宮沢賢治の青春

20日ぐらい前に読んだ本。菅原千恵子という研究者の力作である。
副題は『"ただ一人の友"保阪嘉内をめぐって』

子どもの頃から、私は宮沢賢治の童話に親しんでいた。
でも好きな作品が『狼森と笊森、盗森』と『水仙月の四日』だというのは、たぶん相当変わりもの。

後になって、賢治が文学はもとより趣味で音楽(ゴーシュみたいにチェロをやっていた!)や語学(ゴーシュはフランス語の「左」です。この語には「不器用」という意味もある)をたしなみ、理系にも強い(なにしろ農学校の先生だし)のを知り、驚嘆した。
明治の岩手県というのは、今の岩手県とは違って、おそろしくローカルだったはず。
中央の文壇や学問芸術の世界とはほとんど関わりを持てなかったはず。
自力でこんなマルチな活動をするなんてことが可能なのだろうか?
その原動力は何だったのか?

この本を読んで、長年の謎が解けた。

「賢治という人は幼いころからずっと孤独だった」という話をきいたことがある。
村の名士の坊ちゃん。だから村では浮いていた。
しかも父親とはそりが合わない。
そんな彼が、花巻農学校で、後輩の保阪と出会う。
山梨出身の保阪は当時の花巻の学生に比べると、かなり「都会っ子」で、文学や芝居に詳しく、賢治にとっては初めての「趣味の合う友人」となる。

結局、運命は2人に別の道を選ばせるのだが。

彼らの交流は、ほんの1、2年だけだった。
が、保阪は賢治にとって、いわば「触媒」のような働きをした。
そして、保阪が去ったあとも、そばにいない保阪に向かって、賢治は語り続けた。

どこをとっても大納得である。
ジグソーパズルが完成した気分。

触発してくれる人間や環境があってこそ才能は伸びる。
さらに、抑圧とか欠乏感が、えてして創作の糧になるものなのだと思う。

この本に関する情報はこちら
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by foggykaoru | 2012-12-19 20:39 | 伝記・評伝 | Trackback | Comments(2)

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Commented by ラッコ庵 at 2012-12-27 17:28 x
図書館で借りて読みました。面白かった!
これを読んだら他の解釈はできませんね、ものすごく納得です!すごい!
Commented by foggykaoru at 2012-12-29 10:03
ラッコ庵さん。
>これを読んだら他の解釈はできませんね
でしょ? でしょ?
特にあのよくわかんなくても魅力的な『銀河鉄道の夜』がすっきり理解できたと思いません?

ポストでは遠慮して書いたんだけど、賢治って、孤独だっただけに保阪に求めるものが多くて、ちょっぴり重かったかも?とも思ったりしました。

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