あさのあつこ著「バッテリー」(角川文庫)

面白いと評判なので読んでみた。
読んでみて、良い意味で、予想を裏切られた。

裏表紙に「これは本当に児童書なのか!?」と書いてあるが、まさにそのとおり。私の場合、もしもこれを12、3歳の頃に読んでいたとしたら、絶対に好きになれなかっただろう。(これは全くあり得ない仮定。なぜなら、この作品が発表されたとき、私はすでにオバサンになっていたから。) 小中学生の頃の私は、あまりにも子ども過ぎて、こういう主人公を受け入れられなかっただろうと思うのだ。

主人公・巧は「出る杭は打たれる」日本の土壌には、めったに登場しないタイプのヒーローである。しかもまだ12歳。日本人すべてが年々幼稚になりつつある昨今、こんな大人っぽい12歳の男の子がいるのだろうか。男の子というのは、一般に女の子よりもオクテなものだ。「青っぽくて角があるところにこそ、子どもっぽさが現れているのだ」という意見もあろうが、いやいや、この青っぽさは15歳以上のものではないだろうか。親に対する態度などは、反抗期のそれにひどく似ている。おそろしく早熟な12歳である。

早熟なのは、主人公だけではない。巧の弟・青波と、友人・豪もまた「こんな子どもはいないよ」と言いたくもなるほど大人で、「できた奴」なのだ。

リアルさを優先するなら、少年たち全員を3歳上に設定するべきだったのかもしれない。にも関わらず、この年齢に設定したのは、この後の、彼らと野球との関わりを、じっくり描きたかったからなのだろう。それに、この年齢設定が、作品を楽しむことの妨げになるわけではない。少年の心のひだが、これだけ丹念に描かれているということ自体が驚異的だし、巧・豪・青波のバランスが絶妙だからである。

周囲の大人たちもまたいい。子どもの目から見た大人のありのままの姿が、感傷に流れずに淡々と描かれている。

ぜひ続編も読みたい。
[PR]

by foggykaoru | 2005-02-24 20:27 | 児童書関連 | Trackback | Comments(0)

トラックバックURL : http://foggykaoru.exblog.jp/tb/841174
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。

<< パイロット Esquire(エクスクァイア... >>