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「ヴィクトリア女王--大英帝国の"戦う女王"」

ヴィクトリア女王については「夫アルバート公と仲が良くて子どもをたくさん産んだ」ということしか知らなかった(苦笑)

エリザベス1世あたりの、のるかそるかという人生とは違って、のほほんとしている。市民革命を経て、「君臨すれども統治せず」になった後の王家なのだから、当たり前なのだが。

だから読み物としては、革命以前の、王が実権を持っていた時代の本のほうが断然面白い。

けれどこの本、思ったよりは面白かった。
ヴィクトリアはただ子どもを産んでいただけではなかったということがよくわかったから。けっこういろいろ口を出していたのだ。

ヴィクトリア朝と言えば、英国が「日の沈まぬ帝国」として絶頂を迎えた時代。
なんとなく「左うちわ」で我が世の春を謳歌していたのだろうと思い込んでいたが、この本を読んで、認識が改まった。
なまじっか世界中に領土を持ってしまっただけに、それを維持していくために非常な苦労をしていたのだ。新たなことを始めるよりも、それをずっと維持し続けるほうが難しい。ウェブサイト運営も同じである(自爆)
でも、帝国の女王たるもの、それを投げ出すなんてことはできない。良いも悪いもない。要するに、女王としてのプライドが許さないのだ。
歩調が合わなかったという首相グラッドストストンには、そんなプライドは無いし、より現実を見据えることができたということなのだろう。

それにしても、ヨーロッパの国々の王室というのは縁戚関係でつながっているとはきいていたけれど、これほどまでとは。
ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世はヴィクトリアの孫。彼が第一次世界大戦を引き起こしたのは、親戚の中で格下なのが悔しかったということもあったのではないか。
ロシア最後の皇帝ニコライ2世はヴィクトリアの孫の夫。
ということは、彼らはヴィクトリアの孫であるジョージ5世の従弟。

こういうことはヨーロッパでは昔からざらにあったのだろうけれど、昔は交通機関や通信が未発達だったから、外国にいる親戚の動静はわかりにかっただろう。交流も少なかったはず。それに、王侯貴族の結婚というのは愛情もへったくれもなく、政略結婚の度合いが非常に高かっただろうから、身内とは言え、かなりドライだったはず。「親戚の○○ちゃんは元気かしら」的な感覚はあまりなかったのではないかと思う。
ヴィクトリアの時代にはそういう感覚になりつつあったかも。つまり、縁戚関係のあるひとにぎりの人々、それも、「身内意識」を持った人々が、ヨーロッパにおいて、かなりの実権を握っていたのである。そして、この時代、世界を席巻していたのはヨーロッパだった。これはすごいことである。

今は普通のOLだった人が王妃になっている国がけっこうあるから、「ヨーロッパの王室中が親戚」という感じは薄まっているかも? よくわからないけど。
まっ、今の国王たちには実権が無いから、どうでもいいのだ。

この本に関する情報はこちら

ヴィクトリア関連をいろいろ検索していたら、Wikiの「ヨーロッパの祖母」という項目を発見。
興味のある方はこちら



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by foggykaoru | 2008-05-31 20:33 | 西洋史関連 | Trackback | Comments(3)

あの人はいずこ

本ネタでも映画ネタでもないのですが、あえて言えば語学関連ネタということで。

ここのところ、野暮用がらみでフレンチポップスのCDを聴かなくちゃならなくて。
野暮用とはいえ、半分は趣味なのですが。

私にとっての青春歌謡(←古っ!)はミッシェル・ポルナレフでした。
「シェリーにくちづけ」がどういう内容なのか、フランス語を勉強してわかるようになりたいと思っていたあの頃(遠い目)
♪Tout, tout, pour ma cherie, ma cherie
 (=すべて すべて 君のために)
大学に入ってすぐの学科のコンパで、ポルナレフの「渚の思い出」を歌った男の子がいたものです。
♪Je te donnerais tous les bateaux, tous les oiseaux, tous les soleils
 (きみにあげよう すべての船を すべての鳥を すべての太陽を)
なんにもフランス語がわからない高校生のうちから、一生懸命レコードを聴いて覚えた彼は今、フランス系超有名ブランド関連の会社で働いているという噂です。
ダニエル・ビダルの「天使のらくがき」を歌った女の子もいました。彼女は今、大学の先生。知り会ったときには、すでに完璧な発音を身につけていました。
モチベーションの力って偉大です。

