世界が生まれた朝に

著者はコンゴの作家エマニュエル・ドンガラ。
探検三昧だった高野秀行氏が大学の仏文科を卒業するために翻訳した小説。

絶版状態のようだが、ネットで検索したら近所の図書館にあることがわかり、行ってみたらほんとうにあった。行くたびにしばしたたずみ、優秀な友人(いるんだなこれが)が翻訳した地味で売れそうもない本(あるんだなこれが)を手に取りはするものの、結局は何も借りない(私が借りなかったら誰が借りる?!とは思うんだけど、ほんとにごめん)、フランス文学の棚にひっそりと。

コンゴとおぼしき地域の村に生まれたマンクンクの一生が描かれている。
抜きんでた知性と謎めいた緑の瞳を持つ彼は、言うなれば「スーパー・アフリカン」
周囲の人々に警戒されることもあったが、頼りにもされる。
もしも白い肌をした異人が訪れなければ、村の長老として生涯を終えることも可能だっただろう。
しかし、運命は彼を翻弄する。
彼を待つのは悲しみに包まれた、しかし不思議に輝きに満ちた最期。
あまり文学的ではない私だが、この結末には「文学ってすごいな」と思った。
こういうこと感じさせてくれる作品はめったにない。

アフリカの数百年の歴史がマンクンクの一生とともに描かれる。つまり、歴史的事実に即してはいるが、限りなくファンタジックな物語である。
だからアフリカの歴史にさして興味を抱いていない人(たとえば私とか)であっても、一種のファンタジーとして十分に楽しめる。

この作品の主人公はマンクンクではない。
ほんとうの主人公は「アフリカ」そのものなのだ。

高野さんの翻訳は素晴らしいです。
出版するにあたって手を入れたのでしょうけれど、こんな作品をここまで訳したら、大学の先生だって卒業させないわけにはいきません。

それにしても絶版とはもったいない。
文庫化すれば、きっと高野さんのファンが買うはずです。
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by foggykaoru | 2012-11-01 20:10 | 普通の小説 | Trackback | Comments(2)

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Commented by garden_time at 2012-11-01 23:25
調べてみたらこちらも近所の図書館にあるようです。書庫にだけど(^_^;)
「彼を待つのは悲しみに包まれた、しかし不思議に輝きに満ちた最期。」
こんな書き方されたら、気になりますっ。
でもまだ「シンンドバッド」が半分残ってます・・・集中力が切れてます(泣)
そういえば高野さん、今ロンドンにいますね。
タワーブリッジとかを見てはしゃいでいるのが妙にかわいいです^^
(ツイッターがありました)
Commented by foggykaoru at 2012-11-02 23:52
はみさん。
この本、シンドバッドの3倍の集中力が必要かと。
そう、高野さんはロンドン経由でソマリアに行くんですよね。
ツイッター始めてブログの更新が減ったとかも書いてましたっけ。
私はツイッター、登録したきり何にもしてないなあ。
これ以上何かやる余裕がなくて。

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