カテゴリ:普通の小説( 120 )

わたしを離さないで

カズオ・イシグロ著。
映画作品として先に知っていた。観たわけじゃなくて。
予告編を視て、「あーー、そういう映画か。観たくないな」と思ってそれっきり。

亡父の蔵書だったのです。
少しでも本を減らしたい母が「邪魔だから何か持っていってよ」と懇願するので、しょうがないなあとこれを選んだという(苦笑)

持ってきてからも読まずに数か月。
中年以降、すっかりノンフィクション体質になっているので、フィクションに取り掛かるのにきっかけが必要なんです。
今回は「図書室の魔法」がきっかけ。
まだこっちのほうが読みやすそうだと思った(自爆)

実際、とても読みやすかった。
ほっとした。(なにしろ苦手なSFがらみの物語の後だから)
これも一種の異世界ファンタジーなのだけれど、SFではない。

深い悲しみが底流にある。
私の脳内では淡いピンクがわずかに混じった薄紫の世界。
カタルシスがあるわけでない。
正直、全然好きな話ではない。
でも読み終わって何かが残る。
カズオ・イシグロの力量を感じた。

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by foggykaoru | 2014-10-23 21:23 | 普通の小説 | Trackback | Comments(4)

夏のロケット

「川の名前」を書いた川端裕人のデビュー作なのだそうだ。

高校時代のちょいとオタッキーな仲間たちのその後、というお話。
たいへん面白い。
ここんとこハズレばかりで意気消沈していたのだけれど、ようやく面白い本に出会えた。

そして、
「川の名前」のときも感じたけれど、川端さんの小説はランサム的です。
子供のときに初めて「ツバメ号の伝書バト」を読んだときの気分がよみがえりました。
ランサム・サガの子供たちが、大人になってからもう一度金鉱探しに挑戦しているみたいな感じ。

それだけじゃありません。

私は「伝書バト」、好きは好きなんだけれど、ベストではない。
あの作品は理系のことが多くて、面倒くさくてたまらない。
だから子供のとき、いつも読み飛ばしていたのです。
今回、ロケット造りの理論的な話をばんばん読み飛ばしているときに、「この懐かしい感じは何? そうだ、伝書バトを読んだときと同じなんだ!」と思い当たったのです(苦笑)

だから、「伝書バト」が得意な人はぜひ。

サントリーミステリー大賞の優秀作品賞受賞作だというけれど、これがミステリーなのかな? こんなに面白いのだから、違う賞だったら大賞をとれていたかも? だからってどんな賞がふさわしいのかもわからないけれど。直木賞とも違う。ファンタジーというのとも違う。

川端さんがいまいちメジャーでない(そこんとこもランサムに似ている(苦笑))のは、既存のジャンルと微妙にずれていて、損してるということなのかな? 


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by foggykaoru | 2014-10-05 20:43 | 普通の小説 | Trackback | Comments(4)

メリーゴーランド

荻原浩の小説。
前に読んだ「神様さまからひと言」がけっこう楽しかったから、疲れた頭にいいかなと思って読んだのだが・・・思いがけず辛口なお話で、ストレス解消にはぜんぜん不向きでした。
熱帯雨林のレビューは「神様~」以上に好評です。
どーやら私が疲れすぎていたらしい。。。
有川浩の「県庁おもてなし課」を思い出してしまった。
「お役所仕事」が辛辣に語られているという点で共通してるので。
「ドラマ向き」という点でも共通してるかも。
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by foggykaoru | 2014-10-04 21:42 | 普通の小説 | Trackback | Comments(2)

獣の奏者Ⅰ~Ⅳ

国際アンデルセン賞を受賞した上橋菜穂子さんの作品。
上橋さんは子供時代の愛読書を問われると、必ずランサムを挙げてくれる良い人です(^^;

読み始めてすぐ、ル=グインの「西のはての年代記」を思い出した。

ⅠとⅡを一気に読み、おおさすが!と感動し、ここで一応終わるからやめようかなと一瞬思ったけれど、思い切ってⅢとⅣまで読んだ。
Ⅱまでのほうが広がりがある。のびやかな感じ。
Ⅲから後は集約していく感じ。
Ⅳは「完結編」。ほんとに完結してしまう。

ああ・・・ ああ・・・

面白かったけれど、読み返す気分にはならない。

Ⅴは外伝。読もうかな、どうしようかな。

上橋さんは子供の本を書いているつもりはないそうなので、カテゴリーは「児童書関連」ではなく、「普通の小説」にしておきます。「普通」なのかな。まあいいや。

「Ⅰ 闘蛇編」に関する情報はこちら
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by foggykaoru | 2014-08-27 22:06 | 普通の小説 | Trackback | Comments(11)

