カテゴリ:普通の小説( 118 )

夜は短し歩けよ乙女

京都ファンタジーの旗手・森見登美彦の小説。

黒髪の乙女に恋した「先輩」が、京都中、彼女を追いかけ続ける話。
「すとーかー」と呼ばれかねない行為ですな。
でも、追いかけること自体は犯罪ではない。
追いかけられている人が追いかけられている事実に気づいていてこそ、犯罪になる。
「先輩」にとって幸いなことに、黒髪の乙女は追いかけられていることを全く自覚していないのでありまする。

本のタイトルが第一章のタイトルと同じなので、一瞬、短編集かなと思ってしまうけれど、四つの章から成る、長編小説です。
一つの章が一つのエピソード。
つまり、夜追っかける話は第一章のみ。

例によって、摩訶不思議な物語が繰り広げられ、楽しく読めます。
でも、男性目線なお話なので、「先輩」に感情移入することは、ワタクシには全く不可能なのでありました。
たぶん、男子、特に若い男子のほうが、キュンとくるのではないでしょうか。

アニメ化されたんですってね。もうすぐ公開ですって。
「先輩」の声を、今や大人気の星野源が担当したんだとか。
彼はめちゃくちゃ演技がうまい。心情に合わせてがらりと顔が変わるのに驚嘆してますが、声優としてはどんなもんなんだろう? (もちろん台詞回しもとてもうまいです。でも、表情が伴ってこそだからなあ)
ちょっと興味はあるけれど、私はあんまりアニメに興味が無いので、たぶん見ることはないでしょう。
ただ、この作品を映像化するなら、アニメは最適な媒体だろうと思います。





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by foggykaoru | 2017-03-13 21:19 | 普通の小説 | Trackback(1) | Comments(2)

母の遺産

水村美苗作。副題は「新聞小説」
この人の小説は長い。これも文庫上下巻。

どっぷりハマりました。
何回も読み直しました。

とても強烈なキャラの母親を抱えたアラフィフ女性が主人公。
上巻は母親の介護と看取りの悪戦苦闘。日本の医療に対する批判もたっぷり。
下巻はその後。主人公は自らの行き方を模索していく。

登場人物がわざとらしいとか、あり得ないとか、批判もあろうかと思いますが、私は心から楽しみました。まるで映画を観ているみたい。

老母のキャラ形成の裏側とともに、副題の意味もが明らかになります。
ほおおおっ!
なるほどねえ。
小説というのは人々にそういう影響も及ぼすのですねえ。

また、兄弟が多いと、同じ両親から生まれた子供でも、長じてからの人生に大きな差が出る。
そこに(兄弟自身だけでなく、その子供にまで)妬み・羨みなど、フクザツな感情が渦巻き、それがドラマの母胎ともなる。

ちなみに主人公は1970~80年ごろにパリに留学したという設定になっていて、当時の留学生の生態、「ブルシエ」と呼ばれるフランス政府奨学生と彼らのその後の人生が、私には実に興味深く、また、非常に説得力があるなあと感心したところでありまして。

でも、ブルシエなんて聞いたこともないという人でも大丈夫。
とにかく女性、特にアラフィフ以降の女性には超お薦めです。心に響くところがたくさんあるはず。

私はこの本、ブック○フで見つけたんですが、1冊108円でした。
まともな古本屋だったらそんな値段付けませんよ。作家が可哀想です。
興味を惹かれたあなたは、できたら正価で買ってあげてください。
(108円で買ったくせに何を偉そうに<私)



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by foggykaoru | 2017-03-06 21:15 | 普通の小説 | Trackback | Comments(0)

バルタザールの遍歴

第三回日本ファンタジーノベル大賞受賞作なのだそうだ。
作者は佐藤亜紀という人。

舞台は20世紀初頭のウィーン。
貴族の若者、それも相当の放蕩息子が主人公なのだが、その主人公が・・・ なにしろファンタジーなのです。
いったいどういうこっちゃ? まさかそういうこと? と思いながら読んでいって、へー やっぱりそういうこと?

