カテゴリ:普通の小説( 129 )

君のためなら千回でも

お抱え司書(爆)お勧め本。

著者はカーレド・ホッセイニという、アフガニスタン生まれで在米の作家。
この小説が映画化されたことを、うかつにも、あとがきを読むまで知らなかった。

アフガニスタンの大成功者ババを父に持つ少年アミールと、その家付き召使アリの息子ハッサンの、「友情」という単純なくくりでは説明しきれない交流。少年の心の屈折。やがてソ連がアフガン侵攻を開始。人々の日々の暮らしが引き裂かれる。そして数十年後、タリバンの支配する時代がやってくる。日本のNPOのメンバーが不幸にあったことで耳馴染みになってしまったペシャワールという地名も登場する。

面白い。読み終わるまでに何度も泣いた。

この作品の最大の魅力はババの人物像だと思う。決して完全無欠な人ではないけれど、いや、完全無欠でないからこそ、魅力的なのだ。

そしてアフガンの民族対立や宗教問題など、教科書で習ってもすぐに忘れてしまうが、こういう本を感動しながら読むと、心の中に刻印されたように残る。文学の力は偉大だ。


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by foggykaoru | 2009-05-16 15:49 | 普通の小説 | Trackback | Comments(4)

夜間飛行

リンドバーグの本を読んだあと、ちょっと気になっていたこの本、古本屋で見つけたので即購入。

大昔、フランス語の教科書に抜粋が載っていた。それを読み、「原書で読みとおす気にはなれないけれど、せっかくだから翻訳で読んでみようか」と思い、書店で文庫を手に取り、文字がぎっちり詰まったページを見て、こりゃだめだと断念したのであった。

で、今回読んでみて、、、

やっぱり文字が多かった。

あれから何十年もたってるのに、成長してない私。
まじめに縦に読めなくて、相当いい加減な読み飛ばしでようやく読了した。
どうしてなんだろう?
このぐらい文字が詰まった本は普段から読んでるはずなのに。

とりあえず、当時飛行機で飛ぶということが、いかに危険で命がけの行為だったかということはよくわかった。
・・・平凡な感想ですな。


そして、併録の「南方郵便機」
サンテグジュペリのデビュー作。1929年発表。
こっちは途中で挫折。わけわかりましぇん。。。


リンドバーグ以前にヨーロッパから南米への定期便(郵便機)が就航していたことがよくわかった。
フランスからスペインへ飛び、何回も給油しながらアフリカ西岸沿いに南下。大西洋がいちばん狭いところ(変な言い方だ)を飛び越え、ブラジルの最東端へ。さらに何回も給油しつつ飛び、(たぶん)最大の難所アンデス越えをする。
当時の常識では、こんな航空路に定期便を飛ばせようという考え自体が、無謀だった。「夜間飛行」の主人公リヴィエールは、周囲の危惧をはねのけて強引に実現させる。しかしそれは、部下である飛行士たちの命を常に危険にさらすことを意味していた・・・

Wikipediaのサン=テグジュペリの項を見たら、新潮文庫の表紙絵は宮崎駿が描いているとあった。確認してみたら、あらほんと!
宮崎さんの飛行機好きは知られているけれど、そういえば、「ハウルの動く城」で無理やり登場させた飛行機なんて、まさにサンテグジュペリの飛行機ですねえ。

それにしてもフランスではちょくちょく「Saint」がつく苗字があります。サンテグジュペリはSaint-Exupery---聖エグジュペリなんて聖人はいるのかいな?というのが大昔からの疑問。
かのイブ・サンローランもYves Saint-Laurentなのだ。「聖ローラン」は「セント・ローレンス」。だからカナダのセントローレンス河はフランス語ではサンローラン河なのよん。
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by foggykaoru | 2009-05-02 18:28 | 普通の小説 | Trackback | Comments(9)

