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アンリ・トロワイヤ著「サトラップの息子」

かなり昔、トロワイヤ著の「女帝エカテリーナ」「大帝ピョートル」を立て続けに読んだことがある。(「アレクサンドル一世」も読んだかもしれないがよく覚えていない。)

そのトロワイヤが普通の小説を書く作家だったということに、まず驚いた。
それどころか、若くしてゴンクール賞(日本で言えば芥川賞みたいなもの?)を受賞し、40代の若さでアカデミー・フランセーズの会員になったという、正統派バリバリの文学者だったのである。

ロシアの裕福な家庭に生まれ、ソ連邦の誕生とともに、家族をあげて命からがらフランスに亡命し、帰化したという彼自身がこの小説の主人公。非常に私小説っぽい雰囲気の作品だが、訳者のあとがきによれば、彼とその家族以外はおそらく創作であろうとのこと。

地味な小説なので、読んでいるときはそれほど気に入ったという自覚はなかったのだが、妙にあとをひく。私は子どもの頃、気に入った作品は読み終わったとたんにまた読み直す、という癖があったのだが、久しぶりにそういうことをさせてくれた作品。

トロワイヤ、あなどれんぞ。
さすがアカデミー・フランセーズ(笑)

ソ連の社会主義革命は、トロワイヤのような才能を駆逐したのだ。文学に限らず、いろいろな方面の才能を。たぶん今もなお、その損失は埋め合わされていないんじゃないだろうか。モスクワ空港のトランジットの混乱ぶりは、気の利いた人が足りない証拠(爆)

祖国を捨てることによって人は心に傷を追う。その傷はたとえ新しい国に順応できたとしても、決して癒えることはないのだろう。ふと、「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」を思い出した。

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草思社刊です。
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by foggykaoru | 2008-02-25 21:28 | 普通の小説 | Trackback | Comments(2)

遙かなるケンブリッジ---一数学者のイギリス

「国家の品格」で話題になった藤原正彦氏の本。
氏がケンブリッジで過ごした1年間の体験に関するエッセイであること、そして、息子さんがひどいいじめにあったということは知っていた。だいたい想像がつくから焦って読まなくてもいいやと思っていたのだが、古本屋で何回か出くわしたので、そろそろ読んでみるか、と手にとった。(「国家の品格」もまだ読んでません。読めばたぶん共鳴するだろうと思うけど。)

で、予想どおり、なかなか楽しめる本でした。改めて感じたのは、氏の文章のうまさ。
ケンブリッジの十月は、学生のざわめきと共に訪れた。夏の観光客の、明るい服装、ゆっくりした歩調とせわしない視線に代わり、黒い色調の、正面を見詰め足早に歩く学生達が、忽然と、大挙してこの町に現れた。口を閉ざしたまま歩む彼等を包むざわめきは、観光客の喧噪とは異質の、若きエリート達の放つ気の蠢動であった。静粛なるざわめきだった。中世の残映を濃く留める町並みに、若さが充満した。

イギリスの風景を初めて目にしたときの描写にも注目。
機上から見た通り、イギリスは緑だった。どちらを見ても、畑や緑の草原が、なだらかな起伏をなして限りなく広がっている。山は唯の1つもない。白い羊の群が見える。農家であろうか、時々石造りの家が、一面の緑の中に、小島のように浮かんでいる。美しい。田園の美しい国はどこか品格がある。

うんうん、イギリスってそうだよね、と思うとともに、この頃から「品格」がキーワードだったんだな、と、にやり。

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ところで、ケンブリッジと並ぶ英国の名門大学オックスフォードでの生活に関するエッセイとしてはこの本が出色。後半ちょっとだれるけど。
あと、皇太子殿下の「テムズとともに」も。こちらはとても読みやすい。
「遙かなるケンブリッジ」と合わせて3冊読むと、オックスブリッジのすべてがわかる・・・ってのは言い過ぎですが、それぞれの著者の立場が三者三様であるだけに、どれも一読の価値があると思います。


(イギリスじゃないけど)藤原氏のこの本もおすすめ。
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by foggykaoru | 2008-02-24 11:08 | エッセイ | Trackback | Comments(8)

