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放っておいても明日は来る

副題は『就職しないで生きる9つの方法』
高野秀行さんの本。

「~著」と言わなかったのは、対談集だから。
某大学で「東南アジア文化論」という授業で行われた9つの対談。
で、東南アジアの文化を語っているかというと、語っているところもあるけれど、ほとんどがその人が今までどうやって生きてきたか、という話になってしまい、しかも9人全員が自由業だった。それがめちゃくちゃ面白くて、学生たちに「本にしたら売れます」と言われて、本にしちゃった、という本であります。

たいへん面白いです。

もちろん9人のゲストそれぞれの人生が面白い。
でも、いちばん面白いのは高野さん。
高野さんは、なぜ今の高野さんになったか、という話。
他の本で読んで知っていた事件なのけれど、それが具体的に彼にどういう影響を及ぼしたかということがよくわかって、非常に興味深かった。

彼が旅の前に行き先の言語を勉強していくのはなぜか。
それは言葉の重要性を痛感したから。

そして、リーダーにくっついていくよりも、自分がリーダーになったほうが楽だという話。
実によくわかります。
ツアコンにひっぱりまわされるよりも、自分で計画を立てて、自分で動いたほうが、楽なんです。興味がなければはしょれるし、休みたいときに休めるし。

もしかしたら、仕事もある意味、そうなのかもね。

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by foggykaoru | 2014-01-18 22:18 | その他のジャンルの本 | Trackback | Comments(0)

雪男は向うからやって来た

角幡唯介著。
近日中にこの人の「アグルーカの行方」を読む予定なのだけれど、その前にこちらを。
講談社ノンフィクション賞を取り損なったという、彼の実質的なデビュー作なのです。

タイトルどおり、雪男の話です。
ヒマラヤに雪男を探しに行くという、高野秀行氏向きのネタです。
角幡さんはUMA(未確認生物)なんて、まるきり興味が無いのだけれど、せっかく来た話だし、ちょうど暇だし、、、ということで「雪男探索隊」に同行するのです。(高野さん、悔しかったでしょうね。)

当然、雪男は見つからない。
だって見つかっていたら世界的に報道されてたはずだもの。
そういう意味で、「ムベンベ」と共通するところがとても多いのですが、書く人によってこんなに雰囲気が違ってくるのか!と感動しました。「ムベンベ」を読んでないあなたにもお勧めです。「空白の五マイル」のときにも思ったのだけれど、角幡さんは読ませます。正直、「面白くてやめられない」というタイプではないのだけれど、読むうちにじわじわと感動する。「読書の醍醐味」という言葉を思い出しました。

賞を取れなかった本でこのレベル。ますます「アグルーカ」が楽しみになってきました。


文庫版あとがきを書いているのは三浦しをん。ほんとうは高野さんに書いてほしかったところだけれど、世の中にはあとがきを読んでその本を買う人も少なくない。だから、知名度抜群の三浦しをんが
本書は「読んで損した」ということが決してない傑作だ。
と書いているのは、売り上げに少なからず貢献していることでしょう。



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by foggykaoru | 2013-12-06 20:02 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

空白の五マイル

著者の角幡唯介氏は高野さんの後輩。早稲田の探検部出身である。そもそも彼の名前を知ったのは高野さんの「辺境中毒!」に収録されている対談の相手としてである。
今年、彼の『アグルーカの行方』が高野さんの『ソマリランド』とともに講談社ノンフィクション賞を受賞したというので、まずはデビュー作のこちらから読むことにした。

チベットの奥地にあるツアンボー峡谷は、長年、冒険野郎たちの心をそそってきたが、その険しさから、いまだに踏破した人は出ていない。まだ「空白の五マイル」が残っている。その五マイルを踏破するぞ!と思い定めた角幡さんの奮闘記である。

すごい。これぞ探検、冒険。
いくつ命があっても足りないとはこのことだ。
しかも元新聞記者。読ませる文章である。

単行本は2010年刊行。
いくつもの賞を受賞しているが、これだけハードでまっとうな探検記なら当然のこと。
「まっとう」というのは、高野さんの探検はまっとうではない、ということが、この本を読んでつくづくわかってしまったのである。
ハードはハードなんだけどね。たとえば『アヘン王国』とか『西南シルクロード』とか。でも、まっとうではない。だから高野さんは長いこと日の目を見なかったんだな。