オネーギン

プーシキン作のこの小説は、オペラやバレエで「エフゲニー(エヴゲニー)・オネーギン」の名前でよく知られています。パリのオペラ座でバレエを観たときは爆睡してしまったのですが、原作を読んであったらもうちょっと起きていられたかも。
今回は旅行中。連れがもってきていた本を借りて読んだのです。私と違って、ちゃんと行先に関連した小説をもってくるところが真面目な人です。

これは「韻文小説」なのだそうで。翻訳するの、さぞかし難しかったことでしょう。結局、散文体の、普通の小説として訳されていますが、正解だったのでは。

あらすじは知っていたのですが、楽しく読めました。あとがきや裏表紙の紹介文に「バイロン的」という言葉があったけど、ある程度は意味が想像できたし。

個人的な最大のツボは「ふさぎの虫」と訳されている単語。
ロシア文学というのは当時の先進国の言葉、つまりフランス語がバリバリちりばめられていて、翻訳する人はロシア語以外の言語もわからなくてはいけないんだなご苦労様といつも思うのですが、この単語は英語です。spleen。以前読んだフランス語に関する文章の中に、「19世紀ごろからフランス語において英語からの借用語が増大する。英国かぶれの人々はbifteck(ビーフステーキ)を食べ、grog(ラム酒)を飲み、humourをとばしたり、spleenにとりつかれたりしていた」とあったのです。で、spleenがわからなくてわざわざ普段は引かない英和辞典を調べた、ということで、非常に印象的だったのです。「ふさぎの虫」は当時のヨーロッパではとてもクールで、フランスだけじゃなくて、ロシアにまで及んでいたのです。。。

プーシキンはちょいと反体制的だったそうで、あちこちに流されてるようで。この小説を書き始めたのはオデッサに流されていたとき。オデッサはウクライナだったけれど、最近ロシアになりました。反体制的と言っても「ちょいと」という程度ですが、この作品にもその傾向は見てとれます。ぶっちゃけ「金持ちは暇で死にそうなんだよ」という内容ですから。「生きていくためには働かなくてはならない」というのは、往々にして救いとなるのだろう。

この本に関する情報はこちら


オデッサのプーシキン博物館に行ったときの旅行記はこちら
すっかり忘れてたけど、連れと別れたあとに、一人で行ったのでした。
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by foggykaoru | 2014-08-17 09:01 | 普通の小説 | Trackback | Comments(2)

海へ

実は旅行に行って帰ってきたところです。
今回はとても暇な旅だったので、短かったわりに本を読めました。その中の1冊。南木佳士作。ユーズドでしか入手できません。

例によって、作者自身とおぼしき医師が主人公。
病を得た彼がリハビリの一環として海に行く。そこでのちょっとした出会い。
例によって、読ませるのです。
登場人物の一人が言っているとおり、この人の小説はわかりやすい。病気の人にとっては救いになるのだろうなと。
同行者(今回は2人旅)も「面白かった」と言ってました。




実は、サリンジャーの「ナイン・ストーリーズ」も持っていったのですが、あれは強烈な睡眠導入剤としては役立ったけれど、暇つぶしにはなりませんでした。9つのうち2つ読んだだけでギブアップ。
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by foggykaoru | 2014-08-11 22:13 | 普通の小説 | Trackback | Comments(2)

風の影

カルロス・ルイス・サフォンというスペインの作家の小説。
古書店の跡取り息子がたまたま見つけた本がきっかけで、謎めいた出来事が次々と起こる。

友人の薦めで読んだ。
もっとも、「大絶賛というわけじゃないんだけれど」という微妙な薦め方だったけれど。


読んでみて

なるほど。

スペイン人って血の気が多いなあ。
全世界で翻訳され、大人気を博したそうだけど、こういう小説は私はタイプではないので、友人と同じく、大絶賛はしません。
何かにちょっぴり似ていると思ったら、ケン・フォレットの「大聖堂」でした。あれはミステリー仕立てじゃないけど。
私は歴史ものが好きだから、どちらかというと「大聖堂」のほうが好みだけれど、まあ似たようなものです。
児玉清氏がご存命だったら、きっと絶賛なさったことでしょう。
長くて派手なストーリーの本を読みたい方には薦めます。

不謹慎な言い方かもしれないけれど、
スペインにとっては、スペイン内乱が「得意ネタ」なのだなあと思いました。
(映画「パンズ・ラビランス」もそうだった。)
ドイツにとって、ナチス・ドイツが得意ネタであるように。
日本にとっての得意ネタは何なんでしょうか。
「天皇陛下万歳」と叫んで死んでいった神風特攻隊? うーむ。私は「永遠のゼロ」は読まないだろうし、観ないだろう・・・

