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ジズベルト著「アドリア海の奇跡」(徳間書店)

c0025724_15572037.jpgスペインの児童文学作品。著者のフルネームはジョアン・マヌエル・ジズベルト。カタロニアの人です。

物語は15世紀末、クロアチアのウプラというところにある、ベネディクト会の修道院から始まります。
クロアチアに行きたいと思い始めて(たぶん)早5年、しかも西洋史好きで、宗教もネタとして楽しんでいる(←真剣に宗教に向き合っている方、ごめんなさい)私が、迷わず手に取ったのは言うまでもありません。
ちなみに、「ネタとしての宗教」の師匠である友人に、この本を見せたら、彼女はとうの昔にチェック済みでした。さすが我が師匠 (^^;

薄くてとても読みやすいです。主人公マティアスは謎めいていて、興味をそそります。ただ、後半のクライマックスの仕掛けがちょっと安易な感じ。また、せっかく面白い舞台設定なのだから、それに関するディテールをもっと書き込んで欲しかった。けれど、それには入念な時代考証が必要。この著者はたぶん、そういうことをするタイプではないのでしょう。

最大の収穫は、まだ見ぬクロアチアの風土に思いを馳せることができたことでしょうか。
読後、地図帳を開いてみたのですが、ウプラは見つかりませんでした。
さらに、この作品に登場するもう1つの修道院、「海辺の大修道院」とは何ぞや?と思って検索したら、こんなページに出くわしました。ここに書いてある修道院、時代的にぴったりなので、かなり有望です。この作品に描かれているような地形の場所が、この近くに実在するのでしょうか?



余談ですが…

クロアチア情報が載っていたサイトの管理人さんは、なんと指輪ファンでした。
びっくりして掲示板を覗いたら、旅つながりで知っている人ばかりだったので、またまたびっくり!
言うなれば、私たちは同じアパートの同じ階の同じ並びに住んでいたようなものだったのです。
それだけではありません。この管理人さんは、もう1つ、こんなサイトもお持ちなのです。ハウルファン必見!!!

こんなことってあるんですね~♪
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by foggykaoru | 2005-02-27 16:04 | 児童書関連 | Trackback | Comments(0)

パイロット

「文具のパイロット社の社名の由来」を読みました。
「パイロット」は飛行機の操縦士ではなくて、船の機関長だった。ここまでは誰にでもわかりやすいと思いますが…
「業界の“水先案内人”たらんとする意気込み」もこめられている…
私はこれを読んで「おおお!」と思ったけれど、普通の人にぴんとくるんでしょうか。

pilotに「水先案内人」の意味があることを知っている人ってそんなに多くないのでは。

♪よいどれ水夫をどうしよう
♪よいどれパイロットどうしよう
     アーサー・ランサム作「海へ出るつもりじゃなかった」より
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by foggykaoru | 2005-02-26 11:00 | バベルの塔 | Trackback | Comments(6)

あさのあつこ著「バッテリー」(角川文庫)

面白いと評判なので読んでみた。
読んでみて、良い意味で、予想を裏切られた。

裏表紙に「これは本当に児童書なのか!?」と書いてあるが、まさにそのとおり。私の場合、もしもこれを12、3歳の頃に読んでいたとしたら、絶対に好きになれなかっただろう。(これは全くあり得ない仮定。なぜなら、この作品が発表されたとき、私はすでにオバサンになっていたから。) 小中学生の頃の私は、あまりにも子ども過ぎて、こういう主人公を受け入れられなかっただろうと思うのだ。

主人公・巧は「出る杭は打たれる」日本の土壌には、めったに登場しないタイプのヒーローである。しかもまだ12歳。日本人すべてが年々幼稚になりつつある昨今、こんな大人っぽい12歳の男の子がいるのだろうか。男の子というのは、一般に女の子よりもオクテなものだ。「青っぽくて角があるところにこそ、子どもっぽさが現れているのだ」という意見もあろうが、いやいや、この青っぽさは15歳以上のものではないだろうか。親に対する態度などは、反抗期のそれにひどく似ている。おそろしく早熟な12歳である。

早熟なのは、主人公だけではない。巧の弟・青波と、友人・豪もまた「こんな子どもはいないよ」と言いたくもなるほど大人で、「できた奴」なのだ。

リアルさを優先するなら、少年たち全員を3歳上に設定するべきだったのかもしれない。にも関わらず、この年齢に設定したのは、この後の、彼らと野球との関わりを、じっくり描きたかったからなのだろう。それに、この年齢設定が、作品を楽しむことの妨げになるわけではない。少年の心のひだが、これだけ丹念に描かれているということ自体が驚異的だし、巧・豪・青波のバランスが絶妙だからである。

周囲の大人たちもまたいい。子どもの目から見た大人のありのままの姿が、感傷に流れずに淡々と描かれている。

ぜひ続編も読みたい。
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by foggykaoru | 2005-02-24 20:27 | 児童書関連 | Trackback | Comments(0)

Esquire(エクスクァイア) 3月号「聖人を巡るイタリア。」

c0025724_20205143.jpg最後の「。」に、編集者の意味不明なこだわりが感じられます(笑)

