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黄金のアデーレ 名画の帰還

ものすごく久しぶりに映画を観ました。

主役がヘレン・ミレンで、ヨーロッパがらみの話、ということで興味を惹かれたのです。

「黄金のアデーレ」はクリムトの絵。
「接吻」に似た感じの、黄金をちりばめた「アデーレさん」の肖像画。
で、このアデーレさんは、ウィーンに住んでいたユダヤ人のお金持ちの女性だったのです。

肖像画「黄金のアデーレ」はナチスによって没収され、第二次大戦後はウィーンのベルべデーレ宮殿のギャラリーに展示されていた。
しかし、命からがらアメリカに亡命した子孫が所有権を主張して・・・

この後、いったいどうなるんだろう?というドキドキ感はない。
なにしろ題名がネタばれしてるから。

ナチスが美術品をぶんどった話は知っていたけれど、知っていてもその非道さはヒドイ。
命からがら亡命する場面だけは、ほんとうにハラハラドキドキ。

私にはとても面白かったです。

特にユダヤ人のすごさが。

ナチス侵攻以前のユダヤ人の大富豪の暮らしぶり。
当時の人気画家だったクリムトに肖像画を描かせる家ですから、その他にもすごい美術品がある。
お父さんが趣味で弾くチェロがストラディバリだったり。
訴訟の際に頑張ったぺーぺーの弁護士が作曲家シェーンベルクの孫!
「肖像画を取り戻せたら、うちで買い取らせてください」と言ってきた「ノイエ・ギャラリー」は、化粧品のエスティー・ローダー社がやっている美術館。
みんなユダヤだったのね。

ところで、私がベルベデーレ宮殿のギャラリーに行ったのは、まだ20世紀のことで、「黄金のアデーレ」はまだ展示されていた。
なのに何にも覚えていない(涙)
(「接吻」は覚えてます。)

この映画の公式サイトはこちら

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以下は映画とは関係無い話。

メインサイトの「世界の美術館を斬る」(私が観た美術館に関する独断と偏見に満ちたコメント集)は今日をもって閉鎖しました。
あのコンテンツ、以前からどうしようかと思っていたのですが、この映画を観て閉鎖を決心しました。
美術館の展示品は移動する。
いくら個人的な感想であっても、もう置いてない作品のことを「ここには○○がある」とか書いてあるのを放置しておくのは、良心が咎める、、、ほどではないけれど、気になってしまって。
ベルベデーレにはもう「黄金のアデーレ」は無い、ということに関しては、なにしろ観たこと自体忘れてたから、別に問題無かったんですけど。



ところで
旅行記だけは細々アップしてます。
たまにやらないと、やり方を忘れてしまうんです(苦笑)
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by foggykaoru | 2016-01-07 21:38 | 観もの・聞きもの | Trackback | Comments(4)

パレオマニア

副題は「大英博物館からの13の旅」
池澤夏樹作。いちおう小説。でも「普通の小説」ではない。
名前も明かされない主人公が大英博物館に通い詰める。その次に、印象深かった作品が発見された土地に実際に行ってみて、いろいろ思索にふける、、、というお話。
主人公は明らかに作者本人。
つまり池澤さんが世界中を旅してまわった記録を、小説の体裁で書いたもの。
ほんっとに贅沢なことしてるなあと羨ましくなる。

一つ一つの作品と旅がしっかりと書かれているので、読みでがある。1日に1つで十分。一気に2つ読むととお腹いっぱいになってしまう。

実際に行ったことがあるカンボジアとメキシコの話はさすがによく理解できた。
うなずけるというか。それでも作者独自の視点が新鮮だった。

オーストラリアのアボリジニの旅が印象的。
あの大陸にはほとんど興味がなかったのだけれど、行ってみたくなった。

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by foggykaoru | 2014-08-22 23:39 | エッセイ | Trackback | Comments(2)

