カテゴリ:普通の小説( 118 )

ケストナー作「消え失せた密画」

ブック○フで105円だったから、つい買ってしまった。ケストナーによる大人向けの小説としては「雪の中の三人男」を読んだことがあるが、全く同じタイプ。ユーモア小説です。

私は小学生のとき、「エーミールと探偵たち」を読んで、おおっこれはすごい!と感動し、もしかしたらこの作家は大好きになるかもしれないと思い、数冊立て続けに読んだけれど、いつしか冷めてそれきりになってしまった、という過去を持ちます。
つまり、ファンというほどではない。
けれど、幼少期のすり込みがあるので、親近感はかなりある。
だからつい買ってしまったわけで。
そしてごく淡々と読み終えました。
最近は小説というジャンルに強く惹かれなくなっているということもあるかも。

いちばん楽しめたのは、小松太郎氏の翻訳です。古臭いところがいい。
でも疑問点が1つあります。
今ほどは欧米の生活様式が日本に入っていなかった頃にこれを訳すのは大変だったと思うのですが、「Prost!」をそのまま「プロースト!」としているのはなぜ? 
日本語には「乾杯!」という言葉があるではないの。

あと、ベルリンの人がちょっと気晴らしに行くのはコペンハーゲン、なんですねえ。
ロンドンの人が行くのはパリ。(パリの人はロンドンには行かないが)
つまり、英仏は北海ゾーン、ドイツはバルト海ゾーン。ドイツは英仏とは文化圏が違う。
「エーミールと三人のふたご」の舞台になったヴァルデミュンデも出てきます。ヴァルデミュンデは先日読んだ松本さんの本でも紹介されていたのだけれど、このビーチ(そのものだったかどうかはよく覚えていないけれど、少なくともその近所のビーチ)には行ったことがあります。8月中旬にしてすでにあまりにも寒々しいことに驚愕し、そんな場所で「夏だ! 海だ!」と大喜びするドイツ人って可哀想・・・としみじみ思ったものです。

以前読んだ「雪の中の三人男」に関連する記事はこちらこちら

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by foggykaoru | 2007-10-28 21:31 | 普通の小説 | Trackback | Comments(18)

海老沢泰久著「美味礼賛」(文春文庫)

c0025724_19474597.jpg辻調グループの先代校長・辻静雄の半生を描いたものだが、伝記ではない。というのは「架空の物語である」という著者自身の断り書きが付いているから。とはいえ、静雄本人に入念な取材をしてあるということで、大筋としては、彼の生涯をかなり正確に描いているのだろうと思われる。

すごい人だったんだな。
というのが率直な感想。
月並みですが。

静雄は戦後の日本の料理界に種まきをして、育てたのだ。

料理学校の跡取り娘と結婚したことで、はからずもその後継者とならざるを得なかったのだが、それから後がすごい。
フランス料理というと、ステーキ、エビのカクテル、オードブル盛り合わせくらいしか存在していなかった昭和30年代に、フランス料理に関する原書を読みあさり、「本物はそんなものではない」と知り、渡仏し、超一流レストランの食べ歩きをし、その味を覚えて帰って、自分の学校の教師にそれを教えたのである。

もちろん、太っ腹な義父の経済的援助があってこその渡仏だったし、彼が仏文科出身であり(最初のうちはフランス語もそんなに上手ではなかったらしいが)、かつ、妻が英語堪能で、言語の障壁があまりなかったというのは大きいだろう。
でも、欧米のガストロノミーの大家や四つ星レストランのオーナーが彼を温かく迎えたのは、単に言葉が話せたためだけではないはず。ガストロノミーの大家の著作を原語できちんと読みこなした上でご本人に会ったというのがポイント。人に教えをこうときの正しい態度である。

