「八十日間世界一周」再読

言わずと知れたジュール・ヴェルヌの作品。

再読と銘打ったけれど、ほとんど覚えてません。小学生の頃、抄訳で読んだだけ。映画(←観てません)のテーマのだけは「兼高かおる世界の旅」(←知ってる人はイイ年です)で使われていたから、おなじみだったけど。

今は飛行機を使ったら世界一周なんて1日でできてしまう。
でも、ほんとうの意味で世界を一周するには、空を飛んでしまってはいけないと思うのです。空を飛ぶのをアリにしたら、地球の周りをくるくる回ってる人工衛星もアリになってしまうから。
やっぱり地球にくっついて一周しなくちゃ。

もしも今、陸路と航路だけで世界を一周しようとしたら、どのぐらいの日数がかかるのでしょう?
1ヶ月ぐらいかな?
世界は思ったほど小さくなってないのかも。


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この話、設定がなかなかです。

世界一周をしようと言い出すのはイギリス人。
「働く」などという、下品なことをしなくてすむ、イギリスのお金持ちです。
判で押したようにクラブに通い、1日中新聞を読んでカルタ(!)遊びして暮らしてる・・・とくると、ぷぷっ、イギリス人だ~ と嬉しくなってしまうのは私が外国人だからで。
外国人の好奇心をそそる、ヘンテコなイギリス人の典型。
こういうキャラをあえて選んだのは、ヴェルヌがフランス人で、イギリス人ではない、つまりは外国人だからだと思います。
ヴェルヌにしてみると、「80日間で世界一周できるかどうか、賭けをする人なんて、思い切り変人のイギリス人ぐらいしかいない」というところなのでしょう。
で、その忠実な従僕にフランス人を配する。フランス人読者はフランス人が出てこなくちゃ読まないものね。

で、旅の様子ですが、一言で言って、「ありえない」。

ときどきとてつもない事件がふりかかるけれど、全体としては実に平穏無事、という印象を持ちました。これがまずありえない。ほんとうに旅していたら、もっと頻繁に、もっと小さいごたごたが起きるもの。

ときどき起きるとてつもない事件というのが、ほんとうにとてつもないのだけれど。

橋が落ちそうだから、列車を猛スピードで走らせて、渡りきったところで橋が落ちる、、、なあんてこと、ありえないっしょ!
そりで帆走するなんて、某英国児童文学作家のファンが泣いて喜ぶシーンもあるけれど、ずーっと追い風で、マストが折れることもなく、あっと言う間に遅れを取り戻せるなんてのも、ありえないっしょ!
船の燃料がなくなって、船自体を燃やしながらイギリスにたどりつくなんて、ありえないっしょ!
というツッコミは野暮というもの。
これは徹頭徹尾マンガなのです。
読んでいて「巨人の星」の大リーグボールを思い出してしまいました。

インドやアメリカの原住民の扱いとか、今だったらとうてい書けない話。映画にするのもはばかられるかも。あっ、でも「パイレーツ・オブ・カリビアン」と同じですね。そう、この話は「パイレーツ」と同列です。だから楽しい映画が作れたはず。
ヴェルヌという人は、今だったら映画人になってたかも。

救い出したインドの女性とずっと一緒に旅をするのだけれど、旅行中には恋愛感情をひとかけらも見せないというのが、これまたやせ我慢の得意なイギリス人。フランス人だったらこうは行かない。ぐじゅぐじゅと恋愛に溺れていくはず。
でもヴェルヌは、変人のイギリス人を、なんだかんだ言って、けっこう賞賛しているみたいな感じがします。そのあたりが、私としては不思議に新鮮でした。
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by foggykaoru | 2008-05-22 21:17 | 普通の小説 | Trackback | Comments(18)