無名なるイギリス人の日記

ジョージ&ウィードン・グロウスミス著。ジョージとウィードンは兄弟なのだそうだ。

「ボートの三人男」と同系列の英国ユーモア小説。
銀行に勤めるプータ氏の日記という体裁をとっている。

あとがきによると、同時代の英国の書評家の中には、この作品のほうを高く評価する人もいたとか。
どちらが好きかは、、、人によるだろう。
格調が高いのは丸谷才一訳の「三人男」のほうではないかと思うのだけれど、訳者の力量によるものが大きいのかもしれない。 
読みやすさでは断然こちらが勝っている。

英国好き必読!かどうかはわからないけれど、まあ、読んでおいてもいいかもね。


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by foggykaoru | 2009-03-17 20:17 | 普通の小説 | Trackback | Comments(10)

遺失物管理所

著者はジーウフリート・レンツというドイツの作家。ドイツでは有名らしい。

新潮社クレスト・ブックスというのは、大人のための良質な小説が揃っていそうだなと思って、なんとなく手にとってみたのだけれど・・・うーん・・・これはそれほどでも。
いつでもやめられると思いながら読んだのだけれど、読みやすいから最後まで読んでしまった(苦笑)

いろんな人のなくし物が流れてくる、鉄道の遺失物管理所に勤務する若者が主人公。
もっといろんな人間模様が出てくるのかと思ったら、期待ほどではなかった。
あと、この主人公が異様に能天気であまり共感できなかった。
「この部署は鉄道でいえば待避線。出世コースからはずれている」という台詞が出てくるくらいなのだから、もうちょっと落ちこぼれ感を抱いた人のほうが味わいがあったかも。
で、その人が、挫折の中で、ほんとうの人生とか幸せを見つけていく、、、みたいな。

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by foggykaoru | 2009-02-22 10:21 | 普通の小説 | Trackback | Comments(6)

「天使の歩廊--ある建築家をめぐる物語」

中村弦著。今年度の日本ファンタジーノベル大賞受賞作。候補作品の中でダントツだったそうで、即受賞が決定したとか。

その内容は・・・帯に書かれたコピー以上のものは書けません。まさにこのとおり。
天使の幻影に魅入られた造家師と、その優しい奇跡に酔いしれる人たちの華麗な輪舞曲
造家師というのは、今でいうところの建築家。
要するに天才建築家と、彼に家を注文した顧客、そしてその家の物語です、、なんて言い方すると、夢もへったくれもなくなってしまう(苦笑) 私の紹介なんかよりも、実際に作品を読んでみてください。コピーがいかに的確であるかがわかるはず。

建物というのはその中に住む人、あるいは一時的であってもその中に身を置く人に、なんらかの影響を及ぼすものです。

たとえば旅の宿。居心地の良い宿と悪い宿の違い。これはアメニティーが整っているかどうかなどということとは全く次元の異なる問題だと思います。スタッフの心遣いも大きく影響するけれど、それはおいといて。
そこに身を置いたとき、ほっとする空間であるかどうか。
私が今までに泊まった宿の中で、最高に居心地がよかったのは、上海の浦江飯店。あまりにも居心地良くて、うかうかしていると観光に出かけそびれるほどでした。(携帯で撮ったピンボケ写真はこちらのページの下のほうにあります。)
その次に印象に残っているのは、南仏アルルのホテルの、部屋、じゃなくて階段。毎日上り下りするたびに感動してました。(写真はこのページの一番下。)

日本では残念ながらそういう体験をしたことはない(というか、私は日本ではほとんど旅をしないのです)けれど。
あっそうだ、表参道ヒルズにはちょっと感動しました。なだらかなスロープで地下におりていく周回路と吹き抜けに。あそこは屋内で散策が楽しめるという点で、稀有な建物ではないでしょうか。バリアフリーとかいった配慮を優先する人には評判悪いだろうけれど。それに、あの建物はただ散策されるだけではダメなんですよね。買い物しようという気にさせなくてはならない。そういう意味ではあまり成功していない?