カサビアンカ

1960年代のフランスの可愛い子ちゃん歌手にヴィッキーという人がいます。
「恋はみずいろ」とか「悲しき天使」を歌った人。後者はビートルズが作ったアップルレコード所属のメアリー・ホプキンによる英語版のほうが知られているかも。

訳あって往年のフレンチポップスのCDをチェックしているのですが、ヴィッキーのCDに収録されている曲名のひとつに目が釘付けになりました。

「Casa bianca」

思わず歌詞カードを確認したら・・・

There is a white house in a town

という出だし。
なあんだ、「白い家」の歌なのね。
と、がっかり。



「燃えさかる船」とかいう歌詞のはずはないと、最初から思っていたんですけどね。
でも、ほんのちょっとだけ、期待したのでした。


★英詩「カサビアンカ」に関する妄想的考察はこちら
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by foggykaoru | 2008-02-19 21:21 | 児童書関連 | Trackback | Comments(0)

鹿島茂「パリ五段活用」

この本、途中まで読んであったのだが、中断してしまっていた。今回再び手にとってみて、中断した理由を思い出した。難しいのである。

イギリスの海辺のリゾートには決定的なものが欠けていた。それは、海辺のリゾートの誕生に伴う「美意識の変容」である。

ううむ。よくわからんぞ。イギリスの海辺のリゾートはオシャレ度が低かったということなのか?
「商品を買う」という行為は、現代という社会にあっては、思っているほど単純なものではなく、そこには多分にイマジネールな要素が入り込んでいるのだ。

こちらのほうは、日本女性が(日本でも買えるものを)わざわざパリのブランド本店まででかけていって買い物をするという例が挙げられているので、まあなんとかわかる。しかし「イマジネール」の明確な意味はようわかりませぬ。

というわけで、この本は単なるパリ好き・フランス好きには敷居が高い。フランス文学畑向きかも。同じ中公文庫から出ている鹿島氏の「パリ時間旅行」のほうが一般向き。

印象的で記憶に残っているのは2つ。

まずは「プヌーマティック」というもの。
フランスは電話以前にプヌーマティックが発達していたので、電話網が整備されるのが遅かったのだそうだ。
そういえば、フランスはインターネット化が遅かったっけ。それというのも、「ミニテル」というコンピューターを利用した通信・検索手段が発展していたため。(私は1980年代にフランス人の友人宅でこのミニテルを目にして、驚嘆したものだった。)
それにしてもプヌーマティックってどういう原理のものなんだろ?

そしてFIFAとワールドカップのこと。
正式名称がFederation Internationale de Football Association、つまりフランス語であることから、フランス主導の組織であることはなんとなく知っていた。
この組織を作ったとき、サッカー発祥の国イギリスにももちろん参加を持ちかけた。イギリスは「ふんっ!」と馬鹿にして、一応は参加したけどあんまり本気で関わらなかった。けれどもFIFAは頑張って、規約に「サッカーの世界大会を開催できるのはFIFAだけ」と決めた。そうこうしているうちにワールドカップを開催しようということになり、ウルグアイが開催国として手を挙げた。船旅しかあり得なかった当時、ウルグアイまで選手団を派遣することさえ大変だったが、とにかく開催。このときの笛は、ハンドボールのクウェートも真っ青の不公平なもので、ウルグアイがフランスに追いつかれそうになったら、まだ80分しかたっていないのに試合を終了させてしまったんだとか。
そんな大会であっても、経済的には大成功して、その後のFIFAとワールドカップの隆盛はご存知のとおり。
最初に偉ぶっていたイギリス、損したわけです。


歴史関係の本を読むと、「ウサギとカメ」だなあとよく思います。
先行していてもそれは一時のこと。
諸行無常。盛者必衰。おごれるものは久しからず。


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by foggykaoru | 2008-02-10 10:44 | 西洋史関連 | Trackback | Comments(0)

キャンプの移動

と言えば「ツバメの谷」。
日本のツバメの谷こと、Swallowdale Antiquesが移転します。ということで、売り尽くし(とは銘打ってないけど)セールが開催されています。
なんと通常の20~50パーセントオフだとか。
英国アンティークに興味のおありの方はぜひ!

Swallowdale Antiquesの公式サイトはこちら
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by foggykaoru | 2008-02-04 21:16 | 告知 | Trackback | Comments(0)