人気ブログランキング | 話題のタグを見る

バルタザールの遍歴

第三回日本ファンタジーノベル大賞受賞作なのだそうだ。
作者は佐藤亜紀という人。

舞台は20世紀初頭のウィーン。
貴族の若者、それも相当の放蕩息子が主人公なのだが、その主人公が・・・ なにしろファンタジーなのです。
いったいどういうこっちゃ? まさかそういうこと? と思いながら読んでいって、へー やっぱりそういうこと?

退廃的な、落日のウィーンの雰囲気を見事に描きだしている。
そういうムードは私の得意とするところではない(なにしろ「ど健全」な英国児童文学を読んで育ったものですから)のだけれど、西洋史は好きなので、かなりツボでした。
なのだけれど、この作品の「しかけ」を十分に味わうことができるほどの知識は持ち合わせていない。とても残念。

解説は作者の恩師である、池内紀。
この作品のすごさが本当にわかるのは、このレベルの人なのでしょう。
彼をして「なんで佐藤さんはそんなことまで知っているのか!?」と驚愕させている、と言えば、どれほど西洋史マニアをうならせる作品なのかがおわかりいただけでしょうか。

どろどろ おねおねしたムードのファンタジーが好きな人、西洋史、特にオーストリアの没落の歴史に興味がある人に特にお薦めです。









by foggykaoru | 2017-01-07 22:02 | 普通の小説 | Trackback | Comments(4)

Commented by luna at 2017-01-08 10:43 x
おお、懐かしい(^^)
初版くらいで買って読みました。
眩惑されたい方にはこの人の作品はオススメですね。
Commented by foggykaoru at 2017-01-09 10:06
lunaさん。
年末に温泉に行くときに買っていった本がこれと「神様がくれた指」
どちらもブック・○フで108円でした(^^;
かなりお得感がありました♪
Commented by ケルン at 2017-02-24 17:56 x
こんにちは。
この本、前にタイトルだけ見ただけでそのまま。ようやく読みました。楽しく読みました。

文章の密度。最近の日本で出る本は、ページ数が多くてもこのような密度はなかなかありません。密度というか濃度というか、情報量だけでなく、文章になって見えている表面の下に1メートルくらいの下地がある。

言葉づかい。相当な量の翻訳文学と、昭和前半までの日本文学を読んできた人ですね。

この作者の方、20代後半でこのような作品を書くとは、頭の中はどうなっているのか、そして20年以上たった今はどんなことを考えているのでしょうね。でも1990年頃までの文学・エンターテインメントにはこれくらいの読みごたえはあったかも・・。(私が読んだのは初版のハードカバーなので、池内先生の解説はついていませんでした)
Commented by foggykaoru at 2017-02-24 21:40
ケルンさん。
>1メートルくらいの下地
その下地の「存在」だけはなんとなく感じることができる。でもそれ以上はわからないのが口惜しい。
それ以上のことがわかる人は、この作家並みのオタクなんだと思います。(褒めてます)
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

<< 漂うままに島に着き 神様がくれた指 >>