美女たちの西洋美術史

木村泰司著。副題は『肖像画は語る』

でも、これを「西洋美術史」の本と思って読んだらあてがはずれます。肖像画の描き方の変遷とかも、語られているけれど、それは1割。9割は「肖像画のモデルになった人物を中心とした歴史」、つまり西洋史なのです。私は西洋美術史よりも西洋史のほうが好きなので、これは嬉しい誤算でしたが。

エリザベス一世とマリー・アントワネットに関しては目新しいことはなかった。けれど、それ以外の人物については知っていることが多くても、けっこう面白かった。

フランスにおける「公式寵姫」がいつ誕生したのかとか。
アンリ二世とディアーヌ・ド・ポワティエ、そしてカトリーヌ・ド・メディシス、メアリー・スチュアートのからみとか。

というわけで、西洋史好きにはお勧めです。

最後(15人目)に紹介されるのがジャックリーン・ケネディー・オナシス。
モデルの人となりを紹介しつつ、「現代における肖像画」を論じていて、この章だけは看板に偽り無し。
著者がいちばん書きたかったのはこれだったのかも。
もしかして、ここまでの14人は、壮大なる「前フリ」だったのかも?!


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by foggykaoru | 2013-12-17 22:03 | 西洋史関連 | Trackback | Comments(2)

謎解き西洋絵画

木村泰司著。

タイトルどおり、西洋絵画の解説本。
1作品につき7、8ページなので、ちょこちょこ読むのにいい。
直前に読んだ本とかぶるところがあり、比較すると興味深かった。解説がちょっと違っているのだ。(どう違っているかはもう忘れてしまった(涙))

あっさり済ませるために正確さに欠けてしまったのか?
それとも、さまざまな解釈があるということなのか?
両方ありそう。

でも、私には、どちらかというとこの本のほうが面白かった。
浅いけど。
変化に富んでいるせいというのもあるだろう。
あと、この人のほうが文章がうまいような気がする。

(文庫でなく)単行本で読んだのもよかった。
絵が大きくてわかりやすいから。


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by foggykaoru | 2013-12-05 21:03 | 西洋史関連 | Trackback | Comments(2)

恋する西洋美術史

恋や愛や性をテーマにした西洋絵画や彫刻のお話。
「一つのテーマを追う」タイプの解説だからなのかな。
なんとなく単調で退屈だった。
でも、電車で読んでいても乗り越す危険がなくてよかった。(をい)

池上英洋著。
「高階さん以後」のこのジャンルを背負う人々の中の一人なのかもしれないけれど、もうこの人の本は読まなくていいかな、、、などと思ってしまった。


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レビューでは好評なんだよね・・・
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by foggykaoru | 2013-12-01 19:37 | 西洋史関連 | Trackback | Comments(2)

名画で読み解くハプスブルク家12の物語

中野京子著。
評判になった『怖い絵』がいまひとつだったので、その後に続く彼女の本にはあまり食指が動かなかった。今回もさして期待せずに読んだのだけれど、意外に面白かった。それほど深くないんだけど。
ハプスブルク家に関する私自身の知識が大したことないので、この本のレベルに合っていたのだと思う。え、褒めてない? いやいや、一般大衆向けの啓蒙の書として、よく書けていると思います。

中野さんは「絵」で売り出してしまったけれど、西洋史の専門家であっても西洋美術史が専門の人ではない。
美術史的な側面をもう少し掘り下げた本を読みたかったら、高階秀爾さんの本を読むべき。高階さんが偉大すぎるとも言えるんだけど。

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by foggykaoru | 2013-07-25 20:33 | 西洋史関連 | Trackback | Comments(0)

芸術のパトロンたち

ふう。ようやく今月読んだ本までたどり着きました。

高階秀爾著。
ルネサンスから現代に至る、芸術(家)とそのパトロンの歴史。

面白かったのは前半。
フィレンツェのドゥオモ(大聖堂)の彫刻が、今で言うコンペで決定したのは知っていたけれど、2作品をしみじみ見比べることができた。新書だから小さい写真だけど。どっちがいいのか判断がつかなかった。高階さんも甲乙つけがたいと言っている。でも選ばれたほうは中空で、安く作れたんだって。なるほどね。
フィレンツェではメディチ家など、個人もパトロンになったのだけれど、彫刻など、費用がかかるものはさしものメディチさんでも手が届かず、個人はもっぱら画家のパトロンだった(「メディチ家の礼拝堂」はすごい彫刻づくしだけど)、、、というあたり、フィレンツェで見たさまざまの作品を思いおこしながら納得して読んだ。

