石井美樹子著「王妃エレアノール---ふたつの国の王妃となった女」(平凡社)

c0025724_10201568.jpg同じ著者の同じタイトルの本が朝日新聞社からも出ています。ただしそちらの副題は「12世紀ルネッサンスの華」。どう違うのかは未確認です。少なくとも目次は同じ。

日本人研究者によるエレアノール関連本といったらこれで決まり。研究書と小説の中間のような本です。私はこの手の本が大好き。エレアノール個人のことだけでなく、周辺事項も丹念に書かれているので、本格的に西洋史が好きな人にお薦め。
たとえば、もしもフランスがパリ中心ではなく、南仏圏中心の国になっていたら、どんなふうになっていただろう?などという妄想に浸れます。少なくとも私は浸りました(^^;

もっと気楽に読める本がいいという人には、カニグスバーグ著「誇り高き王妃」(岩波書店)がお薦め。先に石井さんの本を読んでしまっていると食い足りないので、両方読むつもりならこちらを先に。
ちなみに、この作品の著者は「クローディアの秘密」などで広く知られるアメリカの児童文学作家。なので、ジャンルとしては児童文学に入れられてしまうのでしょうけれど、この作品を子供が読んで面白いと思うかどうかは、大いに疑問です。
併録されている「ジョコンダ夫人の肖像」もとても面白いけれど、これも子供には難しいのではないかしら。美術好き&イタリア好き&ルネッサンス好きには自信を持ってお薦めします。

映画としては、古いけれど、「冬のライオン」(1970年)がお薦めです。晩年のエレアノールをキャサリン・ヘップバーンが演じています。夫ヘンリー2世役はピーター・オトゥール。
私はこの映画を、高校生のときテレビで観ました。子供の目にはライバルのフランス王フィリップ(尊厳!)がやたらかっこよかったのですが、これはティモシー・ダルトン。後に007になりました。

この映画を大変面白く観た私は、このあたりのことを世界史の授業で習うのを心待ちにしました。
でも、授業では一瞬のうちに通り過ぎてしまったのでした。(T_T) 

学校というのは、そんなものなのでしょう。。
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# by foggykaoru | 2005-01-29 07:59 | 過去に読んだお薦め本 | Trackback

いよいよ世紀のヒロイン登場

モード(マティルド)は、結局スティーブンを追い出すことができなかったのですが、スティーブンの後を継いだのは彼女の息子ヘンリー2世でした。

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1154   ヘンリー2世即位(プランタジネット朝の始まり)
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ヘンリー2世の奥さんはアリエノール(エレアノール)。アキテーヌ(ボルドーを中心としたフランス南西部)に広大な領地を有する家の跡取り娘です。

この夫婦の間に生まれたのが、リチャード獅子心王。
でも、高校の世界史で覚えさせられたのはその弟のジョン王のほう。「欠地王」あるいは「失地王」として名を馳せ(苦笑)、マグナ・カルタを承認させられた。
あまりにも評判が悪かったから、その後、イギリス国王には「ジョン」はいないのですよね。。。

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1215 マグナ・カルタ制定
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教科書で有名なのはジョンですが、この家族の中で一番の傑物は、母エレアノール。超弩級のヒロインと言ってもいいでしょう。彼女の存在が、このあたりの歴史を非常に面白いものにしてくれています。もしも彼女がいなかったら、かの「アーサー王の物語」も歴史の流れの中に霧散してしまっていたかも。

というわけで、次項はお薦め本のご紹介。
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# by foggykaoru | 2005-01-29 07:53 | 西洋史関連 | Trackback

大明神祭開催を考えた瞬間

フランス語で「魔法」は"magie"
「マジー」と発音します。
これの語源は"mage"
イエスが生まれたときにお祝いに駆けつけた3人の王=マギのことだそうです。
マギと言えばマギー。
マギーと言えば、マジックつまりマジーのマギー四郎。
マギーはMaggyと書くのかな、それをフランス語読みしたらマジー・・・

マジかよ!