で、ポルナレフは今も健在です。年末に南仏に行ったときも大型書店でしっかり確認してきたのですが、最近のライブのDVDも出ています。店頭で音無しの映像をちらっと観たけれど、かなりイタい感じで、歌声を聴く勇気は出ませんんでした。だって、昔のあの美声はもう出ないと思うのですよ。高音は年をとると出なくなるものです。「大都会」のクリスタル・キング、今や見る影ないですからね。
ダニエル・ビダルは、今もときどきテレビのバラエティー番組に出て、コメンテイターみたいなことをしているらしい。奈美悦子みたいな感じ?!
ポルナレフもビダルも、アマゾンで検索すると、日本でもまだCDは入手可能。可能どころかたくさんあります。
「天使のらくがき」を購入して歌詞を見たら、「ウクライナのなんたらこうたら」なんて書いてあるのでびっくり。なにゆえにウクライナ?
サビはこんな感じ。
♪Aime ceux qui t'aiment
 (=あなたを愛してくれる人達を愛しなさい)

上記二人ですら「なんのこっちゃ?」な方が多いでしょうが、「青春に乾杯」という歌だけで知られていた一発屋ミッシェル・デルペッシュまでご存知の方はまずいらっしゃらないことでしょう。この歌、最近、CMで使われていたけれど。
彼は正確には二発屋。「ワイト・イズ・ワイト」という英語混じりの歌もけっこうヒットしたから。
彼の単独のCDは存在しないけれど、「往年のフレンチ・ポップス名曲集」みたいなCDには、これら2曲が収録されていることがあるようで。
「青春に乾杯」はメロディーと邦題がやたら爽やかなのだけれど、実際は
♪Pour un flirt avec toi je ferais n'importe quoi
 (君との戯れの恋のためだったらぼくは何でもする)
上の訳↑は忠実だけど、ニュアンス的には正しくない。
要するに、「ヘ~イ、そこのカノジョ~、ボクと遊ばな~い?」という、超軽佻浮薄な歌。
(デルペッシュのこの2曲についてはここに解説と、もっと完璧な日本語訳があります。)


他にどんな歌手がいたっけ・・・?

私が調べているのはあくまでもフレンチ・ポップス。
エディット・ピアフとか、ジルベール・ベコーとかイブ・モンタンとかジュリエット・グレコなどといった、シャンソンの世界までさかのぼる気はないのだけれど、検索してみると、そのあたりのCDは山ほどあるのですね。

あっ、、、、ミレイユ・マチューがいた!
「ピアフの再来」と言われていた彼女。
私は彼女のことをひそかに「フランスの都はるみ」だと思っていました。
彼女の歌はシャンソンだけど、片足、、、のつま先ぐらいはフレンチ・ポップスに突っ込んでいる。
演歌とはいえ、ド演歌ではなくて、「北の国から」ぐらいの感じで、ちょっと新味がある。「砂の城」という歌はけっこう好きだったわ。

検索してみたら、、、彼女のCD、ほとんど存在しないのです。

どうしてなの?!


つくづくミュージシャンの浮き沈みというのは読めないものだと思いました。
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by foggykaoru | 2008-05-28 21:35 | Trackback | Comments(10)

「ファーブル巡礼」

著者は津田正夫という人。故人である。
この本は絶版状態だったのだが、惜しまれて、新たに新潮選書として刊行されたらしい。

昆虫学のプロでもなんでもない氏が、ファーブルに心惹かれ、ファーブルの著書の記述をもとに、ゆかりの地を訪ねた記録。1970年代のことである。
1つ1つ探し出していくその経緯が楽しい。これこそがほんとうの旅なのだ。たとえて言うなら100パーセントの生ジュース。ガイドブックどおりに動く旅はせいぜい果汁20パーセントだ。

考えてみたら、私が英国湖水地方を初めて訪れたのも70年代。当時はランサム関連スポットのガイドブックなんて存在していなかった。物語の舞台に近いのはウィンダミアよりもむしろコニストンだということすら知らなくて、漫然とウィンダミアのフェリーに乗って、北極の町に行っただけだった。(それでも十分に幸せだったのだが。) 

津田氏の巡礼がこんなに成功したのに、私が何もできなかったのはなぜ?