私は高野さんの本のほうがタイプです。
というのは、高野さんの探索の対象が「人間」だから。
厳しい大自然も悪くないけれど、私は自然そのものよりも、自然と人間との関わりのほうに興味があるのです。

若いときに何かを読んで、「そこに行きたい」と思う気持ちはとてもよくわかります。
子供時代に本を読んだことがきっかけで、「死ぬまでに絶対に行こう」と思いさだめた土地が、(飛行機には乗るけれど)電車を乗り継いで行けるところでほんとうによかった(苦笑)

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by foggykaoru | 2013-11-16 19:09 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(6)

未来国家ブータン

高野本。ハードカバーを購入(←いばってどうする)

かなり長く続いた『ソマリランド』の余韻。
この本を読んだときに、ようやくそれが薄くなっていたのかもしれない。
あるいは、この本がそれに負けないほど面白かったのかもしれない。
とにかく非常に楽しめました。

なによりもまず、ブータン旅行の目的がいい。
ネタバレになるから詳しく書かないけれど、本来、というか、表向きは非常に真面目な目的がある。
でも、高野さんが本当にやりたいのは、それとは別。世間一般の常識から言ったら不真面目・不謹慎。
で、高野さんは、真面目なミッションをこなしつつ、不真面目(でも本気)な探索を試みる。
この二つのバランスというか、ミックスがいいのです。こういう本は高野さん以外には書けない。

結果的には、ブータンという国のありようが描き出されます。
二つの目的が達成されたかどうかはおいといて。

高野さんという人は知的だなとしみじみ思います。
視野が広いのは世界旅しているから? いやいやいや。旅したって大して広くならない人もいる。
でも彼の場合、旅の経験が糧になっているのは確かです。

お父上は高校の先生だったそうですが、高野さんもいい先生になれただろうと思います。あ、これは『ソマリランド』のときにも思ったんだっけ。

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by foggykaoru | 2013-10-28 20:28 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(2)

金門島流離譚

船戸与一作。ハードボイルド。
暴力と血がいっぱい。性もちょっぴり(でもそういうシーンは無い)。

めったに読まないこのジャンル。
古本屋で見つけたこの本を買った理由は、高野さんが「辺境中毒!」で紹介していたから。ちなみにあとがきも高野さん。

金門島というのは、中国大陸の目と鼻の先にある、台湾領の島だそうで。
その地の利を生かして、いろいろ裏っぽいことに利用されていて、、、暴力と血がいっぱいの作品のかっこうの舞台になるわけである。

普通に面白かったけれど、元来このジャンルは得意ではないので、船戸作品はもう読まないだろうと思う。
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by foggykaoru | 2013-10-12 09:24 | 普通の小説 | Trackback | Comments(4)

思わぬところでビルボに会いました

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年末に乗ったアシアナ航空機で。
たった2時間のフライトなのに映画が選べるのです。

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こちらは相棒のネクロマンサー、、、じゃなくてシャーロック(笑)

そうです、まさか「ホビット」が観られるはずがありません。
観たのは「シャーロック2」
ただし、英語版+ハングル字幕。あの早口英語の聞き取りは超難しいし、ハングル解読は不可能。

というわけで、単なる「環境ビデオ」として楽しんだのでありました。

年末のソウル弾丸旅行記はメインサイトで連載中。
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by foggykaoru | 2013-01-19 15:14 | メインサイトのボツ写真 | Trackback | Comments(0)

さらば愛しのピョンヤン

タイトルから想像がつくとおり、脱北者の手記。

北朝鮮について初めて読んだ本は『今、女として---金賢姫全告白』だった。
初めて知った北朝鮮の実態に目を丸くし、「日本に生まれてよかった」としみじみ思ったものだ。

あれから20年以上。
今はあのころよりは情報が多いので、読んで受ける衝撃度は相対的に低いのだけれど、この本の注目点は著者である趙明哲が北朝鮮のエリートだったという点にある。