退廃的な、落日のウィーンの雰囲気を見事に描きだしている。
そういうムードは私の得意とするところではない(なにしろ「ど健全」な英国児童文学を読んで育ったものですから)のだけれど、西洋史は好きなので、かなりツボでした。
なのだけれど、この作品の「しかけ」を十分に味わうことができるほどの知識は持ち合わせていない。とても残念。

解説は作者の恩師である、池内紀。
この作品のすごさが本当にわかるのは、このレベルの人なのでしょう。
彼をして「なんで佐藤さんはそんなことまで知っているのか!?」と驚愕させている、と言えば、どれほど西洋史マニアをうならせる作品なのかがおわかりいただけでしょうか。

どろどろ おねおねしたムードのファンタジーが好きな人、西洋史、特にオーストリアの没落の歴史に興味がある人に特にお薦めです。









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by foggykaoru | 2017-01-07 22:02 | 普通の小説 | Trackback | Comments(4)

神様がくれた指

あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

たまたまですが、年越しをはさんでタイトルに「神様」が入っている本が続きました。

今回のこの本は佐藤多佳子による小説。
今まで読んだ彼女の本は「一瞬の風になれ」と「しゃべれどもしゃべれども」。
どちらも一人称の作品だったので、これもそうかと思いこんでいたら、三人称だったので、あらあらちょっとびっくり。
しかも、メインの二人がちょいとやばい感じ。
にもかかわらず、作品全体に漂う雰囲気が爽やかなのが、佐藤さんならではなのだろう。

やばい感じではあるが、メインの二人は非常に魅力的です。
解説でも「こんな人物たちに惹かれてしまう自分が怖い」的なことが書かれていますが、読んだ人はみんなそう感じることでしょう。
特にそのうちの一人は「一瞬の風になれ」に登場する、天才的スプリンターを微妙に思い出させます。彼もとても魅力的だったなあ。

お薦めです。
佐藤さんの小説が好きな人には超お薦め。(もっとも、彼女のファンはとっくに読んでるはず)







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by foggykaoru | 2017-01-04 21:05 | 普通の小説 | Trackback | Comments(2)

神様

「センセイの鞄」でちょっと気になった川上弘美の短編集。
それぞれの話は関連しているような、ないような。

裏表紙に「不思議な<生き物>たちとのふれあいと別れ」とある。
<生き物>なんだかよくわからないけれど、現実には存在しない「変なもの」が出てくる。
そういう意味ではファンタジー?なのかな?
でも、私の感覚ではファンタジーというより、「文学的な試み」という感じ。

すごく好きなわけではないけれど、これはこれで興味深く読ませていただきました。





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by foggykaoru | 2016-12-30 22:22 | 普通の小説 | Trackback(1) | Comments(0)

太陽の塔

最近ちょっと注目の森見登美彦の出世作。

ファンタジーノベル大賞受賞作だというので、どんなファンタジーかと思ったら、いつまでたってもファンタジーにならない。
その代わりに、恋人にふられた大学生の悶々が延々と。
男子のこういう述懐は、女子の私にはあんまりピンとこないのよね。

結果的にファンタジーなんだろうけど、じゃなくて、確かにファンタジーなんだけど、その要素は10パーセントぐらい。
それでもファンタジーノベル大賞に値するのだというのが、わたし的には発見でした。

「宵山万華鏡」のほうがずっと好きです。

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by foggykaoru | 2016-12-21 22:27 | 普通の小説 | Trackback | Comments(0)

3時のアッコちゃん

「ランチのアッコちゃん」の続編。

前作でちょっと唐突に感じられたエピソードが、ちゃんとつながります。
作者の柚木麻子さんは、子供の頃から児童文学に親しんで育った人なのだろうな
と感じてはいたのですが、絶対にそう。

「アッコちゃん」は、閉塞した現代日本で苦労している若者たちにとってのメアリー・ポピンズなのであります。

若者というには歳をとり過ぎている人にも、けっこうお薦めです。






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by foggykaoru | 2016-12-11 11:59 | 普通の小説 | Trackback | Comments(0)

ランチのアッコちゃん

作者は柚木麻子という人。
本屋でよく見かけて、ちょっと気になっていた本。
友人曰く「けっこういいよ。・・・ものすごく期待されると、どうかなって感じだけど」
というわけで、あまり期待せずに読みました。

