幸せはシャンソニア劇場から
2009年 10月 03日
フランスで大ヒットした「コーラス」(日本公開2005年)のスタッフとキャストが作った心温まる映画です。ミュージカルとまでは言えないけれど、音楽がちりばめられていて、歌好きにはたまりません。CDを衝動買いしてしました。
「コーラス」のときにはちっちゃな坊やだったマクサンスくんがすっかり成長して、父親思いのしっかりした少年を演じているのには感慨無量でした。将来、どんな役者になるのか楽しみです。
この映画の公式サイトはこちら
で、このブログは映画のレビューを書くのが趣旨ではないので、この映画をネタにフランス語とフランス史のお勉強。
この映画の原題は「Faubourg 36」
faubourgは「城壁の外の地域」。都市が城壁よりも大きくなって、はみ出したところです。
字幕では「下町」と訳していました。庶民的な地域なので、雰囲気的には合ってます。でも別に土地が低いわけじゃない。というか、このfaubourgは高台に位置していて、右手前方にエッフェル塔が見える。明らかにモンマルトルを意識してます(けど、モンマルトルではない)。
で、この映画にもナチス(の仲間)が出てくるのでした。
「36」というのは、てっきり番地のことかと思ったら、1936年を意味していたのです。
フランスが大恐慌に襲われ、隣国ドイツではヒットラー率いるナチスが台頭する。
この映画に登場するのは親ナチスの政党らしき「SOC」。
これが気になって、フランス語版wikipediaを調べてみました。
「フランスのファシズム」のさわりだけをご紹介します。
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1930年代の代表的なファシズム政党(注:( )内は私訳です)
・Solidarité française(フランスの連帯):1933-1936解散
・マルセル・ビュカールのFrancisme(フランシスム=フランスとファシズムを合わせた造語と思われます):1933-1936解散、1938年にParti unitaire d’Action sociale et nationale(社会国家行動統一党)となる
・ジャック・ドリオのParti populaire français(フランス人民党): 1936-1944
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これらの政党外にも、親ファシストの小会派はたくさんありますが、略称が「SOC」になりそうなのは見当たりません。おそらく架空の団体なのでしょう。
それにしても、1936年に2つのファシズム政党が解散し、新たな政党が生まれているのですね。このあたりのフランス史はほとんど何も知らないのですが、この年に人民戦線内閣が生まれたことが、ファシストたちを刺激したのだろうということは想像できます。
[追記]フランスのこの時代の政治状況についての詳細な解説を見つけました。こちらです。
by foggykaoru | 2009-10-03 22:47 | 西洋史関連 | Trackback(2) | Comments(7)

「Faubourg 36」...aka 「Paris 36」 2008 フランス/ドイツ/チェコリパブリック ピゴワルに「コーラス/2004」「運命に逆らったシチリアの少女/2008」のジェラール・ジュニョ。 ミルーに「ロング・エンゲージメント/2004」のクロヴィス・コルニアック。 ジャッキーに「コーラス」のカド・メラッド。 ドゥースにノラ・アルネゼデール。 ジョジョに「コーラス」のマクサンス・ペラン。 監督、脚本に「コーラス」のクリストフ・バラティエ。 1936年、パリ。下町...... more

パリの下町にはアコーディオンの調べがよく似合う。ノスタルジックな風合いのあたたか人情ドラマ。 1936年、パリ郊外の下町にあるミュージックホール「シャンソニア劇場」は、経営不振で閉鎖となったが、長年ここで働いてきたピゴワルは、仲間とともに劇場の再建に乗り出す。大好きな『コーラス』 の監督作品であり、音楽賞、撮影賞、美術賞等でセザール賞にノミネートされていたこともあって楽しみにしていた本作。音楽で彩られた劇場が舞台の映画なんて、とにかくワクワクしちゃうんだけど、それだけじゃなくて、1930年代のパ...... more

アメリカの財界は反共・親ナチの巣窟状態だったとか?
偏狭な選民思想による民族主義は麻薬ですから

それ、かつて京都まで見に行こうかと計画したこともある映画で……
DVD出てないのかな…あ、あった中古で2,500円くらいか。
むむ〜見たことない映画に払うには微妙な金額だ。
でも見たい!

TBありがとうございます。
36って番地だとばかり思っていましたが36年だったのですか?そういや1936年舞台でしたね。
ベタなストーリーながら楽しみました。たまにシャンソンも良いですね。
こちらこそありがとうございます。
黙ってTBして失礼しました。
ベタだけど、なかなかうまいですよね。
特にラストシーン。下手にたくさんの人を登場させなかったあたり、余韻があって気に入りました。