話がずんずんそれてしまいました。

この小説は短編集のような体裁で、それが最後にはひとつにまとまります。
短編は二つのタイプに分かれます。
「天才建築家のたどった人生のエピソードに関するもの」と「彼が建てた家に関するもの」に。
私が好きなのは後者です。それぞれ温かい余韻に包まれている。特に「忘れ川」の最後の一文が好きです。

「ファンタジー」という点を重視するなら、建築家自身をあまり登場させないほうがよかったのかもしれない。つまり、彼の人生を謎に包まれたままにするほうがよかったのかも。

でも、もしそういう形だったら、逆に欲求不満を覚えたかもしれない・・・。かもしれないどころか、絶対にそう。

小学生のころ建築家になりたかった私は、住宅がポイントになっている小説では間取り図が無いことを物足りなく思うことがままあるのですが、この小説に関しては、そういう不満はありません。というか、この場合、そんなものがあっては台無しです。

建物が好きな人、ノスタルジックな雰囲気が好きな人に特にお薦め。
歴史好きにも。

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著者の中村弦氏に興味のある方はこのページをご覧ください。
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by foggykaoru | 2008-12-11 21:16 | 普通の小説 | Trackback(1) | Comments(13)

・・・イギリス人って!

「ボートの三人男」という本を読みました。
著者はジェローム・K・ジェロームという人。
翻訳が丸谷才一で、背表紙の宣伝文句「イギリス独特の深い味わいをもつ、代表的な傑作ユーモア小説」に惹かれて。

これは旅先で読むのにぴったりだったかも。ペルーに持っていけばよかった。
というのは、この小説、話がしょっちゅう脱線する、というより、全編、脱線話の連続。
だから一気に読むとついていくのがしんどくなる。
だからと言って2、3ページずつちょこちょこ読みすると、どういう脱線話だったかわけがわからなくなる。
だから旅先で毎日1章ずつ読むのに適しているんじゃないかな。

それにしても、「ボート」というのが手漕ぎボートなのである。
三人の男たちが「ボートで遊ぼう」と思いついて出発するあたりまでは、なんとなくティーゼル号のようなヨットか、マーゴレッタ号のようなエンジンのついた船のことかと思いこんでいたのだが、そうではなくて手漕ぎボートだったことに気付いたときは唖然とした。
何日もテムズ河をボートで手で漕いでいくのだ。
漕ぐ、あるいは・・・引っ張って歩く!!
そして、その日の気分によっては、夜もそのボートで寝る! 
大の男(イギリス男は日本男よりでかい)が三人も!

イギリス人にとって、こういう遊びって普通なのだろうか?

ずーーっと昔、イギリス人の趣味として「バード・ウォッチング」なるものがあるらしい、そして、それはただ鳥をじーっと観るだけなのだそうだ、と初めて聞いたとき、「何が楽しいんだろう?!」と呆れたものだ。今回の驚きには、そのとき抱いた感情に通じるものがある。
(その後、バード・ウォッチングを経験してみて、鳥に詳しい人と一緒だとなかなか楽しいものだとわかったけれど。)

あと、テムズ河畔の土地の説明がけっこう詳しいので、これは土地勘があるほうが、そこにこめられているユーモアや皮肉がわかって面白いのではないかと思っていたら、あとがきに「テムズ河についての歴史的および地理的な展望の書としてもくろまれた」とあった。要するに、一種のガイドブックだったのである。

登場する地名の中に「ハムトン・コート」というのがある。
これは明らかに「ハンプトン・コート」のことなのだが、なぜ「ハムトン」? 丸谷才一氏があえてそう表記しているのだから、正しいのだろうけれど、私はイギリスで「ハンプトン・コート」で通してました。生粋のイギリス人はそう発音するの?

