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RotKをより良い作品にするための一提言(10)

ついに最終回です。
指輪探索の旅には遙かに及ばないけれど、LotRの新DVD編集案の完成までの道のりも、かなりなものでした。

記事の数を数えてみたら、
FotR: 1
TTT : 2
RotK:10
合計:13
指輪の数には負けるけど、我ながらよくも引っ張ったものです(自爆)
今までおつきあいくださった皆様、心の底から「はんのんれ」でございます。
あともうちょっとだけ、辛抱してくださいね。

RotKの大問題はアラゴルンのヘタレ。

でも、それに匹敵するもう1つの大問題を忘れてはいけない。

それはフロド組です。
フロドが旦那でない。それどころかヨレヨレで思い切り指輪に負けてる。
サムが従僕でない。それどころかやたら態度がでかくてアグレッシブ。
ゴラムが哀れでない。それどころか狡猾そのもので下手すりゃ邪悪。
「情け」が描かれていない。その代わりに肉体的なバトルが延々と続く。



RotKの最初のほうに、ゴラムの哀れさが現れた場面を入れられないものか?
ゴクリが年老いたホビットに戻り、眠っているフロドをなでている場面。
あそこは最高に泣ける美しい場面なので、なんとかして入れたい。
と思ってRotKを観たのですが、、、ダメでした。どうしても入れられません。
TTTで一時的にゴラムが原作以上に可愛くなってしまった反動だとも言えるかも。フロドを旦那と思い定めて、自ら進んでうさぎまで取ってきたのに、裏切られてしまった。加えてサムが目一杯荒っぽい。(ファラミアの大将も。)彼の心はもう元には戻れません。

ゴラムのせいでフロドとサムが喧嘩別れする場面。
あそこのフロドのキーッという目、あれは「俺のレンバス食いやがったな!」にしか見えなくて、毎回大失笑しているのですが、あの場面もなんとかならないものでしょうか。
いろいろシミュレーションしてみたのですが、やっぱりダメでした。
あの3人、あの流れだと、ああなるのが自然です。

とにかくゴラムがらみの肉体的バトルが多すぎる、という観点から、「クモのトンネル内でのフロドとゴラムのバトルを削除する」可能性も考えてみました。
なぜあそこにバトルが必要なのか? あのまま1人で歩いていって、クモに刺されればいいじゃないか。
いろいろ考えたのですが、脚本陣としては、あのバトルの後、フロドに「これは葬らなければならない」と言わせたかったのかもしれません。(単なるバトル好きである可能性も十分にあるが)
この台詞自体は悪かありません。でも、その後に「お前とぼくのために」と続くところが、私には非常に気に入らないのです。
これは旦那の言葉とは似て非なるもの。指輪病にかかったもの同士、同病相憐れんでいるの図です。つまりフロドは高みにいるのではなく、ゴラムと同じ高さ(低さ)に身を置いてしまっている。
・・・というようなことを考えつつ、RotKを観てみたら、、、あのゴラムのキャラだったら、あそこでフロドを襲うのが当たり前。映画版ゴラムにはあのしつこさがちょうどいいのです。削除できません。

滅びのきれつ目前のバトル。
毎回観るたびに「またか!」と思います。
♪けんかはやめて~ と歌いたくなります。
私としては、ここで「はらばうものよ!」「つ、つち!」となって欲しかったので、なんとかそういう場面を入れられないかと必死に検討してみましたが、、、やっぱりダメです。
あのバトルは、PJ版指輪の当然の帰結です。

「すべてが終わった」と安堵の涙にくれるフロドの横で、「旦那さまが元に戻られた!」と喜びもせず、早くも女のことで頭が一杯のサム。
「そのお手! おかわいそうに」とまでは言わなくてもいいから、何らかの形でフロドを思いやって欲しいのに。
なんとかならないのかと、初回からずっと思ってるのですが、なんとかならないんですよこれが。
すべてを納得した上でフロドに付き従っていった原作サムとは違うんです。FotRから続けて観ると、PJ版サムはああいう男です。

赤表紙本を書きながら、肩を押さえるフロドを見ても、いたわりの言葉の無いサム。
あそこもなんとかならないのかと思うのですが、ならないんですわこれが。
言葉こそ出さないものの、ちゃんと心配そうな目でフロドを見てるのですから、映画的には合格点なんです。あそこで何か言うと、かえってとってつけたように聞こえる恐れは十分にあります。

要するに、映画のフロド組3人は、好き嫌いは別にして、最高のハーモニーを奏でているのです。
どこかの特定の場面や、誰か1人を、少しだけ手直しするということはできません。
1箇所直したら、全体のバランスが崩れてしまう。
あれはあれで完璧な構成なのです。原作とは全く違うけれど(号泣)
SEEで追加された「嘘ついてたのよ」を削除して元に戻す以外、何もできません。

