遙かなるケンブリッジ---一数学者のイギリス

「国家の品格」で話題になった藤原正彦氏の本。
氏がケンブリッジで過ごした1年間の体験に関するエッセイであること、そして、息子さんがひどいいじめにあったということは知っていた。だいたい想像がつくから焦って読まなくてもいいやと思っていたのだが、古本屋で何回か出くわしたので、そろそろ読んでみるか、と手にとった。(「国家の品格」もまだ読んでません。読めばたぶん共鳴するだろうと思うけど。)

で、予想どおり、なかなか楽しめる本でした。改めて感じたのは、氏の文章のうまさ。
ケンブリッジの十月は、学生のざわめきと共に訪れた。夏の観光客の、明るい服装、ゆっくりした歩調とせわしない視線に代わり、黒い色調の、正面を見詰め足早に歩く学生達が、忽然と、大挙してこの町に現れた。口を閉ざしたまま歩む彼等を包むざわめきは、観光客の喧噪とは異質の、若きエリート達の放つ気の蠢動であった。静粛なるざわめきだった。中世の残映を濃く留める町並みに、若さが充満した。

イギリスの風景を初めて目にしたときの描写にも注目。
機上から見た通り、イギリスは緑だった。どちらを見ても、畑や緑の草原が、なだらかな起伏をなして限りなく広がっている。山は唯の1つもない。白い羊の群が見える。農家であろうか、時々石造りの家が、一面の緑の中に、小島のように浮かんでいる。美しい。田園の美しい国はどこか品格がある。

うんうん、イギリスってそうだよね、と思うとともに、この頃から「品格」がキーワードだったんだな、と、にやり。

この本に関する情報はこちら

ところで、ケンブリッジと並ぶ英国の名門大学オックスフォードでの生活に関するエッセイとしてはこの本が出色。後半ちょっとだれるけど。
あと、皇太子殿下の「テムズとともに」も。こちらはとても読みやすい。
「遙かなるケンブリッジ」と合わせて3冊読むと、オックスブリッジのすべてがわかる・・・ってのは言い過ぎですが、それぞれの著者の立場が三者三様であるだけに、どれも一読の価値があると思います。


(イギリスじゃないけど)藤原氏のこの本もおすすめ。
[PR]

by foggykaoru | 2008-02-24 11:08 | エッセイ | Trackback | Comments(8)

トラックバックURL : http://foggykaoru.exblog.jp/tb/8305403
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by むっつり at 2008-02-24 14:06 x
品格って理屈じゃなくて感覚ですからね


Commented by fu-ga at 2008-02-24 15:01 x
あら、面白そうですね。
最近は「勉強」の本しか読んでいないので、こんな感じの本、求めております。図書館で探してみよう~
Commented by サグレス at 2008-02-24 20:22 x
大分前にこの本は読みました。ディテールは忘れてしまいましたが、面白かったことと文章が良かったことは覚えています。

でも、息子さんがいじめにあった時の話は、ちょっとどうもねぇ、と私は思いました。「いじめなんかはね返せ」と言うのは易しいけれど、それができるよう性格ならいじめられていないでしょう。
最終的には著者も、「息子は学校でいじめられ、家では自分(父親)に追い詰められていたのだ」ということに気づき、態度を改めたようですが、もっと早く気付いてあげてよ・・・、と他人事ながら思ってしまったのでした。
Commented by ケルン at 2008-02-25 11:45 x
この著者の本では最初に読みました。同じ頃に読んだ加藤秀俊の『イギリスの小さな町から』(朝日新聞社)と一緒に憶えています。林 望さんなどの幸せな英国体験書とは違い、辛口というかクールに英国を見ているなと思った記憶があります。家族(子ども)をつれているとそうならざるを得ないのだろう、と確か思いながら読んでいました。いじめのところは、厳しかったかも・・・(うろ覚え) 最近立て続けに著者の半生を振り返る文章を読んだので、『若き数学者のアメリカ』も内容は多少想像がつくような錯覚がありますが、いずれ読んでみよう。かおるさんご紹介の他の2冊、私もそれぞれ好きです。
Commented by foggykaoru at 2008-02-25 20:43
むっつりさん。
「品格」を感じることのできる感覚の鋭さを持っていたいものですね。
Commented by foggykaoru at 2008-02-25 20:44
fu-gaさん。
こんな感じの本が私は好きなんです。
fu-gaさんにも楽しんでいただけるといいんだけど。
Commented by foggykaoru at 2008-02-25 20:48
サグレスさん。
ねえ。言われて戦えるんだったら最初からいじめられませんよねえ。
でも、筆者はあのキツイ藤原ていさんの息子さん。
ついついそうなっちゃうのもしょうがないかなあと(笑)
Commented by foggykaoru at 2008-02-25 20:50
ケルンさん。
さすがランサマイトは英国ものをよく読んでるなあ・・・
>加藤秀俊の『イギリスの小さな町から』
外国事情のエッセイとしては、もしかしたらいちばん好きな本かも。

<< アンリ・トロワイヤ著「サトラッ... カサビアンカ >>