カテゴリ:ルポ・ノンフィクション( 93 )

バイエルの謎

副題は「日本文化になったピアノ教則本」

私が子供だったころ、ピアノ教則本といえばバイエルだった。
それがしばらくして、「バイエルはいまいち」と言われるようになった。
本当にいまいちかどうかはわからないけれど、とにかくつまらなかったことだけは確かである。
でも、そもそもピアノ自体が大嫌いだったので、バイエルの責任かどうかすらわからない。
遥かなとても薄い記憶によると、和音が単調だったような。
ドミソ(コードで言えばC)、ドファラ(F),シレソ(G)ばかりだったんじゃないか?
バイエルって作曲者の名前だよね?と思ったことも覚えている。
でも、他にどんな曲を作ったんだろう?と思ったことも。

同じ疑問を抱いたのが、この本の著者である安田寛という人。
音大の修士を出て、大学教授になった人だそうです。
この本は、安田氏の行った探索の旅の記録です。
だから、結論をまとめて書いてしまうと面白くない。
興味がある方は、著者と一緒に旅しましょう。

この本を読んで、もう一度バイエルを弾いてみたくなりました。

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by foggykaoru | 2017-04-11 20:25 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

バウルの歌を探しに

著者の川内有緒という人。
彼女が書いた本としては、「パリでメシを食う」というのがあり、非常にそそられたけれど、未読。
そしてこの本もまた、かなり前からタイトルだけは知っていた。
でも、ずっと「パウル」と読み間違えていて、ヨーロッパ関係の話かと思いこんでいた。
ほんとうは「ハ」の上に点々。「バウル」。
ヨーロッパどころか、なんとバングラデシュの話だったのでした。

今回、古本屋で見つけて購入した決め手は、解説が高野秀行氏だったこと。
「新田次郎文学賞受賞」というのにも惹かれた。
なんだかんだ言って、賞をとった作品はそれだけのことはある、と常々思っています。

「バウル」とは、バングラデシュ(正確にはインドの一部も含む、ベンガル地方一帯)にいる、吟遊詩人のような人々のことをさす。
彼らの歌が、ユネスコの無形文化遺産になっているんだそうだ。

川内さんはパリでの国連関連の仕事に見切りをつけ、帰国し、バウルの歌を聴きに行こうと思い立つ。
でも、彼らがどこにいるかはわからない。
バングラデシュ人に聞いても、何がなんだかわからない。
雲をつかむような話なのだけれど、頼りになる相棒を見つけ、有能な現地ガイドとともに、バングラデシュをめぐる。

そして、ちゃんと見つけ出すのである。

よくよく人の縁に恵まれているというか。
あるいは、幸運を引き寄せる賢さを備えているというか。

きっとその両方なのだろう。

バウルについて、ヨーロッパでいうジプシー(今や「ロマ」と呼ぶのが正しいそうだ)のような存在なんじゃないかと想像したけれど、全然違いました。
修行をする人々なんだそうだ。
そして、その修行の奥義がスゴイ。すべての宗教を超越している。
古くからの存在だというけれど、一周廻って今や時代の最先端になっているんではないかと思わせる。

ユネスコの遺産になることによって、注目され、保護されるかというと、世の中そんなに単純ではない。
ある意味、保護されるのだけれど、変質する恐れもある。
保護されなくても変質する可能性はあるけど。

とにかく、とてもとても不思議な存在なのです。

ほんとにいったいどんな歌なんだろう?


バングラデシュの人々はとても親切なんだそうだ。
「インドなんかよりもよっぽどバックパッカー向き」だと、川内さんは言う。

ふーん。

でも、観光名所なんてないし、行って何する?


バウルを探すんだ!(爆)




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by foggykaoru | 2017-03-08 20:36 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

漂うままに島に着き

内澤旬子の本。
乳がんになり、身体の言いなりになり、気づいたら丈夫になり、東京にしがみついている必要はないじゃないか!と思いつき、小豆島に移住する、体験ルポ。

老後の生活をあれこれ考えはじめている私としては、興味津々でした。

小豆島というのは高松の目と鼻の先だったのですね。
そして、高松というのは、適度に大きくて楽しい町のようで。
高松にはネットで知り合った友達もいるし、悪くないかもね~

今住んでいるところを人に貸して田舎に移住したら、経済的には全然なんとかなるんですよね。

そして、いくら治療しても治らない上咽頭炎。
(治療は有効なんです。耳鼻科の先生の名誉のために言っておくけど)
たぶん都会に住んでいる限り、完治しないんじゃないかと思うのです。

しかし、内澤さんの場合、今までのキャリアがなんだかんだ言って、島の生活に非常に役立っています。
それは豚を育てて、つぶして食べたというキャリア。
だから狩猟の免許をとってイノシシとか、狩りして解体して食べてるんです。
家の周りの雑草を始末してくれるヤギを飼うことを、思いついてすぐにできたのは豚の飼育経験があったからこそ。
そして、そのヤギのおかげでどんどん人が話しかけてくれて、どんどん知り合いが増える。
犬の散歩で知り合いが増えるというのと同じです。

