我が名はエリザベス

著者は入江曜子。
副題は「満州国皇帝の妻の生涯」

ずいぶん前から存在だけは知っていて、ずっと気になっていた本。
なにしろ映画「ラスト・エンペラー」を観てますから。
しかもその後、愛新覚羅溥儀の英国人家庭教師ジョンストンの書いた「紫禁城の黄昏」も読んでますから。

あの人の妻なんだから、ろくな目にあわないんだよね、キツイよね・・・と思って、古本屋で見つけて手にとってはまた棚に返して・・・を繰り返していたのだけれど、落ち着いて本を読む時間がとれそうだったので、思い切って購入。

「ノンフィクションノベル」という、意味不明なキャッチコピーがついている。
一人称で書かれているから明らかに小説。でも、ノンフィクションっぽい。
新田次郎文学賞を受賞したというのは納得です。彼もノンフィクション的な小説をたくさん書いた人だから。

主人公はフランス租界で西洋文化に染まって育つ。
そんな少女が清国(の元)皇帝の后になるのだ。耐えられるはずがない。
きっと纏足もしてないはず。それに関しては何も記述が無いんだけど。

予想どおり、主人公にとって、不幸なことばかりが起こる。
予想どおり、アヘン中毒になる。
そして、野垂れ死に。

予想どおり、キツかった。
でも、なかなか面白かった。一気読みでした。

そして、
映画「ラスト・エンペラー」はとても面白かったけれど、かなりきれいごとだったんだなとこの本を読んで感じました。
「紫禁城の黄昏」も、真実の一部しか書かれていないんだろうなと思いました。
もっとも、すべての真実を知るなんてことは、なかなかできることじゃない、たぶん不可能なのだろう・・・
などと、いろいろなことを思ったのでした。







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# by foggykaoru | 2018-01-05 22:39 | 普通の小説 | Trackback | Comments(0)

遥かなるチベット

副題の「河口慧海の足跡を追って」。
鎖国中のチベットに禁を犯して入国したため、慧海はそのルートを秘した。
この本は1992年にそのルートを探索し、たどった記録。

著者は根深誠という人。
登山家だそうで、あとで検索したら、白神山地の保護活動をやったり、なかなか偉い人みたい。

実は、数十ページ読んで、飽きてしまって、2か月ぐらい放っておいた。
思い立って、最初から読み直したのだけれど、読み通すのにかなり努力を要した。
文章があんまり、、なのです。
慧海の「チベット旅行記」があんなに面白いのに。

同じことをするなら、高野秀行氏にやってもらいたかった。
彼ならずっと面白く書いてくれただろうに。
そもそも高野秀行がやりたかったんじゃないか、とか、やりたかったのに根深さんに先を越されちゃったんじゃないか、とか、いろいろ考えてしまいました。

けなしてしまいましたが、胃に穴が開きそうなくらいに体調が悪いのに、頑張った根深さんは偉い!
というか、なんでそんなに具合が悪いときに行くのか・・・と呆れ返ったり。

根深氏は、ネパール領内で、チベット国境まで慧海のルートをたどった後、飛行機でチベットのラサに飛び、そこからジープで慧海がチベット入国後まず行った聖地カン・リンポチェ(カイラス山)に向かう。
この聖なる山の周囲の巡礼コースは1周52キロ。
これをチベット人は1日で歩くんだと!
1日休養して、また1日で歩く! ということを繰り返すんだと!!
なんてタフなんだ!
でももっとすごいのは、五体投地をしながら1周する人もいるということ。
信じられない!!!
(さすがに1日ではない。尺取虫みたいに進めるだけ進んで、車で宿に帰り、翌日、またそこまで車で行って、五体投地で進んで、、、ということを続けるんだそうだ。それにしても。)

チベットの中国化の現状が語られている。
この本が書かれてすでに四半世紀。
チベット文化はもう瀕死状態だろう。
ああ、行きそびれたなあ。



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# by foggykaoru | 2017-12-31 20:34 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