「ラ・ボエーム」とか、モディリアニの悲劇などで知られる、芸術家の困窮は近代の産物。
昔の芸術家は、大物の工房で働いていて、とりあえず若くても食べることだけはできた。
そのかわり、宗教画とか、偉いさんの肖像画とか、仕事は選べなかった。
近代になって創造の自由を得た代わりに、保証を失ったわけ。

印象派が広く認められるようになったかげには、目利きの画商という存在がある。
そもそも画商というのは近代の産物。

近代以前は、優れた芸術作品は有力者の私有財産だったから、一般人の目に触れるチャンスはほとんどなかった。見るには相当なコネが必要だった。芸術家肌の庶民にとって、教会の宗教画は貴重だったのだろう。「フランダースの犬」のネロくんのように。あれすらネロくんは見せてもらえなかったんだけど。当然、流通だってしなかった。

美術館というのも近代の産物で、フランス人の発明(=革命の産物)だというくだりを読んで、「そうかやっぱり」と腑に落ちた。

私はメインサイトで「世界の美術館を斬る」というコーナーをやっている。普通に感想を書いただけなのに「辛口コメント」と評されることが多くて驚いたんだけど。そのコンテンツを作りながら「フランスは美術館の国だ」と、しみじみ思ったものだ。(それに対してイタリアは「美術の国」であって、「美術館の国」ではない。)
いくら革命を起こしても、国民挙げてかなりの美術好きでなければ、美術館なんて思いつかないはず。フランス人って根っからの美術好きなんだなあ。ある国や地域の文化とか国民性とか民族性って不思議で興味深い。

残念なことに、この本、時代が下るとどんどん退屈になる。あくまでも私個人の感想ですが。

やっぱり岩波新書はあんまり合わないのかも、なんて思ってしまった。
なんとなく中公新書のほうが好きなんです・・・。


この本はユーズドでしか入手できないようです。
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by foggykaoru | 2013-05-11 09:06 | 西洋史関連 | Trackback | Comments(4)

近代美術の巨匠たち

高階秀爾著。
2008年に岩波現代文庫として出版された本だが、もともとは1969年に美術出版社から刊行されたもの。その後、青土社から刊行されてから、さらに文庫化されたのである。

フランスの印象派以降の有名な画家の生涯が要領よくまとめられている。さすがいろいろな出版社から出ただけのことはある。さすが高階さん。

高階さん自身、「絵画を鑑賞するために必要不可欠というわけではない知識」だと言っているけれど、有名な人の生涯というのは、それ自体、けっこう興味をそそられるし、なんてったって高階さんだし。高階さんを越える人は、今後なかなか出ないだろうとしみじみ思った。


読んだとたん忘れてしまったことが多い(汗)けれど、印象的だったのは

・ゴッホの唯一の理解者だったとされる弟テオだが、実際は特に兄思いだったわけではないようだ。兄弟の中でいちばん成功したから、ゴッホをはじめとする他の兄弟を援助しただけのこと。「兄思いのテオ」というイメージはテオの未亡人の演出によるらしい。

・「ルノワールは陶器の絵付け職人だった、印象主義の画家の中で、唯一、職人階級の出だった」ということは、高階さんの他の本で知ったけれど、絵付け職人から画家に転身した大きな理由は、機械による絵付けが可能になったため。手描きの陶器の人気が下がってしまい、仕事がなくなったのだという。これにはびっくり。


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by foggykaoru | 2013-01-22 21:01 | 伝記・評伝 | Trackback | Comments(6)

