アフリカにょろり旅
2008年 10月 29日
「にょろり」というタイトルにドキドキしてしまったが、ウナギのことだった。
著者は青山潤という人。東大海洋研究所所属の研究者である。海外青年協力隊あがりの彼が、アフリカにウナギを探しに行く旅である。
とても読みやすい。
けれどとにかくハードな旅です。
「このあたりで見つかったらしい」という情報だけを頼りに、マラウイ、モザンビーク、ジンバブエを走り回る。
いつ、どこで出会えるとも知れないのだから、限りある研究費をできるだけもたせなければならない。
よって、移動は公共の交通機関つまりバス、そして宿泊するのは安宿である。
趣味のバックパッカーだって、このあたりは楽に旅できるところではない。
さらに「ウナギを見つけなくてはならない」という使命に縛られているのだ。(特にモザンビークはシャレにならないほど物騒で、使命感がなかったら行けるところではない。)
まさに命を削りながらの旅。
そこまでやって、得られるものは何か。
「謎を解明した」ということで、達成感は得られる。
その専門領域における名声も。「ウナギの研究に関して世界でトップレベルの研究チームの一員」という名声である。
でも、金銭的には何もない。
世の中にはこういう人たちがいて、命をかけて世界の真理を追求している。
尊い仕事だと思います。
でも、もしも自分が著者の親だったら、「お願いだからやめて」と泣いて頼むかも。
そこまでしなくても、少なくとも、溜息をつくだろう。「なんでこの子はこんなふうになってしまったのだろう」と。
そういえば、以前高地考古学者の本を読んだときも同じようなことを感じたのでした。
そういう人たちが頑張っているのに、私を含めてほとんどの人は、のうのうとお茶飲みながらテレビを見ているだけ。
いやー、ほんと、いつもどうもすいません。
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by foggykaoru | 2008-10-29 20:10 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(8)
あ~。そうですね。私及び同業者の親の多くは、このように溜息をついているようです。
最近、日本生態学会では野外調査に関する安全マニュアルを作成しはじめました(興味のある方は、「日本生態学会 安全」でググってみてください)。研究者が十分に注意することによって、家族の溜息が減れば良いのですが・・・。
世界(主に熱帯地方の未開の奥地)に、新種の蘭を探して命懸けで分け入る蘭ハンターたちの話ですが(英国人がけっこう多い)、呆れつつも憎めない…と、このブログを読みにいらっしゃる方の何人かはお思いになるのではと。ちょっとおすすめ…でもあきれないでね。
おすすめのゴヤ映画に行ってきました。あの時代に興味を持つ者には考えさせられる映画でした。教えていただいてありがとうございます。とり急ぎ御礼。
わたしが「滅びゆく言語を追って」や、ウデヘ語の研究者などについて感じたことと、とてもよく似ていますね。
それくらいでないといっぱしの専門家にはなれないのですね。
わたしにはそんな覚悟がないので、ただの語学好きで終わってしまうんだろうなぁ。
ところで、好きです、ウナギ。
ああ、マストドン。
でもね、この10年で8人か9人か、日本人の生態学研究者(学生も含む)が野外(国外も含む)で亡くなっているのです。不可抗力の場合もあるとは思います。だけど野外体験貧困な学生は年々増えてくるし、安全管理意識の薄い教員も多いし、「何とかせねば」というところに来ています。
実際、ちょっと頭にとめておくだけでも避けられた死亡事故もありますし・・・。