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ケストナー

クラウス・コードン著。
副題は「ナチスに抵抗し続けた作家」
原題「Die Zeit ist Kaputt」の意味は「時(時代)は壊れた」
これはナチス政権下にケストナーが製作に携わった映画「ミュンヒハウゼン」の中の台詞。
ナチスの検閲をかいくぐることのできるギリギリの線を狙って彼が書いた、渾身のひとことである。

読み終わってから背表紙に「ドイツ児童文学賞受賞」と書いてあるのに気づいた。
どうりで字が大きいし、注がやたらに詳しいわけだ。字が大きいのはありがたい(笑)
でもこの本は子どもだけのものにしておくのはもったいない。良書である。
私はケストナーの生涯はそこそこ知っているので、さほど目新しいことはなかった。それでも充足感を覚えた。そのぐらい良書である。

時代の目撃者たろうとしたケストナー。
しかし、戦後になってもナチス時代のことを多くは書かなかった。
というより、書けなかったらしい。
極限まで張りつめた日々が長く続きすぎたために、言葉として綴るということができなくなった、ということのようだ。
あふれ出る言葉を軽業師のように操った、あのケストナーでさえも。

1999年刊。もうユーズドでしか買えないようです。
偕成社刊。だからやっぱり児童書なのです。
でも最近の日本の子どもはケストナーなんて知らないよ。
だから児童書として出すよりも、子どものときにケストナーに親しんだおじさん・おばさん向けに出したほうが売れたんじゃないかな?


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ケストナーの生まれ故郷ドレスデンには「ケストナー博物館」があります。
どんなところなのか興味のある方は、メインサイトの「児童文学の旅」へどうぞ。

by foggykaoru | 2010-02-08 20:40 | 児童書関連 | Trackback | Comments(2)

Commented by ケルン at 2010-02-09 00:02 x
この本、出たころに読みました。本自体も大きめで、欄外の注が詳しかったと記憶しています。
 ケストナーは児童文学作家としてだけとらえてはいけない作家ですね。喜劇(?でしたっけ)の台本もたくさん書いていたし、批評家としても大活躍していたんですよね。・・・という私も、『ファービアン』をなんとか読んだものの、エネルギーの強さ、皮肉の濃さに、体力を吸い取られたという感があり、再読はまだしていません。

それと、ケストナーの詩を原文で味わえたらどんなに良いだろうと思います。
Commented by foggykaoru at 2010-02-09 20:12
ケルンさん。
やっぱりもう読んでいらっしゃるんですね。
>本自体も大きめで
だから重いんです。
通勤電車では読めません。ランサム全集と同じ(苦笑)

>ケストナーは児童文学作家としてだけとらえてはいけない作家
ケストナー博物館の人もそう力説していたなあと、読みながら思い出しました。
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