そーゆーキャリアが無い私はどうかなあ・・・

あと、虫のすごさにはちょっと引きます。

うーん、ほんとに老後どうしよう。
とりあえず、断捨離を続けよう。


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by foggykaoru | 2017-01-12 19:08 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(2)

廃道探索 山さ行がねが

著者の平沼義之は「山さ行がねが」というサイトの運営者。
でも彼の言う「山」はただの山ではない。
そもそも山が目的ではない。
目的は「廃道」---昔は道だったところ---を歩くことにある

石田ゆうすけあたりと比べると、文章が読みにくいのだけれど、内容で読ませる。

いやー、、、

今は道でないところを歩くというのは、想像を絶することなのです。
危ないよ、下手したら遭難するよ
という場面もたくさん。

高野秀行氏が、「大学の探検部では、探検とは何かということで盛んに議論し、何が何だかわからなくなった」的なことを書いていたけれど、

いやいや、、、
この日本にさえ、探検するところはまだまだたくさんある。

カンチェンジュンガを道を通らずに登るのと通じるところがあります。

うん。
私はこの本にランサム的なものを感じてしまったのでした。

文章がいまいちなのと、地図が小さくてわかりにくいということを差し引いても、80点はつけたい。
(詳しく場所を確認したい人のために、各所に二次元バーコードがついています。さすがネット由来の本だ)
旅と探検・冒険に憧れる人に特にお薦め。



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by foggykaoru | 2016-11-13 10:44 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

食べる。

「インパラの朝」の中村安希の本。
新刊を購入。こういう人には積極的に印税をあげたいのですよ。

著者が世界各地で体験した「食」にまつわるエピソード集。
「まつわる」というところがポイント。
「食にまつわる出会い」であって、「食」そのものではないので、「食」自体に期待して読むとちょっとがっかりするかもしれない。

旅人には特にお薦めなんだけど、「旅先」のエピソードとは限らないということにもご注意ください。
あくまでも「世界各地で体験したエピソード」なのです。
熱帯雨林のレビューの中に「この人は本当のバックパッカーではない」というようなコメントがあるけれど、そりゃ著者に気の毒。

森枝卓士氏が「解説」で述べているように、「まっとう」な人による、「まっとう」な本。

最初の話は飲食しながら読まないほうがいい。
私はカフェでお茶しながら読んで、非常に後悔したのでありました。
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by foggykaoru | 2016-08-04 07:01 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

ディープすぎるユーラシア縦断鉄道旅行

下川裕治著。
帯に「62歳のバックパッカー、1万8755キロを行く」とある。
ほんとにほんとにご苦労様。だから迷わず新刊で買った。

旅好き、鉄道好きにお薦めです。

ユーラシア大陸最南端のシンガポールの駅を出発。
鉄道でマレーシア→タイ→ミャンマー→中国→モンゴル→ロシアとまわる。
目的地はユーラシア大陸最北端のロシアの駅。

この本の一番の目玉は民主化なったミャンマーである。

ずっと長いこと、ミャンマーは空路でしか入れない国だった。
東南アジアを陸路で周遊するのも、「ミャンマー以外」という但し書き付きだった。
そして、「ミャンマーの鉄道はろくに整備していないので相当やばい」と聞いていた私は、大多数の旅行者と同じように、長距離バスで旅した。

だから下川さんの鉄道の旅は希少価値があるのです。
読んでみて、うなった。
すごい。「聞きしに勝る」とはこのことだろう。

それでも、中国の「硬座」の旅よりもマシらしい。
ある意味において。

個人的には、2年前に乗ったシベリア鉄道にもそそられた。
でもミャンマーと中国の鉄道の後では、ロシアの鉄道は非常に平和。先進国そのもの。


また、今回のこの鉄道の旅は、いにしえの「茶の道」なのだそうだ。
インドとか中国南部の茶葉をロシアに運ぶ「万里茶路」をなぞっているのだそうで。
なあるほど。
ロシアと言ったらコーヒーじゃなくて、ロシアンティーだもんね。
(でも、あのジャムを入れるロシアンティーはロシアには無いんだと!)

