英国王 給仕人に乾杯!
2009年 02月 12日
年明けにこの映画を知って「これだ!」と思ったのですが、あまりにも地味なもので、その後すっかり存在を忘れてしまっていたのです。某映画レビューサイトで紹介されているのを見た瞬間、「あっ!」と思い出して観てきました。
こういうときは、ラッキーマンデーなんかより、水曜日が祝日になるほうがありがたい。
とても面白かったです。
第二次世界大戦前後のチェコで、億万長者になる夢を持って給仕人稼業に励む主人公。
これが決して立派な人間でない。そこがいい。
こういう歴史ものとしては、「宮廷画家ゴヤは見た」があります。
あれは異端審問がメインテーマで、その犠牲になった女性にスポットが当たりやすいけれど、ほんとうの主役は彼女ではなくて、彼女に関わったある男性なのです。(でもゴヤじゃありません。)
その男性に似ている・・・とは全然言えないけれど、共通するところがあります。
大義とか正義に殉じる人とは対極にあって、あくまでも自分の幸せのために生きようとする、ごく普通の人。偉くない。わが身かわいさが先にたつ。でもたいして罪はないんです。まあいいじゃん、そのぐらい許してやってよ、っていう感じの人。(「ゴヤ」に出てくる彼の場合は普通の人とは言えないし、同義的に罪人です。重罪人。)
そんな人の人生が二転三転する。
ただ、「ゴヤ」と雰囲気が180度違う。こっちはコメディーです。大人のためのね。良い子は観てはいけません。
面白うてやがてしみじみ。でも「じめじめ」ではない。からっとしている。そこがいい。
この映画の公式サイトはこちら
ところで都内で上映しているのは日比谷シャンテ1館のみなのですが、この映画館には問題あり。
第1回上映の30分前に着いたら、窓口までたどりつくのに10分以上かかりました。
それはまあいいんです。
でもそのあと、2階まで上がるのにエレベーターを10分待たされました。2階なんて、エレベーターでなくてもいいのに、階段を使わせてくれないんです。
しかも2階に着くと、エレベーターを出てすぐのところで切符をもぎる。
だから客はおりたくてもおりられなくて、心ならずもエレベーターをストップさせてしまうことになる・・・。
何らかの改善策を講じていただきたいです(怒)
まずは言語ネタ。
チェコに旅行して、覚えたチェコ語が「アホイ(こんにちは)」と「フラーブニー・ナードラジー(中央駅)」「イエデンスキ(切符)」だけだった私です(苦笑)
この映画を見て(正確には「聞いて」ですが)、ロシア語とはまったく違う響きだということを認識。重厚なロシア語と違って、とても明るいんです。
でもやっぱりスラブ系言語だから、ロシア語と共通する語彙があるのだということがちょっぴりだけど聴き取れました♪
お次は地理ネタ。
主人公の恋人はドイツ語ネイティブなので、ドイツからやってきたかと思ってしまうかもしれないけれど、彼女の出身地・ヘプはチェコの町なのです。
ドイツ国境の目と鼻の先の、とてもきれいな町です。
チェコ領内だけれど、昔からドイツ人が多く住んでいた、ズデーデン地方。
だから「ここはもともとドイツ領であるべきだった」とヒトラーが難癖つけてぶんどってしまったわけです。
ということを書こうと思って、ガイドブックをつくづく見なおしてみると、カルロヴィ・ヴァリとマリーアンスケー・ラーズニエという、チェコの誇る2大高級温泉地は両方ともそのすぐそば。
だからそれぞれ「カールスバート」「マリーエンバート」というドイツ名を持っているわけなんですな。
ヒトラーがズデーデン地方を欲しがったのも、こういうゴージャスな町があったからなんじゃないか、、とか邪推したくなってしまいました(笑)
by foggykaoru | 2009-02-12 20:53 | 西洋史関連 | Trackback(2) | Comments(12)

主演イヴァン・バルネフ、監督がイジー・メンツェル。といっても全く知りません。実は昨年からずっと観たいと思いつつも、シャンテシネは中々足が向かず、ポイントカードも使えないのでDVDまで待とうと決めていた作品です。最近シャンテシネがTOHOシネマズ・シャンテになったため、ここぞとばかりにフリーパスポートを握り締め突撃してきました。(笑)... more

「Obsluhoval jsem anglického krále」...aka「I Served the King of England」2006 チェコ・リバブリック/スロヴァキア チェコ・プラハを舞台に、涙と笑いのコメディ・ドラマ。 青年期のヤン・ジーチェにイヴァン・バルネフ。 老年期のヤン・ジーチェにオルドジフ・カイゼル。 リーザに「ベルリン、僕らの革命/2004」「白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々/2005」のユリア・イェンチ。 ヴァルデンに「スイート・スイート・...... more

「マリーエンバートの悲歌」とかいう詩のタイトルだけ知ってる、というのは知ってる内に入りませんね(笑)。

ですからヒットラーが欲しかったのだと思います
機関銃は世界でもトップクラス
戦車はドイツ製のを上回る性能を持っていました
敵に利用される前に占領する必要があったのだと思います
イギリス人の執事は「完璧」だなんて評価を聞いた事がありますが…給仕は人間的なんですね

英国王は出てこないんですね。乾杯だから出てこなくてもいっこうにかまわないけれど、うっかり期待する人はいそう(私も)。
マリエンバードは、『去年マリエンバードで』という映画のイメージで、何となくフランス関係の地名かと思っていました。バードはbad=bathのドイツ語だったのね。
温泉欲しさっていうのは冗談です。そう思いたくなってしまったということで。
チェコは先進地域だったんですよね。繊細なボヘミアングラスが作れたんだし。
で、給仕人とは言ってもイギリス人じゃないんです。
この映画にはイギリス人は一切出てこないんで。
ちょっと文面を書きなおしておきました。
出るときは階段から降りられたんです。
どうせ1回目で、人が交差するわけじゃなかったんだから、階段の口をあけておいてくれればあんなにエレベーター前で混雑したところに立ちんぼする必要はなかったんですよ。
混雑したときにどうしたらいいのか、気のきく人がいないということです。
タイトルは、、、たぶん誤解されることを狙っているんじゃないかと(笑)
ようこそ♪
趣味が似ているって、、、まさか指輪物語ではないですよね(爆)
私はヨーロッパ系の映画が好きで、このブログにもそういう映画を取り上げることが多いんですが、観た映画全部を書いているわけじゃないんです。
歴史と言語について語れる、あるいは語りたくなったものに絞っているので。
実はアメコミ原作ものとか、ディズニーとかも観てたりして(笑)
この映画、私もこんな「お子様厳禁」のコメディータッチだとは思っていなかったので、驚きでした。
TBとコメントありがとうございました!
この作品は涙と笑いの心温まる素敵な映画でお気に入りの一作となりました。チェコの監督がこんなに粋な映画を作るなんて感動でしたわ。
日比谷シャンテはTOHOシネマズに変わりましたが上映作品も変わるのでしょうかしら?今迄のように地味な映画を公開して欲しいですわ。
わざわざのお越し、ありがとうございます。
>粋
まさにそのとおり!
この映画を一言で表すならそれですね。
この監督の他の作品を観ている人に言わせると、「いかにも彼らしい」映画なのだそうですね。

正直、如何にもなチェコ映画だと思ってました...そして、多分そうなのだろうな、という予感のもとに。
如何にも・・・なのかどうかはわからないけれど、感想をお聞きしたいです♪