さらにまた、「教えてやりたい」と思わせるものが、彼の人柄の中にあったに違いない。

彼は何かに興味を持つととことん究めないでいられないという、今で言うオタク心の持ち主であり、学生時代に凝ったクラシック音楽に関する造詣は、非常に深いものだったそうだ。そこが最大のポイントかも。
「外国の人と交流するには、単に語学ができるだけでは十分ではない。語れることを持っていなければ」と言われる。(もちろん、この場合の「外国の人」というのは、土産物屋のおばちゃんレベルを指すものではない。別に土産物屋を馬鹿にしているわけじゃないんだけど。)
「語れること」というのは、ひらたく言えば「教養」である。
要するに、「おおっ、こいつは大したものだぞ」と思わせるものがなくては、相手にしてもらえない。

静雄は好きなことばかりやっていて、受験勉強に身を入れなかったため、大学に二度も落ちたあげく、ようやく二部にもぐりこんだ。
でも、難しい大学に入れることと、知的で教養があるということはイコールではない。
静雄の成功の秘密は、彼が「本物の教養人」だったところにあるのではないだろうか。


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by foggykaoru | 2007-04-03 20:05 | 普通の小説 | Trackback | Comments(2)

TUGUMI

吉本ばななの有名な作品ですが、読んだのは初めてです。吉本ばなな自体を。

病弱で非常に嫌な奴である少女「つぐみ」を、なんとも魅力的に描いています。
吉本さん、お上手。
デビュー当時、あれだけ話題になったのがうなずけました。

作品の中で心理描写が占める割合がきわめて高い。
半分、いや、7割くらいは心理描写なのではないかしら。
きめ細やかで説得力があるので、読者は十分納得させられます。

が、こういう小説が好きかと尋ねられたら・・・
別に嫌いではないけれど、大好きというわけではないです。

あとがき(←誰が書いたのか忘れた)に
「マンガを読んで育った世代らしい文体だ」
とかなんとか書いてありました。
決してけなしているわけではなく。

なるほどと思いました。
私はほとんどマンガを読まないけれど、30年くらい前(かな?)から日本のマンガ、特に少女マンガの質がぐんと高まったということは、どこかで読んで知ってます。そして、その中には「絵を媒体にした文学」というべき域に達した作品も少なくないのだろうということは、容易に想像できます。

吉本ばななの小説は、そういうマンガ作品の雰囲気を持った文学作品なのかも。


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by foggykaoru | 2007-01-27 08:58 | 普通の小説 | Trackback | Comments(6)

「青春文学の傑作」と呼ばれていますが

機内で観た映画ネタです。
原作が小説だから、ココでご紹介しようということで。

年末の旅はエールフランスだったので、映画のラインナップがフランス製に著しく偏っていました。
それはまあいいのですが、たとえばKLMあたりだったら、観たい映画を選択した時点で、その映画の放映が始まる。つまり、家庭でDVDを観るのと同じ感じで観られるのですが、エールフランスの場合、映画を放映するのはあちら。つまり、非常に幸運な場合を除き、すでに上映が始まっている映画の途中から観ることになるのです。だから、どういう内容なのか、把握するのが大変。
しかも、この映画の原作、私は今をさかのぼることウン十年前、マジメな学生だった頃、フランス語のお勉強の一環として読んだもの。そういう小説は何冊かあるのですが、どれもこれも、読解力不足のため、内容がいまいちよくわからないままだったりして(汗)

今回、サービスの悪いエールフランスのお陰で、数十年前に読んだときと同じ気分を味わうことができて、感慨無量でした(爆)

申し遅れました。
原題は「Le Grand Meaulnes」
邦題はいろいろ。「グラン・モーヌ」とか 「さすらいの青春」とか 「モーヌの大将」とか・・・
アラン・フルニエという夭折の作家による、「永遠の青春」を描いた傑作ということになっている作品です。

主演はジャン=バティスト・モニエ。
「コーラス」の主人公を演じて、一躍人気者になった男の子。
あのときほどフレッシュな魅力はないなあ。少年は老いやすいのだ。
しかし、変声期はまだ迎えていなくて、喋る声は美しいボーイソプラノ。
その声のまま、最後はちょびひげの一人前の教師になってるんです。きっついわ~

