嘘つきアーニャの真っ赤な真実

今は亡き米原万里氏の代表作。でも今まで読んだことがなかった。

実は読んでからもう1週間?10日?ぐらいになる。一気に読んだのはいいものの、感想文を書かずにほうっておいたら、題名すらおぼろげになってしまった。「真っ赤な嘘」で検索したら出てこなかったので、ちょっと焦ったよん。

ソ連が健在だったころ、東欧各国に「ソビエト学校」というものがあったことを知ったのは、著者の別の著作を通じてだったが、その学校に直接的に関連する作品はこれが初めて。こんな特殊な学校で幼少期を過ごしたというのは、作家にとってはまたとないネタであろうが、下手をするとネタ負けしかねない。その点、米原氏の包丁さばきは確かなもので、安心していられる。

ソビエト学校というのは、親ソの国出身者、あるいは各国共産党から派遣された人の子弟のための学校だから、自国の対ソ政策がその生徒の校内の立場に陰を落とす。校長自身が率先して(!)その生徒をつまはじきにすることもあったという。アメリカンスクールとかフレンチスクール(←こういう学校、日本にもあるんです)ではそんなことはまず無いだろう。そういう意味からも、特殊だったんだろうなあ。

ベルリンの壁崩壊以降、東欧諸国を襲った劇的な地殻変動は、それらの国々の人々の運命を大きく変えた。著者の学友たちも例外ではない。私は壁崩壊前夜である1989年夏に東ドイツの人と交流する機会に恵まれた。さらにその後、東欧諸国を旅しては、ソ連の侵入と崩壊がこの地に及ぼした影響に思いをはせてきたため、そのあたりの事情に関するアンテナは、たぶん日本人の平均レベルよりも高くなっていると思う。だから、この本に書かれていることは想定内だった。それでも実に面白かった。

この本で取り上げられているのは、ギリシャ・ルーマニア・旧ユーゴ出身の3人である。著者が旧ユーゴの女性と再会を果たしたのは、内戦の真っ最中だった。彼女は内戦を生き抜くことができたのだろうか。



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by foggykaoru | 2007-10-21 19:46 | その他のジャンルの本 | Trackback | Comments(4)

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Commented by むっつり at 2007-10-21 23:16 x
ユーゴ…
チトーの民族宥和政策もむなしく、ナショナリズムの海に溺れて地獄と化しましたね
当時、テレビを見ていたら、愚かな評論家が(共産党の影響で)信仰心が足りないから内戦にかったと解説していたのを覚えています

著者の知り合いの方が無事だと良いのですが…
Commented by ラッコ庵 at 2007-10-22 07:02 x
少女時代、体制べったりだったルーマニア人の女性が、ロシア語をすっかり忘れていた、というところにショックをうけました(記憶違いだったらすみません)。
この著者にはもっともっと書き続けて欲しかった・・・。
Commented by foggykaoru at 2007-10-23 20:38
むっつりさん。
そう、旧ユーゴは、チトーという凡人とは比べものにならない力量を持つ1人の人間がいる間だけしか存在できなかったんです。

その評論家、ちょっと考えが足りないかも。
Commented by foggykaoru at 2007-10-23 20:39
ラッコ庵さん。
そうそう、ルーマニアのアーニャです。
彼女にとっては何が真実で何が嘘だったんでしょうね。。

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