人気ブログランキング | 話題のタグを見る

世界屠畜紀行

内澤旬子著。
この人の名前は「東方見便録」で覚えた。
なんてスゴイ人なんだろう!!と感嘆して。

で、これは内澤さんが単独で世界各国の屠畜事情(彼女は「屠殺」という言葉を使わない)をルポしてまわってまとめた本。もともとは『部落解放』という雑誌の連載記事だった。
実際に見てまわった国の数は少ないけれど、中身はとても濃い。

もともと彼女は動物をつぶす場面を見ても怖いとか気持ち悪いとか感じたことがないそうで(やっぱりスゴイ人だ)、なぜ日本では差別と結びつくのだろう? 他の国はどうなってるの?という、個人的な好奇心から入っていく。

屠畜を汚い作業とみなしたり、動物愛護を声高に叫ぶ社会よりも、「食べるため」として明るくやっている社会のほうがいいな、と単純に思った。
そして、どうやら、そういう社会のほうが「命をいただいている」という、自然界に対する謙遜な態度があるみたい。

さらに彼女はイスラム圏が大得意で、イスラムのおやじとからむのが楽しみなのだそうだ。
うーん、私にはできないことだ。とっても羨ましい。

というわけで、イスラム世界の「犠牲祭」も間近で観察している。この世界では屠畜は日常的な行為だし、差別されない。(ただし、インドにおけるイスラム教徒の事情は微妙に違うそうだ。)イスラムで蔑まれるのは人の心を迷わせるダンサーなのだそうだ。ベリーダンスが好きで習っている日本女性は少なくないし、日本人のプロダンサーだっていることを思うと、非常に複雑な気分になる。

この本はかなりの部分を日本に割いているけれど、これがけっこう面白い。
東京の芝浦屠場。機械化も進んでいるけれど、職人芸が生きている。感動的。日本も捨てたもんじゃないと思った。

(ところで、日本の場合、子どものときに愛読した本にならって、自分でウサギの皮をはいで料理したいと思っても、皮つきのウサギは入手できないのである。数年前、動物愛護団体が「そんな残酷なことをしてはいけない」と文句つけたから、市場には皮をはいだウサギ肉しか出回らなくなった。こんな事情を知っているのは、日本広しと言えども、アーサー・ランサム・クラブの会員ぐらいだろう。)


文庫本だとイラストとそこに書き込まれた説明が小さくて見づらいのが難点。
若い人には大丈夫だろうけど(自爆)

インドネシアと沖縄に行きたくなった。


この本に関する情報はこちら

by foggykaoru | 2012-02-03 19:25 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(13)

Commented by ふるき at 2012-02-03 21:55 x
 初めて沖縄に行った75年。山羊料理の店に入って食べてたら断末魔の悲鳴がしました。そこは屠畜もしていた店でした。断末魔の悲鳴を耳にしながら山羊刺しを喰うのは得難い経験でした。
Commented by ゴンタ at 2012-02-03 22:06 x
『屠畜紀行』面白そう。ユダヤ教の屠畜も載ってるのかしら。
ウサギの皮を剥ぐ…『スカラブ号の夏休み』ですね!ウサギを飼ってはどうでしょう。ペットフードではなく新鮮な野菜やアザミを与えたら肉もそれなりになるかも。でも、情移ってしまって難しいなあ。食べるとは命を頂くのだと泣きながら屠畜…
Commented by garden_time at 2012-02-03 23:15
↓の見便録とあわせて、おもしろそう♪
さすがに屠殺現場は見たことがないのですが、
解体前の牛の胴体とか、皮をはがれた牛の頭部とかを見ても
なんとも思わない子供だったのです(^^;)
そういえば小学校の裏道通学路に屠殺場もあったのでした。
鳴き声は聞いたことないけれど、臭いはすごかったです・・・。
Commented by ドミノ at 2012-02-03 23:17 x
魚をさばくほうは、たしか神事にもなってるくらいなのに、ケモノはダメなんですねえ。考えてみれば不思議。
Commented by サグレス at 2012-02-04 08:16 x
この本、友人が「ものすごくお勧め!」と言っていました。面白そうだな~と思いながら、まだ読んでいません。絵も(すごく)上手い人ですよね。
Commented by foggykaoru at 2012-02-04 18:09
ふるきさん。
沖縄のヤギのことも載ってます。
沖縄って、あっけらかんとしていて、インドネシアなどと言った南国の文化みたいですね。
Commented by foggykaoru at 2012-02-04 18:10
ゴンタさん。
「情がうつる」ということに関しても、いろいろな取材がされています。
興味があったらぜひ読んでみてください。
Commented by foggykaoru at 2012-02-04 18:12
はみさん。
あれ~、見便録、知らなかった?
はみさんは内澤さんタイプなのかな? 
私も「きゃ~!!」とかは言わないほうだけど、なんとも思わないかというと、そこはちょっと違うかも。
Commented by foggykaoru at 2012-02-04 18:12
サグレスさん。
この本、お貸ししてもいいですよ。
いつお会いできるかという問題はあるけれど(^^;
Commented by サグレス at 2012-02-04 18:19 x
ありがとうございます。でも買います。面白そうなので♪
Commented by foggykaoru at 2012-02-04 18:28
ドミノさん。
そう、魚は大丈夫なのにね。
だからすべては文化の違いなんです。
Commented by salut1421 at 2013-01-31 14:14 x
かなり昔読んだ「東方見便録」をまた読みたいと思い検索してたら行き着きました。
Commented by foggykaoru at 2013-01-31 20:52
salut1421さん。
ようこそ! 「東方見便録」は名著(?怪著?)ですよね。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

<< ランサム度50%のパリ 東方見便録 >>