とアメリカ人女性のところは期待が高すぎただけに、がっかり度数が高かったです。
この本を読むと、他にもヴィクトリア時代の女性たちについての本を読みたくなりませんか?(欲求不満になっちゃうのかも)
Commented by ふるき at 2009-12-20 01:03 x
 SF作家のジェイムズ・ティプトリー・Jrも幼少の頃親に連れられてアフリカで暮らしていたそうです。
 アフリカで野性のゴリラを観た最初の白人女性のひとりだそうです(wikiによる)
 彼女の小説に劣らず、実生活も伝説になっています。
Commented by foggykaoru at 2009-12-20 11:30
leirani@crannさん。
おお、お読みになったことあるんですね。
前半とアメリカ女性のところはNGなのは私だけじゃなかったんですね。
ヴィクトリア朝に関しては、女性だろうが男性だろうが、面白そうな本があったら読んでみたいです。
Commented by foggykaoru at 2009-12-20 11:33
ふるきさん。
ジェイムズという名前で女性なんですか。。。面白い。
メアリ・キングズリは親に連れられて行ったんじゃないんです。
父親は自分1人で調査旅行していたから。
ずっとイギリスしか知らなかった彼女が、父親亡きあと、1人で出かけようと思い立ったのはすごいです。
Commented by ケルン at 2009-12-21 00:20 x
いまさら、イザベラ・バードとか、レディ・アン・ブラントとかは出てこないんですね。
アメリカとイギリスでは、女性の立場もだいぶ違っていたようですね。それを同列で扱うのはちょっと乱暴なのかも、と思います。
Commented by leirani@crann at 2009-12-21 00:36 x
ふるきさん、横レス失礼しますね。

>かおるさん
ジェイムズ・ティプトリーJrというのは、ペンネームなんですよ。
ハードだけど心温まるストーリーを作る作家です。
何冊か短編集があるので、興味がおありなら貸し出します。
Commented by foggykaoru at 2009-12-21 22:50
ケルンさん。
イザベラ・バードは一番最初に紹介されてます。
でも、あんまりおもしろくなかったわ。。。
Commented by foggykaoru at 2009-12-21 22:51
leirani@crannさん。
>ジェイムズ・ティプトリーJrというのは、ペンネームなんですよ。
そうか、ジョルジュ・サンドみたいな人だったのね。

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