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ゆうじょこう

村田喜代子作。

時は幕末。
貧しい娘が親に遊郭に売られ、遊女となって生きていく。
時代はやがて明治になり、遊郭にも変革の風が吹き始める・・・

たいへん興味深く読みました。

こういうタイプの作品は女性の手になるものだからこそ、読める。少なくとも私は。



# by foggykaoru | 2023-04-28 17:37 | 普通の小説 | Trackback | Comments(0)

「国境なき医師団」を見に行く

いとうせいこう著。
この人、昔、テレビでお目にかかった記憶があるけれど、もともとは編集者で今や作家なんですね。

タイトルどおり、「国境なき医師団」のルポ。
取材したのはハイチ、ギリシャ、フィリピン、ウガンダの四か国。
「国境なき医師団」の宿舎に泊めてもらって。そういうのいいな、面白そうだな。

印象に残っているのは以下2点。

まず、ものすごくきちんとした組織なのだな、ということ。(当たり前だ)
必要とされるところにすぐさま飛んでいって医療行為をするのがその活動なのだけれど、なんとなく、身を粉にして、寝食を忘れて、困っている人々を救う、、、というイメージがあったんですよね。ありませんか?
でも、そんなブラックな勤務ではない。
ちゃんと休暇があって、心身をリフレッシュしてから次の赴任地に飛ぶのです。
赴任地でも勤務ばブラックではない。(もしかしたら、日本の大学病院のほうがきつかったり?)
考えてみれば、そうでなければ、みんな疲弊してしまって、活動は頓挫してしまうものね。(第一、フランス中心の組織なんだから、ちゃんと休むにきまってる)

もうひとつ、はっきり覚えていること。
それはハイチの状況の劣悪さ。

実は、この本を読んだのはハイチが取り上げられていたという点が大きいのです。
で、結果、ハイチ以外の3か国に関して何が書いてあったか全く覚えていない(汗)

というのは

まだまだコロナ禍の真っただ中、ハイチ人(在日ハイチ大使館員)と話をする機会がありまして。
「お国ではコロナの感染状況はどうなっているのですか」
と尋ねたら、
「驚くべきことですが、まったく蔓延していないのです」
ええっ?
「不思議でしょう? なぜそうなのかは神のみぞ知る」
へええそーなんですかー
と流したけれど、そんなはずはないってば。

外交官は本国政府の意向に逆らった発言はできない。
だからきっと、コロナの実態を把握することができないほど、医療状況が劣悪なんだろうなと思ったものです。

この本を読んでその予想が当たっていたことがよくわかりました。
ほんとに大変な国なんよ。



# by foggykaoru | 2023-04-23 06:40 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

失われた地平線

「チップス先生さようなら」(←大昔に読んで涙しました)の作者であるジェイムズ・ヒルトンが書いたファンタジー。
ヒマラヤ山中に隠された楽園「シャングリ・ラ」に英国男性が入り込んでしまうというお話。

「シャングリ・ラ」という言葉はこの作品から生まれたのだそうだ。
国際的にも普通名詞化しているこの言葉。
その原点がどう描かれているのかという一点のみでも、読むに値すると思って読みました。

興味深かったです。
でも古い小説だし、まったりしたお話です。
スリリングとか壮大とかいう期待はしないでね。


# by foggykaoru | 2023-04-21 21:17 | 普通の小説 | Trackback | Comments(0)

ちいさな国で

作者はガエル・ファイユという、ブルンジ生まれの人物。
内戦から逃れるためにフランスに移住してから書かれた自伝的小説である。

帯に「高校生が選ぶゴンクール賞受賞作」とあったので、あんまり好みではなさそうだけど、フランス語畑の人間がスルーしてはいけないのかな、、と思って読んでみたのだが・・・

ブルンジの隣国はルワンダ。
このあたりの国境と民族の入り組み方は今ひとつわからないのだけれど、とにかく、ヨーロッパの列強の都合で変に分けられてしまったのが、後々に影響しているのだろうなということだけは想像できる。

民族が異なっていても、つい昨日までは普通に接して、平和に暮らしを共有していた人々が分断され、多くが命を散らしていく。
愛する故郷を離れざるを得なかった青年の心には、深い悲しみ、空虚がしみこんでいる。
安住の地であるはずのフランスでは自分はよそものであり、帰属感は持てない。
その状況ををどうすることもできない。

救いが無いのである。

大して長くないのだけれど、再読するには気力を要する。

# by foggykaoru | 2023-04-21 06:33 | 普通の小説 | Trackback | Comments(0)

夢見る帝国図書館

中島京子作。

タイトルに惹かれて読んだのですが、これは力作です。

物書きをしている主人公がひょんなことから上野で風変りな老女と知り合う。
彼女のたどった数奇な人生と並行して、明治維新後の日本の図書館の歴史が語られていく。

文化の殿堂たる図書館を我が国でも育てていこうという歩みは、富国強兵の名のもとに、ことあるごとに停滞する。
その苦難の歴史が、抑圧されてきた女性の人生とオーバーラップする。

小説というのは、楽しめればそれで十分だと私は思っている。
でもこの小説には楽しみながら学ばせてもらった気がする。

こういう作品に興味をそそられる友人が少なくないと思うので、もしも私に実際に会うチャンスのある皆さん、リクエストしてくださればお貸ししますよ。

# by foggykaoru | 2023-04-20 19:53 | 普通の小説 | Trackback | Comments(2)