人気ブログランキング |

セイル・ホー!--若き日の帆船生活--

成山堂書店という、どうやら船が得意らしい出版社の本。
著者のサー・ジェームズ・ビセットは船乗りとして功成り名遂げた人。
なにしろ第二次世界大戦下、クイーン・メアリー号とクイーン・エリザベス号を戦禍から守ったことにより、「サー」の称号を受けたのだから。

1883年生まれの彼は、小さいときから船乗りに憧れ、家族の反対を押し切って、1898年、貨物帆船のアプレンティス(見習い)となり、1904年まで帆船で世界を回った。そのときの思い出の記である。

カバーに「日本図書館協会・全国学校図書館協議会選定図書」とあるけれど、こんな渋い本、読む子がいるのかいな?
月に1回行く古本屋で、期間限定の「冒険コーナー」の棚で見つけたのだが、正直、1400円は高いと思った。(定価は2200円) ランサムで小帆船を知り、マスター&コマンダーで19世紀の大型帆船に多少なじんだという経験があるからこそ読めたという感じ。そうでなければ途中で挫折したかも・・・というより、そうでなければ手に取ることさえなかっただろう。
中を開けば、なんと横書き。ところどころに英語表記があるため。
その上、句読点として「、」ではなくて「,」が使われているのだ。おかしいんじゃない? 日本語の本なのに。

文句ばかり並べたてたけれど、つまらなかったわけではない。
渋いけれど、興味深い。5段階で4点。

たとえば
帆船の息の根を止めたのは、スエズ・パナマ2大運河の開通なのだそうだ。
帆船は運河では曳航料を払わなければならないので、わりが合わなくなったのだ。
パナマ運河がなかったころ、南米南端のホーン岬を回るのは、むしろ帆船のほうが有利だった。汽船は燃料補給をしなくてはならないのだが、あのあたりには給油できる港町がなかったのである。

帆船はいつも直進できるわけではない(向かい風だと間切らなくちゃならない)し、なぎになるとお手上げ。だから時間がかかる。というのは嘘ではないが、実は港に入ってからもえらく時間がかかった。
港湾施設が未発達だから、貨物を降ろしたり積み込んだりするのに手間取った。
下手をすると、港のすぐ外で延々何週間(何カ月?)も待たされたり。
帆船は縦長だから何かを積んでいないとバランスが悪い。
だから、積み荷がないときは砂利をバラストとして積みこまなくてはならない。
これも乗組員の仕事。来る日も来る日も砂利を積みこむ。読んでるだけでへとへとになりそう。

港に着くと、船乗りは町で羽を伸ばす。
何カ月も船で不自由な生活を送っていたのだからそりゃ遊びたいでしょうよ。
他にもっとよさそうな仕事があれば、もう船に帰ってこない。
乗組員が足りなくなった船は、「誘拐業者」に頼む。この業者は町で遊んでいる船乗りに麻薬を飲ませ、意識を失っている間に、船に乗せてしまう。意識が戻ったときには海の上なので、どうすることもできない。。。

こんな生活、家族が反対するのも無理ない。
帆走中は気の休まるときのない長時間労働。
しょっちゅう身体は濡れているし、口にできるのは腐りかけの臭い水、臭い肉だけ。
ライムジュースのおかげで壊血病にはならないですむようになったけれど、それでも長い航海の末にはおできだらけになったり、船長がケチだと飢えに苦しむことすらある。
私は嫌だなこんな生活。絶対に「陸(おか)」で暮らすほうがいい。

でも、船乗りにあこがれる気持ちもわからないでもない。
果てしない海の真ん中で風を読み、船を走らせる快感は、一度味わったら忘れられないのだろう。

今調べたらランサムは1894年生まれ。
著者と同じく、小さいときから海に出たかったのかな。



この本に関する情報はこちら

by foggykaoru | 2010-05-14 22:06 | 児童書関連

<< 「のだめ」4回目・・・ピアノ、... 読んで楽しむのだめカンタービレ... >>