フィンランド語のしくみ
2009年 01月 24日
フィンランド語にはかねてから興味がありました。
これは「膠着言語」なのです。
非常に単純化して言うと、単語のうしろに「てにをは」や「です」「ます」などがどんどんくっついていくタイプだということ。
今をさかのぼることウン十年前、初めてフランスの大学の夏期講座に行ったとき、フィンランド人の女の子が2人いました。彼女たちはぬけるような白い肌をしていましたが、身長は日本人と大差なかった。そして、ヨーロッパ人にしてはフランス語が上手でなかった。
私「フィンランド語と日本語は近いんですってね。確かウラル・アルタイ系で」
彼女たち「そうそう、ウラル・アルタイだって習ったわ」
私「単語がどんどんくっつくのよねー」
彼女たち「そうそう! そうなのよー」
ああ、若かったあの頃(遠い目)
今回、この本を読んでみて、思いました。
単語を一つも知らない、完全に未知の言語に触れるというのは、なんと新鮮なことなのだろうと。(たとえばロシア語は、知っている単語がけっこうたくさんあります。「ダー」「ニエット」「ハラショー」とか。)
新鮮なのに(ロシア語よりも)わかりやすい。
それは(ロシア語と真逆なのですが)
1.文字がラテン文字だからなじみがあり、しかも読み方がわりと簡単
2.膠着言語だから文法が日本人にはとっつきやすい
からです。
日本語と似ている、と言いましたが、似ているという先入観があると、なんだたいして似てないじゃないかと失望されることでしょう。
正確にいうと、トルコ語に似ているのです。(これは言語学の常識で、私の発見でもなんでもありません。ただ、私が個人的に今回初めて実感した、ということです。)
トルコ語で
「元気」は「イイ」
「元気です」は「イイイム」
「日本人」は「ジャポン」
「日本人です」は「ジャポヌム」
「です」は「イム」または「ウム」
どちらを使うかは、その直前の母音による。
母音に2つの系列があって、A系列の母音のあとは「イム」、B系列の母音のあとは「ウム」にしなくてはいけない。
(これを言語学では「母音調和」という。)
フィンランド語も母音調和の世界。
(注: フィンランド語には英語のbe動詞にあたる動詞がちゃんとあるので、トルコ語のように単語の後ろに「~です」という接尾辞がつくわけではありません)
日本人である私としては、そんなふうに母音の組み合わせに縛りがあると、音が単調になってつまらないんじゃないかと思いたくなるんですが。
めったに新刊を買わない、出版社泣かせの私ですが、このシリーズを新刊で買うことにはまったく躊躇しませんでした。
小説を読む人は山ほどいるけれど、語学好きなんてその100分の1もいないもの。せめて私ぐらいが買ってあげなくちゃ。
今の日本、フランス語一筋でやってきた白水社は苦しいのでしょう。それで多言語路線のこんなシリーズを始めたのでしょう。黒田龍之助氏の発案だと睨んでいるんですけど。
でも日本人が関心を持ってるのは英語であって、決して多言語ではない。だからこのシリーズがものすごく売れるということはあり得ない。でも(だからこそ、と言うべきかも)こういう出版事業は価値があります。白水社の心意気、私は応援します。
ただ、「しくみ」シリーズで現在紹介されている言語の大半は、系統的にどういうしくみなのか想像がつくものなのです。私が読んでみたいのはあと1、2冊だけ。他はパスです。
「バスク語」とか「ゲール語」が出たら買いますよ。
この本に関する情報はこちら
by foggykaoru | 2009-01-24 20:56 | バベルの塔 | Trackback | Comments(8)
でもかおるさんの言語の解説で、興味がでてきました。ちょっとかじってもいいかな?
フン族とブルグント族(ゲルマン人)との戦いの話が「ニーベルンゲンの歌」の大元だというので、フィンランドは行ってみたい国の1つではあります(もちろん、ムーミンの故郷でもあるし)。海といえばバルト海と北極海で、寒そうだけど・・・。
>はなっからフィンランド語をわかろうなんて努力はしませんでたね。
私もおんなじ。
あのときは「フィンランド・エストニア・ラトビア・スウェーデン・ノルウェー・オランダ」という旅でして(メインサイトの「児童文学の旅」の「ムーミン」「ランサムのバルト海」「リンドグレーン聖地巡礼」「フラッシング」はそのときのものです)、そんなにたくさんの言語をかじっていくなんてことは無理!と、すべてを放棄したのです。あの旅から私の堕落は始まったのかも(自爆)
>でもほとんどみんな英語を話しているのと、人が親切だったという印象が強いです。
おんなじ!!
フィンランド語を耳にする機会すらほとんどなかったというか。。。
フィンランド人は、そのへんで声高にしゃべり散らす人種じゃないので、どういう言葉なのか耳に入ってこなかったのです。
ハンガリー語とフィンランド語、それにエストニア語は同系統ってよく言いますね。トルコ語とももちろん親戚だと思います。
ハンガリー語も膠着語で母音調和がありますよ。
私の乏しい学習経験からいうと、母音調和というのはやってるうちにまあなんとなく口が慣れてきます。といってもしょっちゅう調和し忘れてましたが……。
それよりも文法事項で一番難関だったのは、目的語が定冠詞であるか不定冠詞であるかによって動詞の活用が異なってくる(定活用と不定活用という2種類がある)ということでした。
英語なら目的語の違いはaとtheの冠詞の違いで区別しますが、ハンガリー語では冠詞に加えて動詞の活用でも区別があるということです。それぞれが母音調和で2系列に別れますので、1つの動詞の1つの時制に4種類の活用があるともいえる状態です。
目的語なんて冠詞で区別するだけでいいじゃん!!と言いたかったです。
フィンランド語はそのへんはどうですか?
おっ、さすが。ハンガリー語喋れたんですね。
>目的語が定冠詞であるか不定冠詞であるかによって動詞の活用が異なってくる
ひえーー!! そんな規則があるなんて。。
世界って広いのねえ。。。
フィンランド語はですね、そもそも冠詞自体が無いのです。
すっきりしていて素敵でしょ。
(ロシア語にも無いけどね。)
なのに、名詞が単数か複数かということだけは区別するようです。そんなことわざわざしなくてもいいのにねえ。