明日はいずこの空の下

児童文学作家の上橋菜穂子の本。
でも小説ではなくて旅エッセイ。あら珍しい。

彼女の専門分野である文化人類学つながりで、オーストラリアの話が中心です、上橋さんは英国児童文学を読んで育った人なので、イギリスの旅の思い出もあります。
しばしば名前があがっているのは指輪物語やグリーンノウ。
この2つのファンにとっては嬉しいエピソードが多い。

もちろんアーサー・ランサムの言及も1か所だけ、あります。
しかも、読んでいて「そろそろ出そうだ」と期待したところで出てきます。
上橋さんは「機会があれば必ずランサムを持ち出す」ということを自らに課しているとしか思えない。
律儀なお方です。

旅エッセイとしては普通ですが、上橋さんに興味がある人、英国児童文学やアボリジニに興味がある人に貸したら、楽しんでもらえそう。
なので、英国児童文学ファンの人優先でお貸ししますね。





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# by foggykaoru | 2017-12-30 21:39 | エッセイ | Trackback | Comments(0)

双頭の船

池澤夏樹のファンタジー小説。
東日本大震災にインスパイアされて書いたそうだ。

何やら天災が起こった。
そこにボランティアを載せた船がやってきて、そのうちに被災者も乗ってきて・・・
ノアの方舟っぽかったり、ひょっこりひょうたん島っぽかったり。
よくわかんない作品でした。



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# by foggykaoru | 2017-12-29 21:53 | 普通の小説 | Trackback | Comments(0)

犬が星見た ロシア旅行

武田百合子の旅日記。
ダンナである泰淳のエッセイに描かれる彼女に興味を惹かれたので、彼女の有名な「富士日記」でも読んでみようかと思っていたのだが、たまたま図書館でこの本を見つけてしまったので。

昭和50年ころのロシア(正確にはソ連)旅行。
泰淳に「旅行に連れていってやるから日記を書け」と言われて書いたんだそうな。
若干、言葉遣いの粗さが見受けられるけれど、読ませる文章です。

今は昔ということが多い。トイレとか、今のロシアは全然マシだし。
旅情報としては役立たない(けれど、そもそもそんなものを必要とする人はこの本を読まないだろう)、けれど、読み物として面白い。
結局、彼女のキャラが面白いのです。まさに炸裂してます。
そして、1か月近くの長旅とは言え、1回の旅でで文庫本1冊分の文章を書けるのはすごいなあと、旅行記を書く身としては感嘆しました。
観光名所の説明なんかほとんどない。
でも切り取り方がうまいんです。
たまたま出会った人、たまたま見た光景を詳しく書いている。それが面白い。

旅行記がずっと読み継がれるかどうかということは、そこにかかっているのだろう。


ハバロフスクから入り、西に進み、ウズベキスタンの後、グルジア(今のジョージア)に入ったとたん、食生活が目に見えてよくなるのが印象的。

去年、私たちの旅の最後は、モスクワのデパート内の高級ジョージアレストランでのディナーでした。
引率者のふゆきが「ジョージア料理なら美味しい」と太鼓判を押すので。

ジョージア、行きたいなあ。

旅の最後は北欧(ストックホルムとコペンハーゲン)なんだけど、ここでの料理は洗練はされているけれど、ごく簡素なカナッペになってしまう。

一緒の便でストックホルムに行ったモスクワ特派員夫妻が「ソ連からこっちに来るとほっとする」的なコメントを言うが、百合子本人は西欧社会に物足りなさみたいなものを感じたようだ。
わかるような気もする。

でも、私はやっぱりモスクワ特派員の側だな。



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# by foggykaoru | 2017-12-28 20:34 | エッセイ | Trackback | Comments(0)