あと、スペイン男の一典型はマッチョなのだな、と改めてしみじみ思った。
強い男、というか、暴君。
(映画「パンズ・ラビランス」に出てくる男もそうだった)

この本(のとりあえず上巻)に関する情報はこちら
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by foggykaoru | 2014-07-31 22:00 | 普通の小説 | Trackback | Comments(2)

オリガ・モリソヴナの反語法

熱帯雨林のレビューが好評だったから読んだ。
というわけで、この本に関する情報はこちら


米原万理さんが初めて書いた長編小説、なのだそうだ。
他に長編書いてるの?という疑問はさておき、大変面白かった。
世界広しといえども、この本を書けるのは彼女だけ。大げさかな。少なくとも、日本でこういう本を書ける人は彼女以外にありえない。

解説はロシア文学者の亀山郁夫。
調べてみたら、彼と米原さんは東京外語大の同窓ですね。1歳しか違わないし、もしかしたら同級生?
だからというわけじゃないと思うけれど、絶賛してます。
「翻訳するべき」と。ロシア語に、ということですよね。
旧ソ連の負の歴史(どうもあの国は「負」のイメージばかり強いけど)を、外国人が描き切った小説、というところがすごいのだと思います。

慣れない長編ということでしょうか、最後は走りに走ってゴールテープを切ったような印象。

最近読んだ米原さんのエッセイで、「幼少時にロシア語に浸り、日本語でまとまった文章を書くようになったのはその後なので、自分の日本語は自然ではない」というようなことを読んだが、なんとなくわかる気がしました。
不自然というわけではないけれど、外国語でものを考えることに慣れた人の文章だという感じがするんです。それがマイナスに作用しているわけではなくて、むしろわかりやすい文章なのだけれど。
だから、普通の日本の小説っぽくなくて、読み応えのある外国文学」の趣あり。

長い本を読みたい人にお薦めします。

ただ、亀山氏も言ってるけど、この本、タイトルがあまりよくない。
覚えられません。
たった今、この感想文を書こうとしたんだけど、手元に本が見当たらなかったので、「オリガ 反語法」で検索して確認しなくちゃなりませんでした。私の脳細胞が死にかけてるせいなんだけど(自爆)
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by foggykaoru | 2014-03-30 09:45 | 普通の小説 | Trackback | Comments(0)

聖なる酔っぱらいの伝説

ヨーゼフ・ロートの短編集、、、とか言って、この人のことは何も知りませんでした。古本屋で見つけて、持ち運びに便利な薄さと軽さで、翻訳が池内紀だったから買ったまでのこと。
私が買った白水Uブックスは、ユーズドでしか入手できません。
岩波文庫版なら在庫あり。

解説によると、著者は現在のウクライナにある東ガリシアというところの出身で、ドイツ系ユダヤ人。流転の末、パリで亡くなったのだとか。

ウクライナと言えば、今、大騒ぎしてます。
一時はリヴィウを中心とする地域が独立するとまで言い出したそうで。

忘れもしないリヴィウ。
でもこの名前を聞いてピンとくる日本人、何人いるんでしょうか。
チェルノブイリの管理はどうなるんでしょうか。あの原発、ウクライナにあるんです・・・。

私のウクライナ旅行記、よろしかったらお読みください。こちらです。

メインサイトの宣伝はここまで(笑)

ウクライナの東部はハプスブルク家の支配下にあったのです。
その中心地だったリヴィウ。
実にオーストリアっぽい町でした。。。

ということを知らなくても楽しめる小説ですが、知っていたおかげで興が乗ったことは否めません。
特に最後の「皇帝の胸像」という作品は。

とにかく渋いです。
しみじみしたい人にはいいでしょう。

映画化されたそうで。ちょっと観てみたい気がします。
でもDVDも新品では入手できず。ユーズドもすごい値段。「知る人ぞ知る」名画なんでしょうね。
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by foggykaoru | 2014-02-26 21:05 | 普通の小説 | Trackback | Comments(2)

旅猫レポート

有川浩。

最初の20ページくらいまでは今ひとつだったのです。
「猫好きじゃないと入り込めないのかも」とか思いました。
でも、そのあとは一気でした。

まともな小説です。お勧めです。
うーん有川浩はねえ・・・『図書館戦争』にはついていけなかったし、『三匹のおっさん』はまるきりマンガだったわね、『植物図鑑』みたいなベタ甘もちょっと・・・という人も大丈夫。保証します。

万が一、ダメでも責任は取りませんが。

ただし、電車の中とか喫茶店で読むのはやめましょう。
私は半分ぐらいまで読んだところで、「これはやばいかも」と予感し、残りは自宅で読みました。正解でした。

この本に関する情報はこちら
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by foggykaoru | 2013-11-19 20:19 | 普通の小説 | Trackback | Comments(3)