デュ・モーリア著「レイチェル」
2008年 11月 24日
で、「レベッカ」自体、抄訳?か何かで読んだだけで、結末さえ覚えていない。
その程度でも、これが「レベッカ」の双子みたいな作品だということはよくわかる。
主人公はコンウォールのええとこの坊ちゃん。
育ての親である年の離れた従兄がイタリア旅行のおりに結婚し、そのまま亡くなってしまう。
その未亡人がやってきて、主人公は一目ぼれしてしまうのだが、この恋には最初から謎がつきまとっていた・・・
謎めいたムードを楽しむ小説です。
でも、そのムードに浸りきるほどではなかったのは、こちらが年をとりすぎてしまったせい? 20年ぐらい前に読んだほうがよかったかも。
それにしても、どうしてイギリスの小説には、この主人公やその従兄みたいな、女性に疎くて男性同士のつきあいのほうを好む男性がよく登場するのだろう? パブリックスクールで男子だけの寮生活を送ったせいだとか聞いたこともあるけれど。
あと、イギリスの、財産管理以外にやることのない人々の暮らしぶり。つきあいがあるのは同じ階級のご近所さん数人と法律や経理関係の専門家だけ。使用人がいるから口はきかなくちゃならないけど、原則として暇。ひま。ヒマ!
ダフネ・デュ・モーリアというのは、どう見てもフランス人の名前だなと思って検索してみました。Daphne du Maurier 本来はデュ・モーリエと読むのが正しい。いつごろイギリスに帰化した家系なのかしらん。
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by foggykaoru | 2008-11-24 21:23 | 推理小説 | Trackback | Comments(18)
昔話を聞くに、庄屋とはいえ小作料が上がってくるのをただ待ってるだけじゃ無かったようです。やれ、誰それの家の屋根が壊れたから修理にいくだとか、どこそこの家に子供が生まれたから祝いにいくだとかで、暇なんて無かったみたいだから、イギリスのお金持ちは何やってるんだ?と思います。暇なら研究で実験に明け暮れるのが、よっぽど健全でしょうに。
暇だから恋に走るのかなあ。恋だけで明日のご飯は食べられないのに。。。ついそう思います。



あとで「レベッカ」の翻案だと知りました。
あのころはこういう翻案モノ多かったですね。ネイサン「ジェニーの肖像」なんて、なんど翻案されたことか(石森、水野、あすなひろし・・・?)
このデュ・モーリアとヒッチコック「鳥」の原作者のデュ・モーリアが、同じということにはしばらく気付きませんでした。

イギリスの有産階級でも田舎地主の生活というのは、それなりに忙しそうですよね。村人のもめ事の調停をしたり、教区の活動の中心になったり、狩猟をしたり、犬や馬を育てたり。都市生活者になると本当に暇なのかも。ホームズも事件がないとコカインに手を出すほど暇ですものね!
ラッコ庵さん、
私も長らく、「レベッカ」と「鳥」の作者が同じだということに気付きませんでした。で、「鳥」の方は本を買ったのですが(実は映画を見ていないのです)、「積ん読」状態です・・・。
嵐が丘ほどおどろおどろしくないですよ。
もっとムードがあるんです。
イギリスのええとこの旦那さんは、やることはあるんです。
でもやっぱり東京であくせく働いている私たちに比べるとずっと暇そうですよ。
そう、あの禁欲主義というか、女に興味がないのがなんとも不思議。
フランス人と比べるわけじゃないけれど、ドイツ人やロシア人だって、英国紳士みたいに女性を遠ざけようとする癖はないと思うんです。

当時の有閑階級から見ると、私たちの働き方(朝から晩までかかって生活費を稼ぎ、家事も自分でやる)は、さぞ、下層階級的で、哀れに見えることでしょうね。でも、紳士たちも、うかうかしているとすぐ暇な他家で噂のネタにされるし、教養は磨かなきゃならないし、楽じゃなかっただろうと思います。女性はさらに。

現代日本の鬱は、働き過ぎに起因することも多いので、第一の処方は「休養」ですけど、暇が原因の鬱だったら「行動」が処方になりそうですね。
「昔のヨーロッパのメランコリーは現代とは異なり、もっと贅沢なメランコリーだ」というようなことを、服部まゆみさんが書いていましたっけ。
ほんとほんと、きっと有閑階級の人々から見たら、われわれはまさにワーキングクラスでしょうね。
>一昔前までのヨーロッパの有産階級は、もしや暇すぎて鬱や神経症になって、フロイト先生の出番ができたんでしょうか・・・?
私はその考えにけっこう賛成です。
「秘密の花園」のコリンのお父さんなんて、まさにそのタイプじゃないかなl。
>昔のヨーロッパのメランコリーは現代とは異なり、もっと贅沢なメランコリーだ
ふーん。
高校の世界史の先生が「ペトラルカというのは近代人なのだ。なぜなら、彼は憂鬱だったのだ。近代人でないと憂鬱にはならないのだ」と言っていたのが非常に印象的で。
ペトラルカの憂鬱が現代人の憂鬱とどのように違うのかは、ペトラルカを読んでいないのでわからないのですが(汗)


そういえば。
面白そうなので、仕事が落ち着いたら読んでみたいです。
「レベッカ」は「ジェーン・エア」と若干近い印象を持っています。
…単なる前妻ものつながりかも…。
なるほど、そーゆー話なら読んでいっても悪くなかったかもね(笑)