ということを、頭の中でぐるぐる考えたのは、私ではありません。
友人です。

ほんに貴女はネタ大明神!
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# by foggykaoru | 2005-01-27 22:11 | ツボ・(オバカな?)ネタ | Trackback | Comments(2)

エリス・ピーターズ著「修道士カドフェル」シリーズ(光文社)

c0025724_20204134.jpgカテゴリーこそ違いますが、前回の記事の続きです。

「指輪物語」の師匠である友人が、現在、カドフェル布教活動を推進中なのです。その口車に乗せられて(爆)読み、ついにここにご紹介する運びとなりました。

ジャンルとしては推理小説。でも、「捕物帖」と呼ぶほうがふさわしいかも。なにしろ12世紀の話なので、とにかくのほほ~んとしてます。
このシリーズを楽しむコツは、「カドフェルの推理に細かい突っ込みを入れない」ことかもしれません(笑)

全部で20作品(+番外編1巻)もあるせいか、何冊か読んだことがあるという人はけっこういるけれど、全巻読破した人は案外少ないような。「カドフェルが好きになるにちがいない」と思われる人も、訊いてみると、たいてい3、4冊程度でやめてしまっているのです。
その気持ち、わからないでもないのですけれどね。
正直、中だるみ感の漂う作品もあるし。

でも、歴史の香りのする小説が好きな人は、たとえちょっと飽きても、とにかく読み進んでみてください。また、特に歴史好きでなくても、アガサ・クリスティーの推理小説が好きな方だったら、きっと楽しめます。読むのは刊行順がベスト。

私の場合は、まず1巻で唸りました。これは「聖遺物」(仏教で言えば「仏舎利」みたいなものです)の話。ヨーロッパ史好き必読です。
その後しばらくの間、のんびり読み進み、再び唸ったのは7巻。そして、10巻、11巻で続けざまにノックアウトされ、このあたりから全巻読破を決心。

18巻あたりになると逆に「最後を読むのはやめよう。もうこの先は無いと思うと悲しいから」と思い始めたのですが、友人に励まされながら20巻「背教者カドフェル」を読み終え、心の底から満足しました。著者エリス・ピーターズ女史は、21巻を書いている最中に亡くなったのだそうで、それは大変残念なことなのですが、それでも彼女に20巻目を書かせてくださった神様に感謝!という気持ちです。

カドフェルシリーズの大きな魅力は、登場人物のキャラが立っていること。主人公カドフェルはもちろん、脇役陣もそれぞれいい味出してます。それ以外にも素晴らしい「特別ゲスト」が登場します。ここに言及した巻以外にも、「作品としては平凡だけれど、○×が登場するから必読!」というものもいくつかあります。それがどの作品なのかは、自分で読んで見つけてくださいね。
また、修道院というのは、めったに入れるところではないので、中がどうなっているのか、非常に興味深いものがあるのですが、その点に関しては、「神父の卵(後に俗人に戻り、結婚した)」である知人が、「あの世界の素晴らしいところも、そうでないところも、よく書けていて感心した」と言っています。

最後に、カドフェル布教活動に日夜いそしむ友人・ゆきみさんからのコメントをご紹介。
「1巻と、2巻はカドフェル・シリーズの2つの流れを代表する作品なので、絶対に両方読んでね。6巻は重要な作品なので、絶対に読んでね。私のお薦めは10巻、13巻、16巻、17巻、そしてなんと言っても20巻。最後の方は泣きながら読んでました」

なお、カドフェルシリーズのうちの何作かはBBCがドラマ化していて、NHKのBS?で放映されたことがあるそうですが、ゆきみさんによると、その多くは「原作を読んでいる人には観るに耐えない」ものなのだそうです。作品の最重要ポイントが改変されてしまったものもあるとか。なので、もしもテレビで観て「大したことない」と思った方も、だまされたと思って、ぜひ原作を読んでみてください。


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カドフェルシリーズの作品一覧はこのサイトこのページにあります。
社会思想社倒産後、一時期絶版になりましたが、現在は光文社から順次刊行されています。(ここにアップした画像は社会思想社刊のもの)

カドフェルの町シュルーズベリーのサイト

シュルーズベリーで行われていたシュルーズベリー・クエスト。面白そう♪ でも現在は行われていないそうです。残念!
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# by foggykaoru | 2005-01-24 20:42 | 過去に読んだお薦め本 | Trackback(1)

イギリスとフランスが、イギリスともフランスともつかなかった頃のこと

高校レベルの世界史の年表には、紀元前のブリテン島のことなんて書いてありません。なので、ずっとすべてが霧の中でした。
ところがなんと、「大英帝国とロンドン」に概略が書いてあったのです。感謝感激!