印象派という革命

「名画の言い分」の木村泰司著。

以下は備忘録。

印象派に先立つ革命児クールベ。彼が「オルナンの埋葬」で顰蹙を買ったのは、取るに足らない小さな村の無名人の埋葬なんかをわざわざ描いたからなのだが、実は主題が問題となっただけではない。サイズも問題だったのだ。つまり、無名人の埋葬を、歴史画などのような「格の高い絵」並みの大きさで描いたということが、当時の常識人の神経を逆なでした。

パリのオランジュリー美術館にある、モネの「睡蓮」。
印象派に対して「すれっからし」になってしまった後で見た私は「なぜモネだけがこんなに優遇されているのだろうか? 友達が多かったのか?」などと考えたのだが、これが大当たりだった。
モネは友人だったクレマンソー首相の注文であの作品を描いたのだ。
白内障の手術までしたのは、大物である友人との約束を果たすため。

いちばん面白かったのは、女性画家ベルト・モリゾの生涯。
彼女はブルジョワの娘で、芸術好きの親の支援を受けてその才能を伸ばしたものの、当時は女性が芸術家になるなどということは、とんでもないことだった。でも娘は絵に夢中で結婚したがらない。親は困った。結局、父親が亡くなってから、画家マネの弟ウジェーヌと結婚。母親としては、とりあえず結婚してほしかったし、マネ家は家柄が釣り合ったし、ベルトが拒絶しない唯一の男性がウジェーヌだった。マ兄弟はこれまたブルジョワ。親の資産で食べていけた。(だからマネは売れない絵ばかり描いていても生活に困らなかった。)ウジェーヌ自身、素人画家で、ベルトの画家としての活動に理解があり、全面的に支援した。だからベルトは美術史に名を残す画家になれたのだ。

そういう便利な夫を見つけられなかった女性芸術家-----たとえばロダンの弟子だったカミーユ・クローデル(彼女は愛人であるロダンに捨てられたのだから最悪のパターンだ)-----は周囲の無理解や差別に苦しんで、キャリアを断念したり、野たれ死んだりしていったのだろう。

私には「名画の言い分」のほうが面白かった。
というのは、たぶん私が印象派に関してわりと知識があるほうだからだと思う。
「印象派に興味を持ち始めた」くらいの人にお薦めの本である。

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by foggykaoru | 2012-06-17 20:29 | 西洋史関連 | Trackback | Comments(0)

誰も知らない「名画の見方」(結婚するならこの人!)

先日行ったブリヂストン美術館のショップで、表紙の「真珠の首飾りの少女」のまなざしと、「高階秀爾著」に惹かれて衝動買い。
高階さん、まだお元気なのですね。なによりです。

8章が3つの項目に分かれている。つまり各項目あたりがほんの数ページである上に、小学館101ビジュアル新書ということで、カラー図版がふんだんに掲載されているため、高階さんの解説は短い。それでも収穫はあった。でもほとんど忘れてしまった(号泣)
一気に読んだら物足りないけれど、ちょっとした暇をみてちびちび再読したい。
(最近こういう本が多い)

わずかに覚えている収穫、それはルーベンスのことである。

ネットを始めたばかりのころ、とある歴史サイトでやっていた「歴史上の人物の誰と結婚したいか」というアンケートに「ルーベンス」と答えたことがある。
なぜなら、彼は外交官でもあったのだ。すごいでしょ。自画像もかっこいい。彼がお得意さん(王侯貴族や教会)の注文で描いた大作(ネロくんが死ぬ間際に見た絵とか)は仰々しくて、中には悪趣味なんじゃないかと思うものすらあるけれど、純粋に自身の楽しみのために描いた家族の絵は愛情に満ちていて素晴らしい。稼ぎがよくて愛情深い亭主。最高じゃん!

高階さんの評によると、
ルーベンスは
「社交的でコミュニケーション能力が高かった」
だからこそうるさい王侯貴族の注文にきめ細かく応じることができた。
「経営能力も高かった」
当時の王侯貴族向けの絵は画家1人が描いたわけではなく、工房の職人たちとの合作。だから職人を上手に使いこなせなければならなかった。

やっぱり結婚するならルーベンス♪

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by foggykaoru | 2012-04-13 21:28 | 西洋史関連 | Trackback | Comments(6)