天才の栄光と挫折---数学者列伝
2008年 11月 18日
この本は9人の数学者の人生を追ったもの。
最初のニュートン、関孝和あたりはちょっとだれたけれど、その次のガロワからあとはぐーんと面白くなり、ほとんど一気読みでした。
それぞれに興味深い人生だけれど、環境に恵まれてその素質を伸ばすことができた人よりも、独学に近い形で名を残した人のほうが印象が鮮烈です。
たとえばガロワ。
彼の場合、名門リセには入っているけれど、ちょこっと授業を受けただけで、あとはほぼ独学。そして、革命後の混乱した時代の中で、一人で暴れて無駄に死んでいった。
たとえばラマヌジャン。
インドのカースト最高位であるバラモン階級の生まれだが、経済的には決して恵まれていなかった彼は港湾局の経理部に勤務。数学の研究をつづけていたところ、見出されてケンブリッジに留学し、大センセーションを巻き起こす。彼の場合、もともとの発想が他の数学者とは全く違っていて、「単に頭がいい」という次元ではないらしい。
つくづく感じるのは、数学という学問の特殊性。
紙と書くものさえあればいい。あとはひたすら考えていくだけ。そして論理を構築していく。だからときどき独学の天才が生まれるのだろう。
そして、その能力の中には、「ひとつのことを来る日も来る日も延々と考え続けることができる能力」が含まれる。よって、数学者はしつこい。挫折によって受けた心の傷を延々と抱え続けていくらしい。たとえば失恋すると一生涯立ち直れなかったりして、とてもお気の毒。栄光が輝かしければ輝かしいほど、挫折もまた深く大きい。
あと、数学には限らないけれど、「時代を超えた天才」の苦しみ、悲しみ。
あまりにも先を行っているため、そのすごさを理解することができる人すら限られている。
それにしても、高等数学というのはほんとに訳わからない世界。
なにしろ「aかけるbとbかけるaは同じではない」のだそうで。ハラホロヒレハレ。
そういう深淵な世界を垣間見させてくれる本でもあります。
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by foggykaoru | 2008-11-18 21:29 | 伝記・評伝 | Trackback | Comments(8)

うーん、確かにお気の毒ですねえ。やっぱり 恋の痛手には新しい恋!って、あれ場違いなコメントですね。
で、彼らは家族がちゃんといたのでしょうか。それとも 一人暮らし?

世間から理解されていない天才数学者の純愛の物語です
数学は「美しい答え」と言うのは藤原氏と共通ですね
藤原氏も、国家の品格の中で「たかが経済」と言ってのけているので、かなり世間とは違っていますが…
初恋の人を思い続けながら結婚した人もいれば、初恋の男の子を思い続けて独身を貫いた男性もいます。。。
>数学は「美しい答え」と言うのは藤原氏と共通ですね
「数学者」の域にまで達していなくても、数学を専攻するような人は、多かれ少なかれそういうことを感じるみたい。
私の友人で、数学を専攻した人も「美しいところにひかれた」と言っていました。

先生に一年で5000時間以上を数学のためだけに使わなければならないと言われたそうです。結局、数学とは離れてしまったようです。
この美しの庭で一日どころか一生遊んでる数学者たちは幸せな人たちだと思います。頭の悪い凡人である私はすぐ、今日の晩ご飯何にしよう?とかふらふらと考えることや興味対象が変わっちゃうのですが(苦笑)。