エニセイ川とか、シベリアの大河を越えるのは、暖かい季節よりも、川が凍結している冬(極寒!!)のほうが楽だったんだそうで。
ほんとにほんとにご苦労さん。
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by foggykaoru | 2016-08-01 22:42 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(2)

謎のアジア納豆

副題は「そして帰ってきた<日本納豆>」
高野秀行氏の新刊。
「ソマリランド」以来、待ち焦がれてましたよ。

今回のテーマはタイトルどおり「納豆」
納豆は日本独自のものかと思っていたけれど、もしかしたら他の国や地域でも食べられているのかも、ということで、高野氏の探索が始まる。
あちこちに行って「納豆らしきもの」を食べる。作り方を習う。

ミャンマーの奥地に行ってアヘン作りをやって、ついでにアヘン中毒になっちゃったときと、やっていうことは同じなのかもしれない
が、
食べるのは納豆。中毒になんかならない。それどころか健康的そのもの(笑)

相変わらずの高野節なんだけど、その実態は研究書という趣。

ソマリランドみたいなスリルに欠けるし、地味なんだけど、高野ファンは必読です。
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by foggykaoru | 2016-07-27 23:15 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

インパラの朝

副題は「ユーラシア・アフリカ大陸684日」
「開高健ノンフィクション賞受賞」といううたい文句に惹かれて古本屋で購入。

著者は中村安希という人。
本格的なバックパッカーの旅の記録。
でも、628日の単なる記録ではなく、精選された50のエピソード集である。
よって、きわめて濃密。どれも読みごたえがある。お薦めです。

「旅は出会い」を地で行っている。
語学(英語)がよくできるのは強みだな、としみじみ思う。
コミュニケーション力と語学力は必ずしも比例するものではないけれど、やっぱり語学力は無いよりあったほうがずっといいわけで。

著者はボランティアにもかなり関心をもっているのだが、地を這うような旅を、心身ボロボロになりながら続け、最貧国の実情を肌で知り、貧富という尺度では測れないものを感じ、困惑していく。
この世界、何が正解なのだろうか?

この人の他の本も読んでみるつもり。
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by foggykaoru | 2016-07-18 06:09 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

よみがえれ 老朽家屋

英国エッセイで知られる井形慶子が、吉祥寺に古屋を買い、リフォームした記録。
吉祥寺の古本屋で購入。古本屋に売ったのはきっと吉祥寺在住者。

井形さんはこれに先立って中古マンションを購入、リフォームした経験があり、そのこともまた本に書いているらしい。

リフォームの予算は350万円。
英国で強いれたタイルを自分で貼ったりしてるとは言え、この低額で素晴らしい出来栄え。
強い意志と明確なビジョンが成功の秘訣なんだろう。

英国のリフォーム事情にも通じている井形さんは、日本の建設業界の問題点もいろいろ見えるようで。

たとえば資材の調達や、職人不足で工事が止まったりする。
そこは行動力のある井形さん、資材調達を自分でやろうとするのだが、日本では、素人が建設資材の手配をすることができないそうだ。英国ではできるのに。
で、日本では、業者任せにするしかなくて、そこにいろいろ上乗せされる。
(このあたりの事情、もしかしたら、最近は多少変わってきているのかもしれない。ヤックンが通販で水栓を山ほど買うCMがあるし。)

近年の日本は新築よりも中古を購入してリフォームするのが流行になっているから、職人が不足している。
その職人があんまり何もわかってない。
なにしろ大手の下請けだから。自分では何も考えないみたい。

さらに井形さんは、最近の吉祥寺が変わりつつあることに、憂慮も抱いているようで。
ずっと吉祥寺ウォッチしてきた私も同じことを感じる。
なんとなく、「吉祥寺ならでは」という感じが薄れてきているような。
でも、やっぱりいい町だと思う。
この前、初めて中野駅周辺をうろついたんです。余りにもぱっとしてなくて驚いた。中野は新宿に近すぎるということなんでしょうね。
おかげで、吉祥寺がいかにすごい町なのかがよくわかりました。
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by foggykaoru | 2016-07-08 20:14 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

オリンピア ナチスの森で

沢木耕太郎著。図書館で借りた。
映画「帰ってきたヒトラー」を観る前に読み始め、観てから読み終わった。
この本が映画を観るきっかけだったのかもしれない(よく覚えてないけど)

ベルリンオリンピックの記録映画の監督であるレニ・リーフェンシュタールのインタビューに始まる。
彼女の話がメインかと思っていたら、そのインタビューは冒頭と最後のみだったので、若干期待外れ。
もっとも、外国の人の人生をたどるには、その言語に通じていないと無理なんだろうな。

中心はオリンピックに参加した日本人選手たちの物語である。
これはこれで興味深い。

走るのが得意だった若者が、周囲に勧められて上級の学校に進む。
それが京都大学だったり早稲田だったり、いわゆる名門。

その昔観た「炎のランナー」を思い出した。
あれはイギリスの選手の話だけれど、やっぱり名門大学の学生。
まだ国家をあげての選手育成態勢はできていなかったけれど、「学校」の存在が大きい。
新興国の日本が欧米に伍して陸上や水泳で活躍できたのは、たぶん学校教育制度がすみやかに整ったということが大きいのでは。

体操の選手など、自分が参加する競技がどういうものなのか、観たことがなくて、わからないまま参加したのだそうだ。
今だったら考えられない。

世界は広かったんだなあ。
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by foggykaoru | 2016-07-06 20:45 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)