「不機嫌なメアリー・ポピンズ」
2008年 12月 03日
著者は新井潤美という中央大学の先生。
帰国子女のはしりで、しかもイギリスで何回か転校していて、階級による言葉づかいの違いを身をもって体験して育った人。
実に面白いです。
今、読みかえしているところなのですが、この手のエッセイで読み終えたとたんもう1度読もうという気にさせた稀有の例です。
新書で持ち運びが楽だったという理由もあるんですけれどね(苦笑)
取り上げられているのはメアリー・ポピンズだけではありません。
「エマ」「高慢と偏見」「ブリジット・ジョーンズの日記」「ジェイン・エア」「レベッカ」「大いなる遺産」「眺めのいい部屋」「コレクター」「タイム・マシン」「時計じかけのオレンジ」「ハリー・ポッター」「日の名残り」「郊外のブッダ」
これらの作品をひとつでも多く読んだり(映画化されたのを)観たりしている人のほうが楽しめます。
イギリスは階級意識が強いとは聞いていました。
旅行に行って「コックニー」に目を白黒させた経験もあります。
それにしてもここまでとは。
極端に言えば、ひとこと口をきいただけで「お里が知れる」状態なのだそうです。
だから、これらの作品も、原語で読むと、登場人物の言葉づかいから、その人がどういうバックボーンのかが一目瞭然なのだそうな。
たとえば、相手に対して聞き返す言葉は「What?」がアッパークラスの言葉づかいで、「Pardon?」は非アッパーなんですって。びっくり。
日本語でも言葉づかいには上品・下品といった違いはあるけれど、そんなに明確に階級を示すわけではない。これは現実として階級による差があまり大きくない、ということもあるかもしれないけれど、それ以上に「意識」の差なのだろうと思います。
日本人は何かあれば「右へ倣え」。他の人と同じようにしたがる。
イギリスの場合は、「あの人々とわれわれは違うのだ」と考え、同じようにしようなんてはなから思わないのでしょう。
あと、「イギリスのアッパークラスはインテリでないことを自慢する」のだそうです。本も全然読まない。大事なのは言葉づかいだけ。教養は必要ない。「マイ・フェア・レディー」はそれをネタにした作品。この作品をさらにネタにしているのが「ミー・アンド・マイ・ガール」なのですね。。。
そう言えば、日本のアッパークラスである我が首相。
彼はアメリカ留学したらアメリカなまりの英語を覚えてしまい、茂おじいちゃんが「これはいかん」とアメリカからイギリスに鞍替えさせたそうですね。で、めでたくイギリスのアッパークラスの英語を身につけた。(たぶん。私にはわからないけれど。)
で、確かに教養は身につけてません、、、なんてことまでは、この本には書いてませんのであしからず。
とにかく、「イギリス臭さ」に興味のある方には超オススメです。
ランサムの言及もちらっと。
思わず著者紹介を見直しました。1961年生まれ。なるほど。
この本に関する情報はこちら
by foggykaoru | 2008-12-03 21:47 | エッセイ | Trackback | Comments(10)

アッパーの方が言葉遣いが粗野な気がするのは、誰にも媚びる必要がない階級だからですね

階級については、ジリー・クーパーという人の『クラース』という本でいろいろなことを知りました。10代の私には訳文も含め読みやすいとは言えなかった本ですが、今は、英国(人)を少しは知っているわけなので、もっと楽しめそうな気がします。

昨日、某所で現首相の妹さんと大学で一緒だったと言う方のお話を聞いたばかりです。
妹さんは、友達と話すときは普通の女子大生の言葉だったのに、あるとき、家に電話しているのを小耳にはさんだら、普段と全然違う話し方だったんだって!
首相のべらんめえも、庶民に合わせてくださっているのかも…(^^ゞ

ということで、kaoruさんの書評を読んだからには、次の「持ち運び」本として、これ
だな、とピンと来ました。借りなきゃ。
ところでーー不機嫌でない、笑っているメアリー・ポピンズって印象あります??覚えてないなぁ。
この本、前々から気になってはいたんですが、私のなじみの中公新書じゃないもので、なかなか手が出なかったんです。
「クラース」という本もタイトルだけは知ってます。機会があったら読もうと思います。
で、ちょっと読んだら???
本棚をかき回したら、ありました。ずいぶん前に買って読んでいたようです。いえ、紹介を見たときも、なんとなく覚えがあるような気がしたんですが。
悔しいので借りたほうの本を読み返してますが、面白いですね。