原作のフロド組を映画化するのは、難しいことなのだろうと思います。
ゴラムに関しては、彼は思ったことを口にするタイプだから、脚本的には難しくない。最大の難関である「造形」は、アンディー・サーキスの名演をもとにしたCGでクリアできた。
問題はサムです。
原作の「二つの塔」以降では、すっかり寡黙になってしまったフロドをサムがじっと見つめています。サムの独白とゴラムのブツブツが中心であるという、(読むぶんには面白いけれど)映画的には実に退屈な場面の連続です。
映画としては、独白中心にするよりも、会話主体にしたほうが、動きが出ます。だから、映画のサムは口数が多くなり、ゴラムに対する不信をあからさまにする。それに対する反発として、ゴラムが際限なく狡猾になる。
加えて、フロドを演じるイライジャがあまりにも可愛くあまりにも美しい。あの顔を見てると「旦那」にすることをつい忘れる。(最初から忘れてる) あのイライジャの寝顔を見つめながら「おらは旦那が好きなんだ」とやったら、かなりヤバイ雰囲気になりかねない、ということもあります(苦笑)

こうして、「よれよれフロド+でしゃばりサム+狡猾ゴラム」のトリオができあがったのでしょう。

もっとも、「身分制度」を始めとする一昔前のイギリス臭さにある種の郷愁を抱いている監督(新大陸生まれにもそういう監督はいます)だったら、同じキャストでも、まったく違うフロド組が作れたとは思います。PJはそういうものには魅力を覚えないタイプなのでしょうね。


ということで、RotKのフロド組を改善することは不可能です。
直すのなら、最初からコンセプトを全部洗い直さなければ。
でも、それにはお金がかかりすぎます。ゴラムのCGもあるし。「キングコング」がコケたときに作るDVDにそれを求めるのは無理でしょう。

せめてサムが料理道具を捨てる場面ぐらい、丁寧に撮り直してください。あそこの追加撮影、そんなに大変じゃないでしょう?
それと、灰色港で船が見えなくなるまで見送っている感じにしてください。そういうフィルム、探したらあるんじゃないですか? そしたら追加撮影も必要なくなる。


私がFotRが一番好きなのは、サムがでしゃばる場面が無いせいもある、ということに気が付いたのは、今回SEEを通して観た、最大の収穫だったかもしれません。

ということで、原作のフロド組に黙祷を捧げつつ、筆を置きます。合掌。

by foggykaoru | 2005-07-26 21:04 | 指輪物語関連 | Trackback | Comments(7)

Commented by mog at 2005-07-27 12:49 x
☆日本に夏、鎮魂の夏。
 私も合わせて合掌....。
 <こうして、「よれよれフロド+でしゃばりサム+狡猾ゴラム」のトリオができあがったのでしょう。
 まさしくそうなんですよね。
 治しようがないフロド組なんです。だからこそROTRの灰色港でのイライジャ@フロドの微笑みで救われなかったらどうなっていた事か、長々とSEE含め見続けてきた果てのあの微笑、あの微笑に技術点はさておいて美術点は10点満点、なんです。
 結局PJの趣味に合うか否や、ということになるのですか?
 う~む、次に挑戦する監督には英国的階級制度や王位継承とかふるーい時代の感覚も持ち合わせた方にやってもらいたいと密やかながら願うばかりです。
Commented by foggykaoru at 2005-07-27 21:34
mogさん。
>結局PJの趣味に合うか否や、ということになるのですか?
だと思います。
同じ本を読んでも、「ツボ」は各人各様。で、PJのツボはオークだった。
PJ映画のオークは見れば見るほどしっかり描かれていて、見るたびごとに感動が深まります。それってすごい功績だと思うんです。PJがいなかったら、たぶん永久にオークには興味を持たなかっただろうと思うから(笑)
Commented by fendi_jp at 2005-07-27 22:49
あー!かおるさんが匙を投げてしまわれている!!
>PJのツボはオークだった
(涙)
Commented by foggykaoru at 2005-07-28 21:41
フェンディさん。
匙を投げたというより、PJのフロド組はあれはあれでよくできてるからしょーがない、ということなんです。。。あっ、それが匙を投げたってことか!(自爆)
Commented by 銀の匙 at 2005-07-29 00:00 x
ちっ、投げられちまったい…はッいけない、某はしたない○ルウェン姫みたいな口調になってしまいましたわ。レイ○姫といい、アル○ェン姫といい、新世界の監督さんたちはやんごとないという言葉をご存じないようですわね。

キリスウンゴルで心ならずも失笑した私といたしましては、かなりヤバイはずの「I love him...」の場面をPJ版でぜひ見てみたかったのです。確信をもって申しますが、R指定になるどころか、大爆笑シーンになってるだろうことは請け合いますわ、とほほほほ。もうどうにもならないですわね。合掌。

コミックバトンの件、失礼いたしました。でも、コメントだけで十分バトンの代わりになってたあたり、さすがはかおるさんです。
Commented by at 2005-07-29 00:44 x
かおるさんの号泣(感動の反対)の涙が見える。
旦那なフロドと朴訥なサムは不可能なのですね、やっぱり。
しばらくお邪魔出来ないでいたら完結してしまわれましたね。かおるさんのお出かけの間にじっくり読まさせていただきます。
ただ、ただ、合掌、です。
Commented by foggykaoru at 2005-07-29 05:57
銀の匙さん、蓮さん。
あら、銀だったら投げませんことよ。(爆)
Rさんのコメント、一連のRotK記事の中で勝手に使わせていただきました。
では旅行後にまたお会いしましょう♪
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