カント先生の散歩

ドイツ文学者・池内紀による、カントの生涯。

去年までカントについて私が知っていたことといえば、哲学者で、その代表的著書は「純粋理性批判」ということ。世界史受験だったからね。でも内容は何も知らん。
その程度の私がなぜこの本を読んだかというと、カントはケーニヒスベルクの人だから。
ケーニヒスベルクは今やロシアの飛び地・カリーニングラード。
ベラルーシ→リトアニア→カリーニングラードと、ロシアの縁をのたのた巡った去年の旅の記録はこちら

カリーニングラードの大聖堂は、今や教会としての機能を失っているけれど、その片隅にカントのお墓がある。
ということをただポカーンと見てきた私なのですが、この本を読んで、ようやくいろんなことがわかり、非常に感慨を覚えました。
行く前に読んでいたらどんなによかっただろう・・・

というわけで、旅の相棒(というより、引率者)だった友人に、この本はプレゼントしたいです。(連絡してね)

カントが生きた時代が18世紀末で、フランス革命と同時期だった。
フランスではそのちょっと前に啓蒙思想家がたくさん出て、それがフランス革命の種をまいたわけだけど、ドイツはちょっと遅れたわけだ。
そして、彼の哲学の触媒的な役割を果たしたのが、親友だった英国商人。英国は新大陸やインドやアフリカだけでなく、バルト海にも進出していた。考えてみたら驚くべきことではない。近いんだもん。
このあたりが、実に新鮮な発見でした。

カントはかなり長寿だったけれど、あまりにも長寿だったので、肉体が死ぬ前に、理性のほうが先に死んでしまった。理性を具現化した人だったのに。悲惨。
このあたりがまるで現代。



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# by foggykaoru | 2017-12-26 22:52 | Trackback | Comments(0)

猟師になりたい

猟師なんて、およそ私の趣味の対局にあるんだけれど、小豆島に移住した内澤旬子さんが猟をしているというのが頭の隅に残っていてた。
で、この本のタイトルに惹かれて読んでみた。
なんでまた世の中にはそんなことをしたくなる人がいるんだ?と思って。

著者の北尾トロという人は、長らく東京を拠点としてライターをやっていたが、思い立って長野に移住。
そして思い立って猟師になろうとする。(その理由は忘れた・・・涙)

今、日本では猟師が必要とされているんだそうだ。
なので、免許をとろうとしている人にはわりと親切に対応してもらえるみたい。
銃刀法が厳しいので、銃のロッカーが必要なだけではなくて、ロッカーは家に作り付けにしなくちゃいけないんだって。(ロッカーごと持っていかれてしまうと困るから。)

免許を取得しても、実際に猟に出て、すぐに獲物を取れるわけではない。
でも、楽しそう。
自然を見る目が変わってくるんだって。
で、猟なんかにまるっきり興味を持っていない私(しつこい!)ですら、「老後に猟をするのって悪くないみたい」という気分になりました。

この本の続編、読むかも。

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# by foggykaoru | 2017-12-20 20:56 | エッセイ | Trackback | Comments(0)

夫の悪夢

著者は藤原美子。
「夫」とは藤原正彦。

もう藤原家の人々の本を読むことはないと思っていたけれど、この人の本はまだだったので、たまたま見つけて読んでみた。

うまいです。
藤原ていと新田次郎の息子である藤原正彦に文才があるのは意外ではないけれど、DNAの結びつきのない奥さんまでこんなにうまいなんて、いったいどうなっているんだろう?

雑誌連載のエッセイ集なので、1篇が短い。もうちょっと長いほうがいいんだけど。

藤原ていの文章を読むと、夫との仲はいったいどうだったんだと思いたくなるほど、言い方に棘があるんだけれど、この本をよんで、いやいや、言いたいことが言えて書くときも遠慮せずに書けたぐらい、安定した夫婦だったんだなと思った。
そして、ご本人とダンナ正彦氏の間も、とっても風通しがよくて、良いご夫婦なんだなと。

なんだかんだ言って、悪くない本でした。



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# by foggykaoru | 2017-12-17 10:40 | エッセイ | Trackback | Comments(0)