氏はもと外交官。巡礼は余生の道楽だった。現役時代に築いたその人脈をもってすれば、ファーブル関係者に連絡を取ることができたし、南仏中をタクシーで走り回る財力もあった。
一方、私はまだ大学生。なんにもできなくて当たり前(涙)

私は虫とか博物学には詳しくない・・・というか、きわめて疎い。だから昨年末にプロバンスに行ったときも、ファーブルゆかりの地なんか見向きもしなかったが、今や土地勘があるわけで、「ああ、ファーブルが住んでいたのはあのあたりなのか」といちいち思い当たるというのはなかなかオツなものだった。普通は「読んでから行く」ものだが、「行ってから読む」もアリなんだな。

次回(いつだかわからないけれど)は、ファーブル博物館に行ってみようか。


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メインサイトの「旅日記」に「冬の南仏プロバンス」アップしてます。いよいよアヴィニヨンです。



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by foggykaoru | 2008-05-25 09:05 | 伝記・評伝 | Trackback | Comments(2)

「八十日間世界一周」再読

言わずと知れたジュール・ヴェルヌの作品。

再読と銘打ったけれど、ほとんど覚えてません。小学生の頃、抄訳で読んだだけ。映画(←観てません)のテーマのだけは「兼高かおる世界の旅」(←知ってる人はイイ年です)で使われていたから、おなじみだったけど。

今は飛行機を使ったら世界一周なんて1日でできてしまう。
でも、ほんとうの意味で世界を一周するには、空を飛んでしまってはいけないと思うのです。空を飛ぶのをアリにしたら、地球の周りをくるくる回ってる人工衛星もアリになってしまうから。
やっぱり地球にくっついて一周しなくちゃ。

もしも今、陸路と航路だけで世界を一周しようとしたら、どのぐらいの日数がかかるのでしょう?
1ヶ月ぐらいかな?
世界は思ったほど小さくなってないのかも。


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ネタバレです。
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by foggykaoru | 2008-05-22 21:17 | 普通の小説 | Trackback | Comments(18)

「クマのプーさん」再読

「子どもの頃に読んでいた本を今読むとどう感じるか」ということに興味があって読みました。

ほほー。
と感心しました。

それにしても、これって大人のための本かも。
っていうか、目線が完全に大人の目線。
ミルンは我が子がぬいぐるみと遊んでいる様子を見て、それをネタにして本を書いたんですね。

白状いたしますと、子どもの頃の私は、そのあたりのことをよくわかっていなかったのです。プーたちがほんとうの動物なのか人形なのかということを。
いや、わかってなかったと言うと嘘になります。
あれを生身の動物とは決して思っていなかったのだから。
でも、明確に理解していたというわけではない。
それでも、そこそこ楽しく読んでいた。それが子どもというものなのです。

長じてからのクリストファー・ロビンは「プー」のことに触れられるのをひどく嫌ったと聞きますが、その気持ちはわかります。
だって、ネタにされたんですから。しかもそのやり方が露骨だし。

1つ1つの物語の間に、クリストファー・ロビンと父親の会話が差し挟まれていますが、ほんとうに子どものための本だったら、この部分は無いほうがいいかもしれない。これはよくわからないものを楽しめない大人の読者のための解説文なのだから。

でも、ネタをふくらませたミルンの力量はすごい。
登場人物(「人」ではないけれど)の持ち味が絶妙です。
特にイーヨー。子どもの頃、(好きとは言えなかったけれど)非常に気になる存在でした。

今さらですが、石井桃子さんの訳もいいですね。
読み書きのあやしいコブタの手紙に書かれた「コプタ」の「プ」
これを読んだ(これまた読み書きのあやしい)プーが「この丸いところはプーのことなんだ、つまりぼくのことなんだ」と思うわけですが、これって「コブタ=Piglet」と「プー=Pooh」の「P」の丸いところなんだ!とわかったのが、今回ちょっと嬉しかったのでした(^^;


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by foggykaoru | 2008-05-15 21:57 | 児童書関連 | Trackback | Comments(10)

「川べのちいさなモグラ紳士」

久しぶりにフィリパ・ピアスを読んでみようという気になって。
題名を見て「たのしい川辺」みたいな話かと思ったら、半分は合ってたけれど、半分は違いました。

最初に登場するフランクリンというおじいさんのキャラが面白くて、彼とモグラ紳士の、必ずしもしっくりいかない関係がなんともイギリス的かも、、と思いました。
また、思い切り歴史とリンクしているところは個人的にはツボ。
でもだんだんとわりと普通のファンタジーになっていきます。結末はかなり前から予想できてしまうし、ちょっと尻すぼみかな。別に悪くはないんですけどね。

主人公のベットという女の子の境遇が、「トムは真夜中の庭で」のトムとちょっとかぶっているような。

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by foggykaoru | 2008-05-06 09:59 | 児童書関連 | Trackback | Comments(2)

「モンテーニュ通りのカフェ」を観ました。

このブログで映画に言及するのは、原作ものであるか、言語ネタであるかのどちらかなのですが、これはどちらでもありません。
ああパリっていいな、また行きたくなっちゃった、、ということで。だから旅ネタでしょうか。