以下、古代におけるブリテン島の民族興亡史のおさらいです。

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大昔  先住民がちらほら住んでいた。ストーンヘンジもこの時代。
紀元前5世紀頃  ゲール人が来る。
紀元前3世紀頃  ブリトン人が来て、ゲール人は征服される。
その後  ベルグ人が来て、ブリトン人は征服される。これまで来たのはみんなケルト族。
紀元前50年頃  ローマ軍が来て、ブリテン島を占領。征服ではなくて占領。つまり服従しさえすればよかったので、案外平和な時代だった。
その後  ローマ人が退役すると、地元民によって補充されたので、占領軍は実質的にブリトン人の軍となる。ローマの混乱とともに、ローマ軍が退却していく。つまり多くのブリトン人が去る。
紀元4世紀以降  いわゆる「ゲルマン民族の大移動」の時代。防御が手薄になったイングランドに様々な民族がおしよせる。北部に押し込められていたケルト系民族、たとえばピクト人(!)が攻めてくる。すると、「北方蛮族からイングランドを守る」という名目で、サクソン人やアングル人が攻めてくる。
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このときサクソン人と戦った(ことになっている)のがアーサー王。
ということは、彼はブリトン人、なのですね、たぶん。

他民族がやってくるたびに、被征服民は、西へ西へと逃れていった。ウェールズの山間とか。

その後のイングランドの歴史を年表で確認しました。
( )内はフランスの情勢です。
とは言え、タイトルにあるように、英仏両国はまだまだイギリスともフランスともつかない状態。わざわざ分けるほうがおかしいのだろうと思います。

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768年 フランク王国のシャルルマーニュ即位。)
789年  ノルマン人、初めてイングランドに侵入。
800年頃から約200年間 ノルマン人、ヨーロッパ各地を荒らす。
843年 フランク王国三分。フランス・イタリア・ドイツの基となる。)
850年頃 デーン人のイングランド侵入始まる。
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この頃のイギリスで、デーン人と戦った人として、有名なのはアルフレッド王。
ノルマン人というのは「ノール(=北)から来た人」という意味。
ノルマン人のうち、今のデンマークあたりにいた一派がデーン人。

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911年 デーン人の酋長ロロ、ノルマンディー公となる。)
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要するに、海賊(いわゆるバイキング)の長であったロロに、フランス国王が「もう頼むから略奪しないでくれ。その地方の領主にしてやるから。でも、国王は私だからね。ちゃんと忠誠を尽くしてくれ」と言ったのであります。

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980年頃 デーン人のイングランド侵入再び活発化。
987年 ユーグ・カペー即位。カペー朝始まる。)
1066年  ノルマンディー公ウィリアム(仏名ギヨーム)、イングランドを征服、ウィリアム1世となる。ノルマン王朝の始まり。
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ノルマン王朝の名の由来は「ノルマン人」ではなくて、「ノルマンディー」なのです。

当時のフランスのカペー朝は弱体でした。ノルマンディーという一地方の領主がイギリスの国王になったという事実は、この後のフランスにとって大きな脅威となります。
ウィリアム1世の後をその息子が継いでヘンリー1世となります。
ヘンリー1世は嫡子を失ったので、娘のマティルド(またの名モード)を後継者に指名して死にます。マティルドの夫ジェフロワはアンジュー伯。アンジューはフランスの一地方。

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1135年 スティーブンの戴冠
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スティーブンはウィリアム1世の娘の息子、すなわち、ヘンリー1世の甥。彼が王位継承権を主張し、さっさとウェストミンスターで戴冠式を行ってしまったのです。スティーブンはブロワ伯。お父さんがブロワ伯だったから。ブロワというのは、ロワール河畔の町です。つまりこれもフランス。
ちなみに、ウェストミンスターを牛耳っていた高僧はヘンリーは、スティーブンの実弟。

