とびきり哀しいスコットランド史
2009年 04月 04日
原題は"Scotland bloody Scotland"なので、「哀しい」というより「血みどろ」なのだけれど、皮肉っぽいユーモアたっぷりで、結果的には、とても哀しい。
たとえば、スコットランド史上初のまともな君主・ジェームズ1世は、人質として少年期をイングランドで過ごした。
それというのも、兄デーヴィッドが愚行を繰り返し、怒った貴族にはむかわれ、城で餓死させられた。恐れおののいた父ロバート3世が次男のジェームズをフランスに逃がそうとしたら、なんとイングランドの海賊に捕えられてしまったのである。
ジェームズが長じて国王になったときには、それまでのスコットランド王にはない知識と教養を備えていた。
なにしろイングランドで育ったから。
哀しい・・・
また、スコットランドの真の王たる資格は「非業の死を遂げること」なのだそうだ。
つまり、生きている間は真の王なのかどうか、わからないということになる。
そんなのおかしいじゃん!と思う人や、真面目に勉強をしたい人にはこの本は向かない。
けれど、スコットランド旅行前にちょこっと歴史に触れておきたい、という程度の人にはちょうどいい。
個人的には「ピクト人」という言葉が何回も出てくることと、「バノックバーンの戦い」に章が割かれていることが嬉しかった。
さらに、「ダリエン計画」というものがあったことを知った。
これは、1695-1700年の、パナマのダリエンにスコットランドの植民地と貨物の集散所を作ろうという計画。(結果は失敗だった。) 当時の英国人にとって「ダリエン」という地名はかなり親しいものだったということが推察される。
こんな記述もある。
ハイランドや辺境の島々の住民は部外者であり続けた。それぞれが部族の長の指揮下にあり、地形的な条件やその凶暴な戦いぶりのおかげで、社会的、言語的、そして文化的に独自の社会体制を営んできた。
この文化は1745年のジャコバイトの乱(名誉革命で追い出された英国王ジェームズ2世(=スコットランド王としてはジェームズ7世)の息子を王位につけようとした)とともに消え去ったのだそうだ。
でも、20世紀になってもまだ余韻は残っていたのです。「シロクマ号となぞの鳥」を読むとわかります(爆)
この本に関する情報はこちら
by foggykaoru | 2009-04-04 20:13 | 西洋史関連 | Trackback | Comments(13)



それにしてもローマ帝国の時代から近世に至るまで基本的に変わっていないんですね
勇猛果敢な別世界の住人
まともに統治すれば非業の死?がまっているんですね

出た時に買って読んだきりなので、内容は全然覚えていないのですが(笑)
「まともに統治すれば」というわけじゃないみたいです。
ほとんど誰もまともに統治しなかったんです。
ただ、スコットランド王にふさわしく「非業の死」を遂げさえすれば、「真の王」になる、、、という、この著者の皮肉です。



入れ墨や、記号が、いろいろ語ってくれて、
想像の世界を広げてくれます。。。(夢見がち....)
ついでに、kiri:の本業(生業?)も
新しいピクト(グラム)を作り出したりしてるので、
ときどき、チーフにケルトちっくなの提出してみると
すかさず却下されてまする。。。(爆...)
いつか、ピクト石(絵文字板)を巡る旅、
のんびり行ってみたいもんです。。。はい。。。(笑)