カペー王朝
2009年 10月 17日
この人の小説をせっせと読んでいる友人がいるのだが、読むたびに「この人の小説は気に食わない」と愚痴をこぼしにくる。
だったら読まなきゃいいのにと思うのだが、「だって、フランスの歴史の勉強になるし」と言う。
それは確かに大きなメリットだわね。
でも私は読まないでおこう。
と思っていたら、ついに書いてくれた。まともな歴史本を。
そう、とてもまともで、素人向けにとてもよくまとまっていて、面白い本です。
素人だけどフランス史に興味があるという人に自信を持ってお薦めします。
佐藤さんは、もともとフランス史専攻で博士課程まで修了した人。
ほんとうに書きたかったのはこういう本だったのでは。
この「フランス王朝史」、続きを楽しみにしてまっせ。
以下は備忘録。
「987年、ユーグ・カペー、フランス国王になる。カペー朝の始まり。」
高校の世界史でこう習った。
でも、ここで唐突に登場するユーグって誰?とずっと思っていたのである。
その謎がついに解けた。
シャルルマーニュのカロリング朝がどんどん衰退して、ついに後継者が絶えてしまったので、「どうするべ」と諸侯が集まって、選挙でユーグが国王になった。
実はユーグよりも、そのおやじさんのほうが、断然偉かった。大ユーグと呼ばれるぐらい。
大ユーグだって、国王になるチャンスはいくらでもあった。
でも、そんなものになっても、実益はほとんどない。国王というのは教会できちんと戴冠式をしなくちゃならなくて、それによって、神の後ろ盾を得て、「王の手は神の手」になったりもするのだが、それはローマ教会といううるさい舅を抱えることをも意味する。めんどくさい。それよりも、神輿をかついで、陰の実力者になってるほうが得。(日本でも、無力化した将軍をかついだりしたことはしょっちゅうあるし、自民党が「総理は軽いほうが楽」みたいな雰囲気だったことは記憶に新しい。)
だから、大ユーグは決して国王になんかならなかった。
ところが、息子ユーグは凡庸だったので、ついうかうかと神輿に乗ってしまったんだそうだ。
この一族、もともとはロベール家だった。
カペーというのはニックネームなんだそうだ。「合羽」なんですって。「合羽のユーグ」。軽いね。
ユーグ以降、しばらくの間、フランス王家は周囲の諸侯とどっこいどっこい、というか、下手をしたら周囲の諸侯よりも弱小だったかもしれないが、とにかく代々長生きした。
そして、国王が健在なうちに、息子を共同統治者として戴冠させて、なんとかかんとか存続していった。
国王の力が上向きになってきたのはルイ6世ごろから。
その息子ルイ7世も頑張った。最初の妻と離婚した後、別人のようにしたたかになった。
最初の妻とは、英国王ヘンリー2世のもとに走ったアリエノール・ダキテーヌ。
ルイ7世の息子フィリップ2世のとき、ついに花開く。
彼はもちろん名君だったんだろうけれど、相手がよかったんじゃないかしら。と前から思っていたのだが、今回もそう思った。
だって、相手は武人だけど政治力はないチャード、その後は、イギリス人も匙を投げたジョンだし。
フィリップ2世の後は
ルイ8世
ルイ9世(聖ルイ)
フィリップ3世
フィリップ4世(美顔王)
ルイ9世とフィリップ4世は有名だけれど、その間のルイ8世とフィリップ3世も、そこそこ有能な国王だったらしい。
ルイ8世が戦いの最中に命を落としたとき、ルイ9世はほんの子供。
彼が成人するまで、母親が猛烈に頑張った。
結婚してからも、この母親が鬱陶しいので、美しい妻を連れて海外旅行にでかけることにした。
「お母さん、留守をよろしく」と頼んで。
その海外旅行こそが、十字軍だった。
そしてその功績により、彼は聖人にまでなってしまった。
フィリップ4世。
背が高くて顔がかっこよかったのは事実だけど、彼の内面は謎に満ちているんだそうだ。
「暗愚だった」という説さえあるとか。
彼の後、国王がころころ変わり、カペー朝が急速に弱体化していくのは、テンプル騎士団の呪いのせいだ、なんて説もあるんだとか。
そうだ、これも忘れちゃいけない。
英語の「スティーヴン」という名前は、フランス語では「エティエンヌ」なのだそうだ。
『修道士カドフェル』にしょっちゅう登場する「スティーヴン」は「ブーローニュ伯エティエンウ・ド・ブロワ」。
この本に関する情報はこちら
by foggykaoru | 2009-10-17 21:16 | 西洋史関連 | Trackback | Comments(6)
ポルトガル語の"カッパ"に似てるね
(っつーかラテン語の仲間だからだね。。。aha...)

まともな本を書き始めたな~~と思い始めた頃に、忙しくなって積読になっちゃってました。
直木賞を取って売れ始めた頃から、お色気シーンがぐぐっと減って読みやすくなったんですよね。
私も、あぁ、本当に書きたい物を書き始めたんだなと思っていました。
あ、ごめん。
「合羽のカペー」じゃなくて、「合羽のユーグ」の間違い。直します。
>ポルトガル語の"カッパ"に似てるね
そう。同じ語源だと、佐藤さんも書いてます(^^;

カペーのkappa・・・じゃ、合羽河童(爆)
佐藤賢一氏の小説は、私も毎回うなりながら読み(お色気シーン以外もピピっとくるものが無い)、最近はとんとご無沙汰してます。ひさしぶりに読もうかなという気持ちになりました。
kappa→河童→合羽→カペー→ユーグ→めざせ大ユーグ
ってことでいかが?(爆)
これは小説じゃないですよ。
私は佐藤氏の小説が面白いと言っているわけじゃないので、誤解無きよう(笑)