短編が4つ。
とても軽くて、さっさと読めます。
面白かったです。
とても軽いけれど、物足りない感じはしません。

アッコちゃんがメインの作品ばかりではありません。
面白いのはアッコちゃんメインのものです。
なかなか強烈。

この人の他の小説も読んでみたくなりました。

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by foggykaoru | 2016-12-05 21:35 | 普通の小説 | Trackback | Comments(0)

宵山万華鏡

最近注目している森見登美彦の作品。
各章は独立した作品としても読めるけれど、密接に関連していて、最後まで読むと一つのまとまりとなっています。

ファンタジーの色合いが素敵です。私の好みです。
宵山というイベントは京都ではよっぽど特別なものなのでしょうかね。
行ってみたくなってしまいます。
でもきっと、行ったら、蒸し暑いだろうし、人ごみに辟易するのがオチだろう・・・




ところで、最近、あることに気づいたんです。
小説というのは、どうやら自分よりも年上の人が書いたもののほうが楽しめるらしい、ということ。

年を取るというのは、身体があちこち具合が悪くなったり、物忘れが激しくなったりするだけでも、なかなかに憂鬱なものなのですが、もう一つ、本好きにとって問題が生じてくる。
自分が年を取るにつれて、巷で目にする本の著者の「年下率」が増していくのです。
だから好きな作家を見つけるのが、だんだん難しくなってくる。。。

そんな中で出会ったのが森見登美彦。
この人の作品は食い足りなくありません。(少なくとも今のところは。)
いやー ほっとした。よかったよかった。








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by foggykaoru | 2016-12-01 21:01 | 普通の小説 | Trackback | Comments(2)

戦場のコックたち

作者は深緑野分という人。すごい名前だ。

友人から「翻訳ものをたくさん読んでいる人にお薦め」と言われて読んだ。

ありがとう友よ。
私はたいそう気に入りました。

久しぶりに読みごたえのある小説を読みました。
ここんとこ、ピンとくる本にあまり出会えず、欲求不満を覚えていましたが、この本は堪能しました。90点!

舞台は第二次世界大戦末期。
アメリカ人の若者が、生きるために軍隊に志願し、コック兵となる。
頼りになる先輩や同輩、頼りにならない先輩や同輩たちとともに、D-day、つまりノルマンディー上陸作戦に参加、その後も戦いの日々を送る。

軍隊を舞台としているけれど、ミステリー風味もある。
だから、2016年度の「このミステリーがすごい!」国内編で第二位になってます。
でも、ミステリーだと思って読むと物足りないかもしれない。いや、物足りないにきまってる!
だから、そんなランキングに登場してしまったのは、この作品にとって不幸なことだったかもしれない。
あくまでも「ミステリー風味の小説」なのです。

そんなことより
この小説の最大の特色は、日本の小説離れしている・・・まるで翻訳小説を読んでいるみたいであること。
でも翻訳じゃないから、翻訳調の日本語ではないのです。
つまり、下手な翻訳ものにありがちな、不自然な日本語は無い・・・とは言えない。
というのは、作者があえて翻訳調にしているところがあるのです。
たとえば、主人公はしばしば周囲から軽く見られて「キッド」と呼ばれる。kidです。
もしもこれが翻訳小説で、「キッド」と訳されていたら、私は相当イラっとくることでしょう。
をいをい、もっと工夫しろよ!「坊主」とかなんとか訳せないのか? と毒づくことでしょう。

さらに、舞台がヨーロッパ、というところも、私には直球ど真ん中でした。

たくさんの資料をもとにして書き上げられた作品です。
世界史の授業では、ノルマンディー上陸大作戦後、連合軍(というよりアメリカ軍)は、大量の物資を後ろ盾として、怒涛の勢いでドイツ軍を蹴散らしていった、というイメージだったのですが、実際の戦場ではそんな楽勝だったわけではなく、血みどろの戦いだったということをしみじみ感じました。
兵士たちは若い命をどんどん散らしていくのです。アメリカ人も、ドイツ人も。

ところで
思わぬところでトールキンの名前が出てきてびっくり。
この作者は指輪物語のファンに違いない。
・・・だからこんなに長い小説を書いたに違いない!(笑)




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by foggykaoru | 2016-11-16 20:49 | 普通の小説 | Trackback | Comments(0)