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Commented by サグレス at 2008-05-22 23:43 x
子どもの頃に抄訳で読んだはずですが、覚えていません(汗)。ヴェルヌでは、「海底二万海里」がとても気に入って、何度も読み返したのですけれど。「地底旅行」も記憶がおぼろです。しかし、忘れるからこそ再読の楽しみもあるというもので。(強引?)
Commented by かつての愛読書ですね at 2008-05-23 00:46 x
子供のときのいわゆるSFってヴェルヌしかなかった記憶がありまして、ずいぶん読みましたよ。80日間世界一周は何度かよみましたし(映画も見ました!)、長い夏休み(でしたっけ?)、海底2万マイル(これも映画で見た記憶が)、地底旅行など、私のSF読書遍歴のスタートになるものばかりです。
なかでも80日間。。。はあまりSFっぽくなく、気楽に読めましたね。最後のオチもよかったです。
Commented by むっつり at 2008-05-23 02:57 x
私もうろ覚え…
兼高かおるの世界の旅もうろ覚え…
↑の「長い夏休み」は、一般には「十五少年漂流記」で知られている作品では?
確か元々のタイトルはそんな感じの題名だったと思います
世界一周だという事で、日本にも来ていましたね
横浜か神戸かは忘れましたが…
オチは鮮烈に覚えています
インドの若き未亡人にプロポーズするのでしたよね?
「一文無しだけれども…」
結構、感動するセリフだった事を覚えています
当時、小学生だった私は「そうか…億万長者が結婚するのには、一度破産したと思われないといけないんだな」と、妙なところで納得
Commented by naru at 2008-05-23 11:10 x
映画は確か一昨年だかに、ジャッキー・チェンの最新作、として見ました。うーーん、今いち、というのが正直な感想。中途半端な作りでした。なんでジャッキー(従僕役)なの?っていう。
だから、foggykaoruさんの、この書評の方がずっとずっと楽しめました~。
Commented by リンゴ畑 at 2008-05-23 21:57 x
父の古い文庫本で読みました。わくわくしました!特にラストが痛快です。
…なので、DVDも持ってます。DVDは原作の雰囲気とはちょっと違う感じですが面白いです。フランス語を選択しなかったので、従僕を「バスパルトゥー!」と呼ぶ発音が、想像とまったく違っていてびっくり…。
Commented by foggykaoru at 2008-05-23 21:58
サグレスさん。
「海底・・・」は「ノーチラス号」という名前、「地底・・・」は「アイスランドは火山の国」ということだけ、インプットされて、あとはすっかり忘れています(苦笑)
Commented by foggykaoru at 2008-05-23 22:01
かつての愛読書ですねさん。
(どなたなのかしら?)
そう、この本のおかげで「日付変更線」なるものの存在を知ったのでした。
小学生の頃、ヴェルヌの抄訳を片端から読んでいたのに、それより先のSFには進まなかった私です。。。
Commented by foggykaoru at 2008-05-23 22:03
むっつりさん。
よく覚えていらっしゃいますね。
日本は横浜に来るんです。それで「ありえない」サーカスを見たりして。
>「そうか…億万長者が結婚するのには、一度破産したと思われないといけないんだな」
あはは。確かにお金持ちが真実の愛を知るには、唯一無二の方法かも。
でもそんなことを覚えたって、実際には試すことができるわけじゃないけれど(爆)
Commented by foggykaoru at 2008-05-23 22:04
naruさん。
へええ、そんな映画があったんだ~
まっ、曲芸ができる従僕ってことで、ジャッキーチェンもアリなのかな?
Commented by foggykaoru at 2008-05-23 22:09
リンゴ畑さん。
映画、今見ても面白いんですか? 借りて見ようかなあ。
パッスパルトゥー(passe-partout)というのは「どこでも(partout)」「通れる(passe)」という意味で、そこから「マスターキー」の意味になります。
彼を連れて行けば、どこでも通れるということなのでしょうね。
Commented by elfarran_in at 2008-05-24 00:17
カネタカカオルの世界の旅なんて職業があると信じていた
幼少のみぎり・・・
憧れました。でも80日の本はよんでませんねぇ^^;
十五少年漂流記は凄くすきなんですが・・・なんでも
サバイバルモノは好きです。家族ロビンソンとか。。。
映画も本もTryしてみょうかな・・・面白そうですね。
Commented by ケルン at 2008-05-24 01:11 x
あは、この本、少し前に某所で話題に出てから、本棚の前に移動して私に読んでもらう順番を待っています。落ちだけ読んじゃったんだけど。。
最初に読んだ中学か高校の頃は、どこにもいったことはなく、単純に大時代的な読み物として楽しんだけれど、今はいくつかは行ったことのあるところも出てくるのでしょうねえ。感無量(なんてね)。
パスパルトゥーって、ヘンな名前だと思ってた(ヘンな響きついでに、シェイクスピアのい「フォルスタッフ」とイメージだぶっていた)けれど、そういう意味だったんですか!! そういうところがフランス人の作者の醍醐味なのね。
Commented by foggykaoru at 2008-05-24 19:53
Elfarranさん。
最近読み直したのは「十五少年」と「八十日」だけだから、それだけで結論を出してはいけないかもしれないけれど、ヴェルヌは大人向けの本のほうが面白いような気がしました。なんて言うかな、
大人向けのほうが書きぶりが濃いような。
濃い分だけツッコミ甲斐があるというか(苦笑)
Commented by foggykaoru at 2008-05-24 19:54
ケルンさん。
あら、まだ読んでいないんだったらネタバレ読んじゃダメですよん。
フィリアス・フォッグにも何か意味がこめられているとか、どこかで読んだことがあるような気がするんですが・・・覚えてません(涙)
Commented by sugachan2 at 2008-05-25 23:26 x
失礼しました。
自分の名前を書くところにコメントのタイトルっぽい「かつての。。」って書いちゃうし、15少年漂流記と混線しちゃうし(むっつりさん、ご指摘ありがとうございます)、疲れていたんですねきっと。
でも、80日間世界一周は読んだ当時(子供のころ)は夢のようでしたね。まさか自分が海外旅行をするなんて思わなかったです。(この掲示板に来る方にくらべるとわずかなものですが)
Commented by foggykaoru at 2008-05-26 21:15
sugachan2さん。
ああよかった。いったいどなただったのかと、ちょっと気にしていました。
>まさか自分が海外旅行をするなんて思わなかったです。
子どもの頃の私の夢は「生きているうちに湖水地方に行く」ことでした。
そのぐらい、海外旅行はすごいことだったのですよね。
Commented by Kyoko at 2008-05-28 00:48 x
うふふ。「八十日」は、何を隠そう私の初めて買った文庫本(確か角川)、初めて読んだ仏文学なのです。(だから思わず反応。)
当時、小3くらいだったと思うんですが、これのアニメをやってまして。
それに無性にハマってしまって、原作まで手に入れたんです。(今でもテーマソングを歌える・笑)
今思えば8歳の子がよく読んだなって思うんですけどね。カバーぼろぼろになった文庫、大事にしてますよ。
ちなみに、フォッグ氏は私の(二次元界の)初恋の君です。言っちゃった(爆)
Commented by foggykaoru at 2008-05-28 21:49
Kyokoさん。
8歳で文庫本を読んでいらしたんですか!? 
さすが。栴檀は双葉より芳し。
で、小学生のうちにあの小さい字の「指輪」の文庫本までいっちゃったんですね。
私なんて、文庫本の読み始めは中1のときの「赤毛のアン」ですわ。凡人だーー!

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