ウィリアム1世の息子の娘(=マティルド)と娘の息子(=スティーブン)の王位をめぐる争いの始まりです。

この頃、シュルーズベリーにカドフェルという修道士がいて、数々の難事件を解決した(ことになっている)のです。

・・・ということで、次回はお薦め本のご紹介です(^^;
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# by foggykaoru | 2005-01-21 20:58 | 西洋史関連 | Trackback

「大英帝国とロンドン」(その2)

昨日の訂正(汗)と追加です。

まず訂正事項。

ヘンデルがイギリスに行ったのは、ジョージ1世のとき。
ジョージ3世ではありません。それはモーツアルトの訪英時の国王。このときモーツアルトは、同じく招待されてロンドンに来ていたバッハにとても可愛がられて、いろいろ教えてもらったんだそうな。

そして追加事項。

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# by foggykaoru | 2005-01-20 20:44 | 西洋史関連 | Trackback

保柳健著「音楽と都市の出会い---大英帝国とロンドン」(音楽之友社)

まだ読みかけなのだが、忘れないうちにメモしておく。

誰でも知っているヘンデル作曲の「ハレルヤ」だが、あれの歌詞は英語で書かれている。

♪ハーレルヤ! ハーレルヤ! ハレルヤ! ハレルヤ! ハレールヤ!・・・
♪キーングオブキーングズ
♪ロードオブローズ

「クラシック=ドイツ」と刷り込まれていた私にとって、これは非常に奇異な事実だった。(モーツアルトはドイツではなく、オーストリアだが、小さい頃の私にはドイツとオーストリアの区別はつかなかった。)長じて映画「アマデウス」を観たら、ドイツ語でオペラを書いたのはモーツアルトが最初で、それまではイタリア語で書かれていたということを知った。いずれにしても、英語の出る幕は無い。
その後、ヘンデルが、招かれてイギリスに行き、長いこと滞在していたという事実を知った。なーるほど、出稼ぎしていたのね。だから英語の合唱曲を書いたわけだ。
しかし、新たな疑問が生まれた。

なぜ、よりによってイギリスに? 

こう言っては申し訳ないが、イギリスと音楽というのは、どうもそぐわない感じがするのだ。
この本を読んで、答えがようやく見つかった。

以下はその答え。

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# by foggykaoru | 2005-01-19 20:58 | 西洋史関連 | Trackback

三輪裕子著「緑色の休み時間---広太のイギリス旅行」(講談社)

c0025724_1922642.jpg私が子どもだった頃というのはたぶん、イギリスを中心とした外国の児童文学が一種のブームで、多くの優れた作品が日本に紹介され始めた時期だったのだろう。私はナルニアとランサムの初版を買ってもらい、外国生まれの児童文学をそれ以外にもいろいろ読んで育った。そして数十年後、私と同じような読書体験をして育った人たちの中から、多くの児童文学作家が生まれることとなった。

三輪さんもそんな1人。
昨年の夏頃だろうか、暇にまかせて「ランサム」で検索して遊んでいたとき、ぶつかったのが三輪さんのブログだった。それ以来、三輪さんの作品は、私の課題図書となった。「一番影響を受けたのはランサム」と言い切る作家とは、いったいどんな作品を書くのだろう? 一度読んでみなくては。 

図書館の児童書コーナーに並ぶ三輪さんの作品の中からこれを選んだのは、舞台が北ウェールズだったからだ。
「闇の戦い」シリーズの舞台と驚くほど似ている。そして確かにランサムの影響と思われることが、随所にあり、読んでいてにやりとさせられる。

イギリス、特にその田舎が好きで、何回か行っている人なら、特に児童文学愛好家でなくても、楽しく読めることだろう。短くて読みやすいので、普段あまり本を読まない人にもお薦め。ランサムと「灰色の王」が好きな方、もちろんぜひご一読を。

なお、三輪さんのブログには、この本を執筆するきっかけになった旅のことが書いてありますが、それを読むのは本を読んだにすることをお勧めします。
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# by foggykaoru | 2005-01-16 19:16 | 児童書関連 | Trackback(1)