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by foggykaoru | 2008-08-31 09:13 | 普通の小説 | Trackback | Comments(22)

「しゃべれどもしゃべれども」

「一瞬の風になれ」の佐藤多佳子さんの小説。「一瞬の・・・」の順番がいつになっても廻ってこない(だったら買えよって話もあるが)ので、とりあえずこちらを読んでみた。人間ドックの待ち時間が有効に使えた(笑)

去年、TOKIOの国分太一クン主演の映画の予告編を何回も観てしまい、自由に脳内映像を描くことができなかったのがちょっと残念。でも楽しかった。DVDを観てみようかなという気にもなっている。

この小説は一人称で語られているのだが、「坊ちゃん」を意識したその小気味よい語り口がが最大の魅力だと思う。

「一瞬の・・・」がますます楽しみになってきた。

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by foggykaoru | 2008-07-11 20:42 | 普通の小説 | Trackback | Comments(8)

「八十日間世界一周」再読

言わずと知れたジュール・ヴェルヌの作品。

再読と銘打ったけれど、ほとんど覚えてません。小学生の頃、抄訳で読んだだけ。映画(←観てません)のテーマのだけは「兼高かおる世界の旅」(←知ってる人はイイ年です)で使われていたから、おなじみだったけど。

今は飛行機を使ったら世界一周なんて1日でできてしまう。
でも、ほんとうの意味で世界を一周するには、空を飛んでしまってはいけないと思うのです。空を飛ぶのをアリにしたら、地球の周りをくるくる回ってる人工衛星もアリになってしまうから。
やっぱり地球にくっついて一周しなくちゃ。

もしも今、陸路と航路だけで世界を一周しようとしたら、どのぐらいの日数がかかるのでしょう?
1ヶ月ぐらいかな?
世界は思ったほど小さくなってないのかも。


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ネタバレです。
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by foggykaoru | 2008-05-22 21:17 | 普通の小説 | Trackback | Comments(18)

「幸福な食卓」

瀬尾まいこ著。以前読んだ彼女の作品が好印象だったので。

十代の女の子が主人公とあって、さすがに私@オバサンにとっては「我がことのようにびんびん響く」ということはあまりないのだが、、、
次第にのめりこんで、最後には佐和子と一緒に泣いてしまった。
でも、苦い涙ではない。
すがすがしい読後感。

人生にとって、「役割を演じる」というのはどういうことなのだろう?
それに疲れを感じることもあるし、その負担に押しつぶされそうなこともある。
でも、同時に、それは人生の張りでもあり、喜びでもある。
役割の無い人生などあり得ない。


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by foggykaoru | 2008-04-19 18:12 | 普通の小説 | Trackback | Comments(2)

「愛の妖精」

私はフランス文学が得意ではない。
なんとなく男性の側に立った作品が多いような気がするのだ。
そして多くの場合、女性は「男性を惑わせる存在」として描かれる。
恋愛の段階までいかない、子ども同士の関係においてさえも。

たとえばフランスの国民的作家マルセル・パニョルによる幼年時代三部作。第一作「父の大手柄」と第二作「母のお城」はおおいに気に入ったのだが、第三作「秘めごとのとき」で幻滅した。幼いマルセルが初めて知り合う異性である女の子が、まるで妖婦のようで読んでいてうんざりしてしまったのである。
(英米文学に登場する少女は、そんなに小さい頃から異性を幻惑したりしないのに。)

でもジョルジュ・サンド描くこの作品は男目線ではない。
なんてったってサンドは女性だし。ショパンを始め数々の恋人を持ったことで知られる男装の麗人です。
その彼女が、ヒロインであるファデットの口を借りて、常日頃から思っていたことを語っているのだから、当時からすると先鋭的だっただろうが、現代の感覚では「ちょうどいい」のだ。
小説としての筋立ては、現代の感覚では安易だけど、気持ちよく読める。
本好きな女子中高生にも薦められます。

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(↑これは岩波文庫。私が読んだのは角川文庫です。)
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by foggykaoru | 2008-03-24 21:12 | 普通の小説 | Trackback | Comments(2)