ビジュアル的な「買い」はジャン=バティストくんよりもむしろ、その先輩であるモーヌを演じているニコラ・デュショーヴェルくん。
彼はすごい。何がすごいって、アラン・ドロンの顔立ちと、ジェラール・フィリップの気品と繊細さを兼ね備えているのですから。

というわけで、これはフランスのジャニーズ系2人を観る映画なのです。

だからって、日本で公開されて、日本の女の子たちがきゃあきゃあ言って観に行くかというと・・・行かないだろうなあ。
っていうか、公開されないんじゃないかしら。
公開されるとしても、まさに単館、都内で1館でごく地味~にやってすぐ終わっちゃうのでは。

今回、機内で1回半観て、ようやくこの作品の筋を理解したのですが、今の日本では絶対にウケない話です。フランスでだって、ウケるかどうか疑問。
だからって、原作は悪くないと思うんですけどね。数十年前、細かいことがよくわからなくても、最後は胸がキュンとなったもの。

原作が名作として名高いから、若い売り出し中アイドルの映画を作ってみました、っていうことなのだろうと思うのです。
日本でいうと、山口百恵の「伊豆の踊子」とか、松田聖子の「野菊の墓」みたいな。って例が古すぎてごめん。


映画「Le Grand Meaulnes」の公式サイトはこちら

原作「Le Grand Meaulnes」とアラン・フルニエのファンサイトらしきものはこちらです。英語のページもあります。
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by foggykaoru | 2007-01-21 12:41 | 普通の小説 | Trackback | Comments(8)

瀬尾まいこ著「図書館の神様」

最近とんとフィクションを読まなくなってしまった私。
たとえ読んでも、その内容にちょっとでも西洋史とか海外事情にひっかかりがあると、物語自体を楽しむよりも、その方面の「おべんきょ」モードになってしまいがちです。
好きでやっているお勉強なのですから、別に何も問題は無いのですが、疲労しているときには、やっぱり不向きです。
それに加えて、「もしかしたら自分は、そういう要素が全くない、日本の普通の小説を、のんびり楽しむということができなくなってしまったのではないか?」という不安すら覚えるようになってきました。

こんな悩み(?)を友人にぶつけてみて、薦められたのがこの本。

主人公である、高校で国語の非常勤講師をやっている女性と、彼女が顧問をする文芸部の男子生徒の、ほのぼのした交流が描かれています。
今時こんな大人っぽい高校生、いるのかね?と思いつつも、楽しくさらさらと読み進みました。
薄いし、1時間半くらいで読み終わったかな。
お茶漬けの味。胃が疲れているときにぴったり(笑) 外国の小説ではこうはいかないわ。
骨太なテーマは無いけれど、あえて言えば、「心の傷の癒し」がメインなのでしょうか。
サブテーマは「読書の素晴らしさ」。私はこれにいたく共感しました。

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by foggykaoru | 2006-10-18 20:33 | 普通の小説 | Trackback | Comments(2)

ジェイン・オースティン著「マンスフィールド・パーク」

私の友人には、大きくわけて、「イギリス好き」と「フランス好き」という2つのタイプの人がいます。
イギリス好きの友人の間で、ここ2、3年、静かなブームを呼んでいるのがジェイン・オースティン。この「マンスフィールド・パーク」もそんな友人が貸してくれたものです。

オースティンは10年くらい前に「自負と偏見」(「高慢と偏見」だったかも)を読みました。最近、キーラ・ナイトレイが主演した「プライドと偏見」(←観てないんだけど)の原作です。内容的には「主人公の女性が紆余曲折を経て幸せな結婚する」という話だった、ということ以外、さっぱり覚えていないのですが、とにかく印象が良かったことだけははっきり記憶しています。「オースティンはすごい」と思ったものです。

この「マンスフィールド・パーク」も、大筋としては「自負と偏見」と同じです。
主人公の女性が紆余曲折を経て幸せな結婚をする。
それだけなのに、なんと700ページ近くもある。
正直言って、最初は多少退屈なところもありました。
オバサンのどーでもいー長話とか。これがどうしようもなく非生産的。
それが、3分の1を過ぎるあたりから、がらっと変わりました。別に物語が急展開するわけではない。それどころか、ずっと同じです。でもなぜか、面白くてやめられなくなる。
これを私は「オースティン・マジック」と呼びたいと思います。(←なにを偉そうに)