このGWは何がなんでも観たいと思う映画がなくて困ったなと思っていた(嘘です。別に困りません)のですが、この映画のことを聞いた瞬間、「これだっ!」と思いました。

原題の「Fauteuils d'orchestre(=オーケストラ・シート)」のほうがぴったりくるのですが、映画が始まる前、初老の男性客が「モンテーニュ通りには何回も行ったことがあるんですよ」と知り合いらしき人に話していました。
うーん、なるほど、そういうことで観に来るということもあるのね。
何を隠そうこの私、パリに行った回数を数えなくなって早ウン年ですが、「モンテーニュ通り」と言われてどこだかわかりませんでした(汗) たぶん初めてパリに行ったときは、そのあたりをかすめたのではないかと思いますが。
私は高級ブティックのウィンドーで500ユーロ以上する帽子を見て目をむく主人公ジェシカと永遠に同類です(苦笑)

フランス工房ジャーナルさんによると、この映画、おととしの作品だそうで。
いい映画なのに、どうしてそんなに長い間ほっておかれて、そのあげく、あんな小さな映画館1館だけでしか上映されないのでしょう?
ル・シネマでやっても不思議はない。
ル・シネマだけでは手が回らないのか。
派手か地味かと問われれば、そりゃあ間違いなく地味な映画です。大事件もアクションもない。
でも、40才以上の人、特に女性には絶対に楽しめます。
大人のための娯楽をもっと大事にせい! 少子・高齢化なんだよ日本は。

そうそう、ひとつだけ、言語ネタがあったんでした。文化ネタと言うべきかもしれませんが。
字幕で「安い家具」となっていた台詞があるのですが、フランス語は「「イケ○の家具」だったので、ちょっと反応してしまいました。北欧のあの有名なメーカーです。
つい先日、ヨーロッパの階級意識の根強さについて友人と話したのですが、友人の知り合いがヨーロッパに住むことになり、アパートにイ○アの家具を運び込んだところ、大家さんに「うちのアパートにはそんな人に住んで欲しくない。出ていってくれ」と言われたのだとか。
このメーカー、日本ではオシャレっぽいイメージですが、かの地ではそういう位置づけなのです。

映画を観た後、東急本店でやっていた「パリのカフェ展」なんてところにふらふらと行ってしまいました。知ってることばかりだったし、紹介されているカフェのほとんどは前を通ったことがある(入ったとは限らないが(自爆))から、600円も払って見る必要はなかったですけどね。フジタ・ツグジがデザインしたカフェのメニューは興味深かったけれど。招待券をお持ちの方はぜひ。GW限定企画です。

展示室から出たところでは、パリ関連本を売っていて、雑誌「pen」の「パリ美術館特集号」を買ってしまいました。便乗商法にしっかりのせられたわけです(苦笑)

おお、最後の最後にようやく本の話題になった。めでたしめでたし。

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by foggykaoru | 2008-05-04 22:19 | 観もの・聞きもの | Trackback | Comments(18)

「物語 イタリアの歴史Ⅱ」

中公文庫の「物語 ○○の歴史」シリーズの中でもピカ一の面白さなのが「物語 イタリアの歴史」。その第二弾が出ていたんだ!と喜んだら、著者の藤沢道郎氏は2001年にお亡くなりになっていたのですね。この本の巻末の著者紹介で知りました。

ということで、これは氏の生前にNHKのテキストに連載されていた記事をまとめたもの。

第一弾がよかったからという理由で出される続編というのは、しょせん二番煎じだし、著者が亡くなってから他の人がまとめた本というのも、たいていは今ひとつなものだが、これはなかなか良い。もちろん、藤沢氏自らが手を入れたらもっと良いものになっただろうけれど。

個人的には教皇たちにまつわる物語を面白く読んだ。
6世紀末のグレゴリウス(イタリア名グレゴリオ)1世。これはちゃんとした教皇。
10世紀の教皇の母マローツィア。これはかなりの悪女。猛女ともいえる。
そして14世紀のボニファティウス8世。これがどうしようもない奴で、、「教皇のアヴィニヨン幽囚」のきっかけを作ってしまったわけだが、彼と対立したのがフランス国王フィリップ美顔王だったということを改めて確認して、感慨深かった。かの「テンプル騎士団」をぶっつぶしたのもフィリップだったから。
グレゴリウスはともかく、あとの二人のドロドロ加減と言ったら。でもそこが面白い。
イタリアの歴史というのは、どうしてもローマ教会の歴史が関わらざるを得ない。そして、それこそがイタリア史の醍醐味なのだと思う。

この本に関する情報はこちら

この本よりもっと面白い「物語 イタリアの歴史」に関する情報はこちら


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by foggykaoru | 2008-05-01 20:20 | 西洋史関連 | Trackback | Comments(2)