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「ヨーロッパの舌はどう変わったか --- 十九世紀食卓革命」

ヨーロッパのどこを旅していても、主食のパン並みに出てくる食材があります。
それはジャガイモ。
イギリス料理(?)の代表といえばフィッシュ&チップス。
フランスの一番お手軽な定食はビフテック&フリット(ステーキとフライドポテト)。
ベルギーのガイドブックを見れば、「この国のフリットは最高に美味しい」と書いてある。
英国の属国だったアイルランドでは、長いこと人々は実質的にジャガイモで命をつないでいた。そのため、19世紀には、ジャガイモの疫病が原因で、史上まれに見る大飢饉に襲われた。
でも、ジャガイモはアメリカ大陸原産です。コロンブスが持ちかえるまで、ヨーロッパには存在しなかった。

イタリア料理といえばトマト。
トマトの無いイタリア料理なんて、クリ○プを入れないコーヒーみたいなもの。(喩えが古すぎて若い方はおわかりにならないでしょうね)
でも、このトマトもアメリカ大陸原産。

コロンブス以前のヨーロッパ人は、いったい何を食べていたのでしょう?

そんな長年の疑問に対する答えを求めて、この本を読んだのです。

中世ヨーロッパの典型的な食事は「大麦かカラス麦をあらびきにした粉と、野菜、ごく少量の豚肉のごった煮」だったそうです。

意外なことに、中世は、メニューこそ単調だったけれど、摂取カロリーはそこそこ多かった。ヨーロッパが最大の飢餓に直面したのは、都市化と工業化の進んだ18世紀から19世紀にかけてだった。その後、新しい食料生産システムが構築されるにつれ、ヨーロッパ人の食生活はぐんぐん豊かになっていきます。

変化したのは食事の中身だけではありません。

1人1人の取り皿というものが出現したのはかなり後のことで、それまでは鍋をどーんとテーブルの真ん中に置き、家族共用のスプーンですすっていた。だから、テーブルの上は、鍋から各人まで、こぼれたスープの筋が放射状に広がっている!という状態が、国によっては20世紀前半まで続いていた!!

今、我々がイメージとして抱いている「ヨーロッパ的な食生活」は、ごく最近生まれたものなのです。

まあ、考えてみれば、パリのあの美しい町並みだって、19世紀末の都市改造の産物で、それ以前のパリは相当ごみごみしていたらしいし。
食生活もしかり、ということなのでしょう。



この本に関する情報はこちら

by foggykaoru | 2005-03-30 19:50 | 西洋史関連 | Trackback | Comments(0)

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