今まで男性雑誌なんて縁がなかったのですが、この特集を見たら買うっきゃないと思いました。
全体200ページほどのうち、半分以上が特集記事で、しかもその内容がすごい。

聖人の名前というのは、各言語によって違います。
たとえばペトロはイタリア語でピエトロ、フランス語でピエール、英語でピーター。パウロはイタリア語でパオロ(パウロでも十分通じるけれど)、英仏語ではポール。
いつだったか、英国海軍専門サイトで、「ネルソン提督はロンドンの聖パウロ大聖堂に葬られた」という記述を見て、「をいをい!そりゃセント・ポール寺院でしょう!」と、思ったことがあります。よっぽどサイトの管理人さんにメールしようかと思った…。
この特集には、そういった基本事項からきちんと書いてあるので、キリスト教のことをあまり知らないけれど、この際勉強したいという気持ちがある人にも向いています。そしてさらに、非常に高いレベルのことまで書いてある。…高いというか、深いというか、、、マニアックというか。。。

イタリア好きにお薦めです。美しい写真がたくさん載っているので、イタリア初心者も楽しめるでしょうけれど、ローマ・フィレンツェ・ヴェネツィアのメジャーなスポットを既に知っている人のほうが深く感動するはず。教会芸術が好きな人は感涙にむせぶことでしょう。

こういう特集は、外国雑誌の日本語版ならではなのでは。日本の普通の出版社ではできないと思うのです。そもそもカトリックに関する知識がある編集者がいない。もしもいたところで、企画が通らないでしょう。だって売れないもの。
この特集を目当てに買う日本人なんて、ほとんどいないのではないかしら。買うのは「エスクァイア」を定期購読している人だけかも。定期購読者のうち、この特集に興味を持つ人なんているのかなあ。と思うとなんだか気の毒になってきます。って誰が気の毒なんだかよくわからないけど。

私はローマのめぼしいスポットは、ほとんど見尽くしたと思っていました。でも、この特集を見て、まだまだだということを思い知りました。次回のイタリア行きの際は、これを入念にチェックしていこうと思います。持っていくつもりはありません。重いから(笑)
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by foggykaoru | 2005-02-21 20:22 | その他のジャンルの本 | Trackback(1) | Comments(16)

ポルトガルの書店にて

昨年末にポルトガルに行ったときの写真です。
c0025724_2114173.jpg

左から
ゲド戦記の「さいはての島へ」
ライラの冒険シリーズの「琥珀の望遠鏡」
ナルニア国ものがたりの「カスピアン王子のつのぶえ」

場所はポルトの小さな書店。
児童文学に関しては、その後に行ったリスボンの大型書店と遜色無い品揃えでした。
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by foggykaoru | 2005-02-18 21:04 | 児童書関連 | Trackback | Comments(9)

"B"と"V"(その2)

前項の続きです。

イタリア語では"B"と"V"は、英語と同じように区別されます。このことを念頭に置いた上で、お読みください。

イタリア語には"dovere"(=…しなければならない)という動詞があります。その活用は以下のとおり。参考までに、( )内に発音をカタカナ表記しておきます。

1人称単数 devo(デーヴォ)  
2人称単数 devi(デーヴィ)
3人称単数 deve(デーヴェ)
1人称複数 dobbiamo(ドッビアーモ)
2人称複数 dovete(ドヴェーテ)
3人称複数 devono(デーヴォノ)

びっくりしませんか?
私はこれを知ったとき、仰天しました。
いくら不規則動詞だとは言え、原形が"dovere"で、1人称複数が
"dobbiamo"だなんて。
(同様のことは、"avere"(=持つ)という動詞でも起こります。1人称複数が"abbiamo"になるのです。)
イタリア人の先祖にとっても、"B"と"V"は区別しにい音だったという証拠だと思います。

このへんのこと、現代のイタリア人はどう思っているんでしょうね。
「不規則動詞だから、たまたまそういう活用なのだ」と思っているだけなのかなぁ…。

今日の結論: "B"と"V"は、誰にとっても紛らわしい。

だから、日本人が外国語を喋るときに間違えても、当たり前なのです。
もちろん、区別できるに越したことはありませんけれどね。
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by foggykaoru | 2005-02-17 20:42 | バベルの塔 | Trackback | Comments(2)

"B"と"V"(その1)

"V"は上の前歯で下唇を軽~く噛み、摩擦させて出す音。日本人が苦手とする音の1つです。
でも、外国語では"B"と"V"は別の音なんだから、ちゃんと区別して発音できないと国際人として恥ずかしい…のでしょうか?
いえいえ、"B"と"V"を区別しない言語は日本語以外にもあるのです。

それはスペイン語。
スペイン北西部の海沿いに、Vigoという町があります。これは「ヴィーゴ」ではなくて「ビーゴ」。スペイン語では"V"と書いても、発音は"B"と同じだから。