どうエリートかというと、金日成の息子たちのために作られた学校の生徒として選ばれるくらいのエリート。(この息子たちは、成日の異母弟で、後に成日との権力闘争に敗れた。) 
この学校の生徒はときどきいきなりいなくなる。
それは親が失脚したことを意味する・・・。

著者は経済学者となり、名門大学で教鞭をとるのだが、研究者や学者ですら、思想教育を受け続けなければならない。要するに金日成語録の暗記。誰も彼もがそんなことに時間を費やし、神経をすり減らさなければならないなんて、国家をあげての愚行としか言いようがない。新しいアイディアを出すと、体制批判をしたことになり、失脚する。だから誰も何もできない。

著者は中国への留学を許される。そして中国の豊かさを目にして、それまでの価値観が揺らぎだし、ちょうど金日成が死去したおりに亡命する。それがどれほど勇気のいることだったか。独身だったからできたのだろう。

社会階層こそ違え、命を賭して国を捨てる人々が絶えない。
そんな体制、いつまで続くのだろう。ミサイル実験に成功しちゃったけれど。
体制崩壊の際、我々はどんな影響を受けるのだろう。
国内の原発&活断層が議論の的だけれど、北朝鮮も活断層の上に建った原発みたいなものだ。怖いよー。


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by foggykaoru | 2012-12-21 21:33 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

アジア未知動物紀行

副題は『ベトナム・奄美・アフガニスタン』
著者はもちろん(!)高野秀行氏。

今回の探し物は
・ベトナムの猿人「フイハイ」
・奄美の妖怪「ケンミン」
・アフガニスタンの凶獣「ペシャクパラング」

若いときから旅のネタ(!)を見つけては、出発前に入念な準備をしてからでかけていた高野さんだが、今回の3つの旅はそうではない。
突発的・衝動的にでかけるのも悪くない、と思い始めたとのことで、ベトナムではホーチミンに着いてから慌ててテントを購入したり。そのバタバタぶりがまた面白かったりする。

もちろん(!?)探し物は見つからないのだが、それでも(それだからこそ?)楽しめるのだから、読者としては何も問題ないわけで。

強く思ったこと。
それは
高野さん、あなたの旅は正解です。
ということ。

現代において、未知のもの(さまよえる湖だったり、怪獣だったり)を発見したり、人跡未踏の地(南極点だったり、エベレスト改めチョモランマだったり)に到達したりすることは、もはや事実上不可能になっている。
また、「話には聞くけれど、見たことがない土地やもの」をこの目で見たい、という欲求すら、今の若者には抱きにくくなっている。
私は小学生のときから英国湖水地方を一目見たいと思い続け、10年後に初めてウィンダミアに行って大感激した。
でも、今やネットで写真をいくらでも見ることができる。これは果たして幸せなことなのだろうか?(とか言いつつ、写真や旅行記をアップしている私は、他の人々の幸せを奪うことに加担しているのである)

旅する意義はいろいろある。「あった」と言うべきかもしれない。
今や1つしか残っていないような気がする。
それは「出会い」である。
ところが、インターネット、特にスマホの登場によって、「出会い」の機会すら減っている。
なにしろ生身の人間に訊かなくても、スマホで検索すればたいていの情報が得られるのだから。

高野さんが求めているのはスマホでは得られない情報である。
だから現地の人々とふれあい、語り合わなければならない。
そういう意味で、高野さんの旅は「正解」なのだ。

未知動物という、はっきりした興味の対象を持っている高野さんは幸いである。


現時点でこの単行本はユーズドでしか入手できません。
もうすぐ文庫化されるかも。
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by foggykaoru | 2012-11-17 23:09 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(4)

東南アジア四次元日記

「エンタメ・ノンフィクション」の雄・宮田珠己の本。
彼がサラリーマンを辞めて初めてでかけた旅のあれこれを綴った渾身の?作。
現在はユーズドでしか入手できません。

普通の旅行記ではない。
普通の旅情報は得られない。
そのかわりに、妙チクリンなものに関する情報がたっぷり得られる。

私は東南アジアが好きだが、唯一のネックは仏教寺院である。
お寺というものは無彩色、わび・さびでないとしっくりこない。
東南アジアのパゴダはピカピカで赤とか金。あり得ないよ。
(日本のお寺だって、本来は赤とか金だったんだけど。)
仏像の顔だってなんだか変だし。

