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ジョセフィン・テイ著「時の娘」(早川書房)

大変面白く読みました。よくできた推理小説です。
同時に、限りなく歴史小説でもあります。怪我をして、病院のベッドに縛り付けられた刑事が、暇つぶしに歴史書を手に取り、かのリチャード三世の実像を明らかにしていく、という話なのですから。ヨーロッパ史と「安楽椅子の探偵」が好きな私にはツボでした。

「歴史がいかにして作られるか」ということがよくわかり、非常に刺激的な内容なのですが、リチャード三世に関する一般に知られたイメージを前もって持っていないと、面白さが半減することでしょう。とは言っても、シェークスピアの「リチャード三世」をさえ読んで(または観て)あれば十分。私なんざ、遙か昔、大学でシェー研の公演を一度観たきりです。



この作品自体は気に入ったのですが、翻訳は気に入りませんでした。

「バーガンディー公チャールズ」はいただけません。
ぜひ「ブルゴーニュ公シャルル」にしてください。
「ブリタニー」という箇所もありました。
もちろん「ブルターニュ」に直さなくては。
呆れたのは「偉人ロレンツォ」。
そりゃ「ロレンツォ・イル・マニーフィコ」でしょう!

どうやらこの翻訳者は、西洋史はお得意ではないようです…

と思って「訳者あとがき」を読んだら、この作品を最初に訳したのは村崎敏郎という人で、私が読んだのは小泉喜美子という人による改訳版でした。

…いったいどこを直したの?

冒頭の、アンドレ・モロワによる薔薇戦争概説の部分だけは、きちんと「ブルターニュ」と訳してあります。モロワはフランス人ですけれど、まさかモロワが書いたフランス語の原文を訳したわけではないでしょう。どうしてここだけちゃんと訳せたのか、とても不思議です。

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by foggykaoru | 2005-03-18 18:23 | 推理小説

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