屋敷の中のとらわれびと
2007年 11月 17日
人形たちをめぐる環境がじわじわと変わっていく。
その中で右往左往し、さまざまな思いを抱く人形たち。
そして、最後には思いがけない事件が起こる。
つくづく思うのですが、こういう設定の物語が成り立つのは、英国人の気質に負うところが大きいのではないのでしょうか。
ウン十年前の夏、カンタベリーの英会話学校に行ったことがあるのですが、強烈に記憶に残っていることが2つあります。
第一に、クラス全員がホームステイ先の料理に不満たらたらだったこと。
そして、もうひとつがintrusive(=せんさく好き)という単語です。
「英国人は自分自身がintrusiveではないことを望み、他の人にも同じことを望む」と教わりました。
メニム一家のご近所さんたちは典型的な英国人。多少の例外はあるけれど。
この後は白字で。
著者は長年、中学の教師をしていたのだそうですが、なるほどという感じ。
十代前半の子どもの心の中には、程度の差こそあれ、嵐が吹き荒れているもの。
自らの心に巣くう嵐に翻弄されたあげく、ついには命を落とすことすらある。
屋根裏部屋のドアがあんなふうな力を持つのは唐突すぎるように感じましたが、ああいう状況に自らをおいやってしまったアップルビーが死ななければならなかったということ自体は、(ショッキングではあるけれど)十分に納得できます。
あのドアの力が、今後、納得できる形で説明されるのか、それとも、何も説明されずに「謎のドア」で済まされてしまうのかということに興味があります。
「深いな」と思ったのは最後のところ。
ヴィネッタは理解できるようになったのだ。無理やり「ごっこ」などをせずに亡き娘のことを思い出すことこそ、ある意味ではアップルビーのありし日の生を讃えることだということを。十代のときにこれを読んでいたら、どう感じたことでしょう。
by foggykaoru | 2007-11-17 21:07 | 児童書関連 | Trackback | Comments(4)
アガサ・クリスティーでしたけれど、何度となく「甘美なる死」と言うフレーズを使っている作品があったような…?
思春期の心には深い闇が流れていますね
intrude, intrusion ともに、強引に押し入るという意味で、他人の領域にずかずか入り込むというニュアンスです。
たしかに、個人のことには立ち入らないというスタンスは、英国滞在中によく感じました。
短期ですがオフィスで働いていたので、これが個人主義とか冷たいという印象に通じるんだなと思ったものです。
その反面、小説には穿鑿好きの隣人がよく登場しますね。わかりやすい人物造型になるんだろうな。
えっ、洗濯?
そんなにきつい言葉なんですか。2週間の語学研修で覚えたのがそれだけっていうのは問題あるかも(苦笑)