"B"と"V"が区別しにくいことは、歴史的にも明らかです。

ラテン語では「本」は"liber"です。

イタリア語は、ラテン語の娘と言われるだけあって、「本」は"libro"。「本屋」は"libraio"です。東京には「リブロ」という本屋はあっても、「リブライオ」は無い(たぶん)

ラテン語の姪ぐらい?の立場にあるフランス語では、「本」は"livre"になります。
フランス人の先祖であるフランク人たちは、ラテン語を聞き間違えて覚えたわけ。
それなのに、「本屋」が"librairie"なので、フランス語を勉強する人は、非常に頭にきます。私も頭にきました(苦笑)
この"librairie"が英語に入って、"library"になったわけです。

(こういう話をする場合、ほんとうは、ヨーロッパ言語の実例だけでは不十分なのですが、知識が無くてできません。(涙))

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

余談ですが、一昔前のイギリスのエリート学生は、
Hic liber est meus   この本は私のもの
Testis est deus    証人は神様
Si quis furetur    だれかが盗めば
Per collum pendetur  首をつられる

というラテン語の言葉を、辞書の見開きに書いたのだとか。
オッシャレ~♪と思った私は、ひところ、手持ちの辞書のすべてにこれを書きまくったものです(^^;
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by foggykaoru | 2005-02-15 22:10 | バベルの塔 | Trackback | Comments(2)

アレクサンドラ・リプリー著「スカーレット」(新潮社)

たまには本の話題を出さないと(苦笑)

「あのスカーレットとレットがついに帰ってきた!」と話題になって既に久しい。森瑤子氏が翻訳したということも、当時はかなりの話題になったものだが、マーガレット・ミッチェルの「風と共に去りぬ」とは違って、今やすっかり忘れ去られてしまった。まあ、これは当初からある程度、予想できたことかもしれないけれど。それでも、スカーレットの「明日は明日の風が吹く」という台詞に感涙したことのある人にとって、楽しめる作品ではある。

だが、ここでこの作品をとりあげることにしたのは、小説として優れているということからではないのである。

恋愛小説としては、この程度のレベルのものは、たぶん他にもごまんとあるのではないかと思う。それよりも私にとって、この作品の価値は、アイルランド史を教えてくれたことにあった。そこにスカーレットとレットの恋路がからんでくるのだから、これはかなりオトク感があるというものだ。

オハラ家はアイルランド系移民。その農場「タラ」の名前の由来は、ダブリンにほど近い、非常に有名な地名であり、観光名所になっている。著者リプリーが目をつけたのはその点だった。執筆前、彼女はアイルランド各地に取材旅行をしたに違いない。アイルランドに行ってみて、私はその感を強くした。肝心のタラには行けなかったんだけど(涙)

というわけで、「風と共に…」が好きで、アイルランド旅行の前に手っ取り早く、しかも楽しく歴史を勉強したい人にお薦め。ただし、恐ろしく厚いです。けれど、「風と共に…」が読めた人なら大丈夫。(もちろん)どちらかというと女性向け。
「愛蘭土紀行」と併せて読めば、鬼に金棒!?
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by foggykaoru | 2005-02-13 09:48 | 過去に読んだお薦め本 | Trackback | Comments(8)

小説のアニメ化について

友人と「ハウルの動く城」を観てきました。
この映画は最後のほうになるとわけがわからなくなる、と聞いていたのですが、原作を読んである私たち2人には十分理解可能なもので、納得の結末でした。
でも、「映画だけを観てわからないのだったら、映画作品としては失格」と言われても仕方がないのかも。
噂どおりハウルは思い切りかっこよかったし、噂どおり声優キムタクは素晴らしかった。
そして、倍賞智恵子のどこがよくないのか、私たちにはわかりませんでした。
ソフィーの実家の赤い壁、私にはツボでした。ああ、そうそう、これなのよ、ヨーロッパの路地裏にはああいう壁の家があるのよ。きれいに塗り込められていなくて、濃淡があるところが最高!

そして、十分予想はしていたけれど、ここまで原作を変えるのか!とびっくりしました。

以下、ネタバレです。なぜか最後はランサムの話まで出ますが、真面目なランサマイトはお読みになりませんように。

ネタバレはこちら
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by foggykaoru | 2005-02-11 18:20 | 児童書関連 | Trackback(1) | Comments(4)

ベルヴィル・ランデブー(2)

ベルヴィル・ランデブー(1)の続きです。

「指輪物語」に登場する"Sackville-Baggins"は、瀬田貞二氏の訳では「サックル=バギンズ」。あれも「サックヴィル=バギンズ」のほうがいいのかな?と思ったあなたはかなりの幽鬼です(笑)

一昔前までは、多くの日本人にとって、「ヴ」という音はなじみがなく、ちょっと前までは"Beethoven"は「ベートーン」でした。
最近は、英語の影響で"v"の音を発音できる人が多くなってきたためか、「ベートーヴェン」になりつつあります。

さて、言語学の立場では、これをどう考えるのでしょうか。

答えを読みたい方はこちら
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by foggykaoru | 2005-02-10 19:38 | バベルの塔 | Trackback | Comments(4)