正直言うと、東南アジアのピカピカパゴダよりもヨーロッパの教会のほうが10倍楽しい。

この本を読んで、パゴダの正しい楽しみ方を知った。
「日本とちがって変だ」と文句をつけるのは間違っていたのだ。(考えてみれば、そもそも「日本と違うものは変」という考え方はよろしくない。お寺に限らず。)
日本と違うのは当たり前。面白がればいいのだ。

次回、東南アジアに行くときは、心して面白がることにしよう。

この本を読んでもう一つ悟ったことがある。
それは、宮田さんの文章を私はあまり好きではないということ。
面白いんだけど、ちょっと濃すぎて疲れる。面白いんだけど。

子どもの頃にケストナーの作品を読んだときのことを思い出した。
おおっ!この人の文章は面白いぞ!と思ったけれど、「好き」には至らなかった。

というわけで、どうせエンタメ・ノンフィクションを読むのだったら、やっぱり高野さんの本にしよう、と思いを新たにした私でありました。
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by foggykaoru | 2012-11-11 18:03 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

漂流するトルコ---続「トルコのもう一つの顔」

副題の示すとおり、「トルコのもう一つの顔」の続編。著者は小島剛一。彼はノンフィクション作家ではない。学者である。言語学者。

この本が出たことは以前から知っていたのだが、忘れてしまっていた。
「怪獣記」のあとがきで高野さんが前作に触れているのを読んで本作を思い出し、慌てて熱帯雨林でクリックした次第。

前作を読んだ人なら続編を心待ちにしていたはず。迷わず読みましょう。
前作を読んでいないのだったら、できたらそちらから読みましょう。
精密さを要求される学問の専門家らしく、やたら細かい注があるけれど、めげずに読みましょう。
前作は中公新書だったのに、本作の出版元は「旅行人」。この会社は一部の旅人には知られているものの、一般的には知名度が低く、書店でめぐり会う可能性はほとんど無い。だから読んだ人は宣伝しましょう。

この世界にはひどい国家はいくらもあろうが、トルコもその一つだということがよくわかる。
真実をねじまげる国家では、真実を探求する学問が疎んじられる。
そもそも学問というのは、何の役に立つのかなんて関係ない。とにかく追求していくものである。普通の国だったら、「へえ、そんな役にも立たないこと、よくやるなあ」と呆れられる。親は「そんなことしても食べられないのに」と嘆くかも。でも、別に邪魔されはしない。

明治時代、金田一京助がアイヌ語の研究をすることができた日本。
アイヌが圧倒的に劣勢で、日本政府を脅かす危険性が皆無だったということはあっただろう。でも、小島さんが研究対象とするラズ語の話者たちだって、トルコ政府を倒す力なんてないはず。

真実をねじまげる国では、人の心もねじまがるのだろうか。
小島さんに近寄ってくる人には信用ならない人々が多すぎる。
(市井の人は圧倒的に素朴で親切なのだが)
そして、おバカな諜報部員が多すぎるところは、なんとなくミャンマーに似ている。
(でも、ミャンマーの柳生一族のほうがずっとかわいげがある。)

ミャンマーと同じく、トルコも江戸時代なのだろうか?
オリンピックに立候補してるんだよね?

でも、いちばん驚かされるのは小島さんという存在かも。
こういう人がほんとうの言語学者なんだよなあと思う。
30年前、私の周囲には日本語以外の外国語は英語しか知らないで、変形生成文法とかいう数式を操る人々ばかりだった。あれはせいぜい言って英語学者。言語学者じゃない。
ききとり調査には良い「耳」が必要だとは思っていたが、ちらっと聞いた民謡をささっと楽譜化してしまうなんて。民族音楽というのは、音階が西洋音楽とは違うから、採譜は容易じゃないはず。

1946年生まれという小島さん。
フランスではもう隠居生活のはず。
ヒマラヤをサンダルで歩きまわる体力があるとはいえ、どうかご自愛ください。
そしてこれからも私たちに真実を教えてください。


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by foggykaoru | 2012-10-06 10:06 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(12)