阿刀田高著「シェイクスピアを楽しむために」

阿刀田高氏の蘊蓄エッセイは「旧約聖書を知っていますか」を読んで以来、贔屓にしていて、「ギリシャ神話を知っていますか」「アラビアンナイトを楽しむために」「あなたの知らないガリバー旅行記」「楽しい古事記」を読みました。
今のところ、「旧約聖書を・・・」を越えるものはないのですが。

この本でとりあげられているシェイクスピアの作品は以下のとおり。( )内はその作品と私のなじみ度です。

(1)ハムレット(きちんと芝居を見たことがある。けっこう好き)
(2)ロミオとジュリエット(きちんと芝居を見た記憶はないが、わりと正確に筋書きを知っている)
(3)オセロ(オーソン・ウェルズ主演の映画を見た。面白かった)
(4)真夏の夜の夢(きちんと芝居を見たことがある)
(5)ベニスの商人(なんとなく知っている)
(6)ジュリアス・シーザー(シーザーがブルータスに暗殺される話だということを知っている)
(7)ヘンリー四世(題名を知っているのみ)
(8)ウィンザーの陽気な女房たち(題名とフォルスタッフという登場人物名を知っているのみ)
(9)リチャード三世(きちんと芝居を見たことがある。面白かった)
(10)マクベス(映画で見た。戯曲も読んだ。けっこうお気に入り)
(11)リア王(戯曲を読んだ。わけがわからなかった)

解説として楽しく読めたのは(1)(2)(6)(9)(10)
(6)以外はもともと内容を知っているものばかり。

逆にあまり面白くなかったのは(4)(7)(8)(11)
4つのうち2つが内容を知らない(7)(8)です。

ということで、この本はシェイクスピアの作品を知らない人のための入門書としては、あまり高い点はつけられないかも、「ちょっと知っている」程度の人に向いているかも、、、というのが私の結論。

ところで、阿刀田氏はフランス文学畑の人なので、フランスとは関係ないエッセイの中で、フランス文学のことを引き合いに出して説明することがあるのですが、私にとってはそのあたりが参考になって興味深いのです。

今回もフランスの古典劇の「三・一致の法則」を取り上げています。
これは、劇というのは
・24時間以内の出来事でなくてはならない
・1つの場所で起きた出来事でなくてはならない
・筋は1つでなければならない
という、なんとも小うるさい決まりなのですが、シェイクスピア劇はもちろんそのどれも満たしていない。
特に、最後の「筋は1つ」というところ。シェイクスピア劇というのは、本筋とはあまり関係無い話があっちこっちに入っている。
でも、それもまたシェイクスピアの魅力。

この「三・一致の法則」、以前から一応は知っていたのですが、今回この本を読んでしみじみ思いました。
フランス古典劇とシェイクスピア劇の違いは、フランス式庭園と英国式庭園の違いなのだな、と。

ごちゃごちゃしたシェイクスピア劇は、自然のあるがままの美しさを尊重するイングリッシュ・ガーデンなのです。


一番面白く読めたのが、著者がストラットフォード・アポン・エイボンとロンドンのグローブ座を訪れたときの紀行文だったのは、私が旅好きのせいなのでしょうか・・・。


この本に関する情報は
こちら
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by foggykaoru | 2006-07-02 18:24 | エッセイ | Trackback | Comments(6)

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Commented by ケルン at 2006-07-04 13:14 x
これ、面白そうな本ですね。
戯曲でピンとこなくても、舞台を見ると楽しめるかもしれませんよ。(読むだけでは半分という気がしています)

私にとって、なんといってもナンバーワンは『ハムレット』。何度も読んで、舞台も映画も見ていますが、とても長いのに飽きると思ったことがありません。毎回見るたびに印象が変わる。まだまだ、ぜんぶわかったとはいえませんが、これからも新しくわかる部分があるだろうと思うと楽しみ。これはすごい作品です。

『リア王』は3人娘と王の話・・・と以前より憶えていましたが、正直なところ、字面はわかっても、本当のところはまだわかっていないと思います。舞台も何度か見ていますが、たぶんもっと大人になったら、味わえるようになるんだろうと思っています。

特に、独白の部分は英語の響きの美しさに酔いしれてしまいます。大学のときの先生が、『マクベス』の一節を特に好んでよく朗読してくださいましたが、あれは迫力だったなあ・・・録音しておきたかったくらい。
Commented by foggykaoru at 2006-07-04 21:17
ケルンさん。
この本、次回お目にかかるときに差し上げますね。
>(読むだけでは半分という気がしています)
阿刀田さんもそう書いておられます。私もそう思います。
戯曲というのはもともとそういうもの。
特にシェイクスピアの混沌たる世界は、役者が演じているのを見なければどうしようもないんだろうなと。
それに対して、もっと頭でっかちで理屈優先の戯曲、、、たとえばサルトルあたりは、読むだけでもそこそこ大丈夫な気がしますが。
>ぜんぶわかったとはいえませんが
わからなくていいんじゃないかしら。
だって、書いた本人にもわかってないような気がする。。。
Commented by ラッコ庵 at 2006-07-06 08:08 x
これ、是非読んでみます。
あと、旧約聖書も。

冬物語:3年前息子が英語劇サークルで「ロード1」の役をやった。
真夏の夜の夢:2年前息子が「オーべロン」の役をやった。
テンペスト:1年前息子が「ナポリ王」の役をやった。
ベニスの商人:今年息子が「ベニス公爵」の役をやる。

「私とシェイクスピア」でした・・・(笑)
さすがに今年で終わりだと思いますが。終わりであって欲しい!
本人は一度くらい「貴族」とか「王」でない役をやりたい、と言っていましたが、結局4年間それでした。
6月にオーディションして、12月に公演まで稽古づけの日々です。

「真夏の夜の夢」は、チェコのトルンカの人形アニメ版が好き。
「お気に召すまま」は、萩尾望都のマンガのなかで少年たちがお芝居をやったシーンしか知りません(-_-)。

日本だけとっても1年365日、どこかでシェイクスピアの芝居をやってない日はないのではないかと思えるほどよく上演されていますよね。
すごいと思います。
Commented by ケルン at 2006-07-06 12:53 x
かおるさん

>この本、次回お目にかかるときに差し上げますね。

うわー、すみません。でもありがとうございます。楽しみです。

ラッコ庵さん

息子さん、貴族のたたずまいを生まれながらにお持ちなのでしょうか。。
いいですね、私、学生に戻れたらシェイクスピア劇のサークルに入ってみるのもいいなー。

>日本だけとっても1年365日、どこかでシェイクスピアの芝居をやってない日はないのではないかと思えるほどよく上演されていますよね。

真夏の夜の夢は、映画『いまを生きる』の中でも印象的に使われていましたね。
もちろんオリジナルは英語だけど、シェイクスピアは難解なだけじゃない、という入り口を見つける意味で、日本語でお芝居を見て楽しむのは良い方法だと思っています。その先に、英語で味わう楽しみがたぶん待っているから。
Commented by foggykaoru at 2006-07-06 21:10
ラッコ庵さん。
うーん、「旧約聖書」、私には面白かったけれど、ラッコ庵さんにはすでにご存知のことが多いかも。
>一度くらい「貴族」とか「王」でない役をやりたい
その気持ち、わかるような気がします。
いわゆる「オイシイ役」は、そういう高貴な役ではないことが多いですものね。
Commented by foggykaoru at 2006-07-06 21:11
ケルンさん。
古本屋で買ったボロい本だから、覚悟していてくださいね!(笑)

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