オースティンに関しては、なにかというと「批判精神」が絶賛されるので、今さら同じことは言いたくないのですが、やっぱり言わざるを得ません。
中産階級に生まれて、死ぬまで田舎のお屋敷で平穏無事な生涯を送った(らしい)。
そんな女性に、いったいどうしてこんなに鋭い批判精神が育ったのだろう?
さらに、古い時代の価値観にのっとった話なのに、どうして古く感じられないのだろう?
これまた「オースティン・マジック」です。


蛇足ですが、この作品が書かれたのは1814年。19世紀初頭。
英国海軍でジャック・オーブリーが頑張っていた頃なのだなあと思うと、さらに感慨が深くなりました。

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by foggykaoru | 2006-06-13 21:23 | 普通の小説 | Trackback | Comments(2)

オークシイ著「紅はこべ」(河出文庫)

ちょっと前、メインサイトの掲示板で、「昔からなじみがあって、ヒーローだということは認識しているけれど、いつ、どこで、何をしたのか、具体的には知らない人」が話題になりました。

たとえば、怪傑ゾロ。これは数年前、「マスク・オブ・ゾロ」を機内で観て怪傑 解決済み。

たとえば、エル・シド。これも、その後スペインの歴史本を読んだおかげで、どういう人かよくわかりました。

そして、この紅はこべ。検索してみて、これが小説の主人公で、あくまでも想像上の人物であり、フランス革命中にフランス貴族の亡命を助けた謎の人物であるということはわかりました。

でも、どうせだったらいずれ原作を読みたいと思って数ヶ月。

最近、「レ・ミゼラブル」の原作を読んでみたいという気分が盛り上がっているのですが、果たしてあの超長編をほんとうに読めるのか、、、という弱気がもたげ、とりあえずこちらを先に読んでみた次第です。「フランス史を背景にしたロマンチックな小説」という共通項があるので。

アタリでした。
これこそ今の私の気分にぴったりの本でした。
革命のわさわさ感の中で、美しい貴婦人やかっこいい貴公子が山ほど登場し、大冒険を繰り広げます。
前半こそ「紅はこべは誰か?」という謎がありますが、案外早くネタバレし、その後の活劇も「予定調和」の中に進行します。
「謎が謎を呼ぶ」という展開を期待しているとがっかりするかも。
でも、ネタバレしていても、時代の雰囲気が味わえます。ちょうと一昔前の推理小説みたいに。

しかし、つくづく思ったのですが、王侯貴族を次から次へとギロチン送りにしたフランスって、メガネをかけた人はインテリだからと皆殺しにしたカンボジアのポルポト政権と同じですね。周囲の国々から総スカン食ったのがよくわかりました。で、その後に登場する皇帝ナポレオンが、ヨーロッパを征服しようという勢いで戦争をおっぱじめる。これはナチス・ドイツがやったことと同じです。似たようなことをしても、後になってやったほうが、記憶が新ただから、悪者というイメージが強くなるんだな。もっとも、ナポレオンはヒトラーと違って、他民族を抹殺しようとして殺人工場を作ったりはしなかったけれど。

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by foggykaoru | 2005-10-02 21:29 | 普通の小説 | Trackback | Comments(6)

珍作? 怪作? はたまた傑作?

洋子姉さまが、もっとわがままに、もっと烈しく、あたしを責めて下さつたなら……。
あたしを抑えつけて、眼の廻るほど、ぐんぐん引つぱつて下さつたなら……。

今日からこのブログは同人系に衣替えすることにしました。というのは冗談です。

上に引用したのは友人@ネタ大明神が貸してくれた小説の一節。中学の頃に愛読したのだそうです。すごいですねー! 栴檀は双葉より芳し(爆)

ところでこの小説、誰が書いたと思います?

答えはこちら
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by foggykaoru | 2005-06-02 21:15 | 普通の小説 | Trackback | Comments(13)