君のためなら千回でも
2009年 05月 16日
著者はカーレド・ホッセイニという、アフガニスタン生まれで在米の作家。
この小説が映画化されたことを、うかつにも、あとがきを読むまで知らなかった。
アフガニスタンの大成功者ババを父に持つ少年アミールと、その家付き召使アリの息子ハッサンの、「友情」という単純なくくりでは説明しきれない交流。少年の心の屈折。やがてソ連がアフガン侵攻を開始。人々の日々の暮らしが引き裂かれる。そして数十年後、タリバンの支配する時代がやってくる。日本のNPOのメンバーが不幸にあったことで耳馴染みになってしまったペシャワールという地名も登場する。
面白い。読み終わるまでに何度も泣いた。
この作品の最大の魅力はババの人物像だと思う。決して完全無欠な人ではないけれど、いや、完全無欠でないからこそ、魅力的なのだ。
そしてアフガンの民族対立や宗教問題など、教科書で習ってもすぐに忘れてしまうが、こういう本を感動しながら読むと、心の中に刻印されたように残る。文学の力は偉大だ。
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by foggykaoru | 2009-05-16 15:49 | 普通の小説 | Trackback | Comments(4)
ホッセイニのもう1つの作品「千の輝く太陽」の方を読みました。こちらも名作です。ただ、つらい。最後に希望の種子があるけれど、やっぱりつらい。ほとんど痛みに近い感覚を感じました。
そして私はこの本で初めて、アフガニスタンという国を、タリバーンという集団を、タリバーン支配下に生きる女性たちを、初めて身近に感じることができました。文学の力とは、こういうものなのだな、と思いました。
>最後に希望の種子があるけれど、やっぱりつらい。
この作品もまったく同じです。
ソ連侵攻以前は、問題がなかったわけではないけれど、それなりに折り合っていた国が、めちゃくちゃになってしまったのですよね。。。
「生きのびるために」 デボラ・エリス著 さえら書房
前職場の小学3年生の読書家の女の子が、「一番好きな本」と言いきって、強く周りに勧めていたくらい、読みやすくて面白い児童書です。
著者が現地で取材して書いた、ということで、かなりノンフィクション性の高い作品です。
図書館で どうぞ。