デパートを発明した夫婦
2012年 02月 07日
著者はフランス近代の文学・風俗の第一人者である鹿島茂。
軽くさらさら読める。
「デパート」はフランス語で「grand magasin」、つまり「大きな店」という。(なぜ英語で「department store」と言うのだろう?)
だが、ブシコー夫妻は単に大きな店を作ったのではない。
彼らは「新たな文化の創造」という偉業をなしとげた。
それは「消費意欲を喚起する」ということ。
それまで、人間は「必要だから買う」だけであって、買い物の喜びなんてなかったのだ。(マリー・アントワネットとかは例外)
そのためには
「観た目、夢のある店をつくる」
「アッパーミドルの生活に対する憧れを喚起する」
「宣伝する」
「とにかく店に来させる、そのためには見るだけの客も歓迎する」
「バーゲンセールをする」
「カフェをつくる」
「社員の福利厚生に心を配り、優秀な社員を育てる」
「収益を社員に還元して労働意欲を高める」
など、現代の常識をすべて思いつき、実現していった。
とは言え、どんな思いつきだって、時代の潮流に乗らなければ成功しない。
19世紀末から20世紀初頭、世界に先駆けて現代に向かってまい進するフランスが生んだ、まさに「時代の申し子」だったのだ。
彼らのまいた種は大きく花開いていく。
たとえば「ボン・マルシェ」で教育された社員が作ったのが「プランタン」なのだそうで。
で、先詰まり感のある昨今、企業のトップに必要なのは、金勘定、つまり目先の収益追求よりも「新たな文化の創造」をする能力なのだろうなあと思った。
「ボン・マルシェ」には1度行ったことがあるけれど、あまりよく覚えていない。
エッフェルによる設計なのだそうだ。そこからして新しい。
次の機会に再訪してちゃんと見てみよう。
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by foggykaoru | 2012-02-07 19:11 | 伝記・評伝 | Trackback | Comments(2)
かなりの博打ですが、何も無いところに商品を立ち上げて需要喚起を成功させれば時代を作り出せますから
日本でもデパートほどの規模では有りませんが、カラオケやウォークマンの例がありますので
>「収益を社員に還元して労働意欲を高める」
これは今世紀にはいってから顕著に衰退していますね
むしろ労働力のオンデマンド化が進んでいます
「あなたの替わりは70億人」と言うのがグローバリズムの基本ですので