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拍手のルール

副題は「秘伝クラシック鑑賞術」
「のだめ」の音楽監修してる茂木大輔氏の本。

最近「ピアノモード」になっているので、音楽関連の本を読みたくて本屋に行ったのですが、つくづく、音楽関連の本には大きなハンデがあるんだなあと思いました。
なにしろ、音楽そのものを知らないと、読んでもわからない。
楽曲に関する本は、その曲を知らなければ面白くもなんともない。
美術関連の本だったら、写真が載っていれば(たとえ白黒でも、たとえ小さくても)、それを見ながら読めば、一応はわかる。
でも、音楽を聴きながら読むのは、けっこう高いハードルです。
通勤電車では音楽聴けない。いや、聴けないわけじゃないけれど、そのためにはそれなりの装備が必要で、私はそこまでする気はない。
音源無しでもわかるのは、音楽の通史とか、音楽家の伝記とか、ごく限られた内容のもののみ。

だからこの本を選んだわけ。
タイトルを観て、「曲が終わったとたんにブラボーと大声出してやたら拍手するもんじゃないってことぐらいなら、知ってるんだけどなあ」と思ったのですが、読んでみたら「拍手」関連は3分の1ぐらい。
他の章も楽しく読めました。
っていうか、他の章のほうが面白かったかも?

読んでいて、すーっと呑み込めたのは、「クラシックの中のクラシック?」という項。
ハイドン、モーツアルト、そしてベートーベンへの流れの説明が、実に気持ち良く、心にすとんと落ちました。
小さい頃、うんざりするほどハイドンやモーツアルトの「ドソミソ」という伴奏の曲を弾かされたせいかもしれません。

「指揮者に必要な条件」というのも興味深かったです。
茂木氏が挙げているのは9つ。
そのうちの7つを、千秋はすでにクリアしていたんだなあと。
残る2つ、「指揮法」と「経験」をSオケとR★Sオケで学び、ヨーロッパへ雄飛していったのです。
「語学力」というのも条件のひとつとして挙げられています。
そうだよね、フランスのオケとネイティブ並みのフランス語でコミュニケーションできたというのは、コンクール優勝の要因の一つだろうなあ。
最近のフランス人は昔みたいに「フランス語を話さない人は人間ではない」なんて感じはないけれど、フランス語ができる人のほうが好感度ぐーんとアップなのは間違いない。

「拍手のお国柄の違い」でウケたのは、「パリは客席がうるさい」というところ。

クラシック好きの友人が、フランス人のマダム(←在日40年で日本語ペラペラ)と音楽会に行ったときのことです。
演奏家の調子がいまひとつだった。
そしたら、そのマダムったら、周囲が(なにしろ日本人ばかりだから)とてもお行儀よく聴いているのに、しゃべるしゃべる。演奏中なのに。
友人は内心「マダム~、お願いだから黙ってよ~」と冷や汗かきながらも、「こうでなくちゃ演奏家は育たないんだな。日本人は甘すぎる」と、感銘を受けたんだそうです。

だから、千秋の「ボロボレロ」のとき、パリの客は黙って聴いてくれてなんかいなかったはずです。ほんとうはね(笑)


勢いで書いた感じの「読んで楽しむのだめカンタービレの音楽会」よりも、この本のほうが茂木氏の文章の良さが出ているんじゃないかな。


この本に関する情報はこちら

by foggykaoru | 2010-05-20 21:28 | エッセイ | Trackback | Comments(6)

Commented by ラッコ庵 at 2010-05-21 07:39
かおるさんのハマり方を見て、
「映画、見なくちゃ!」
と思ったラッコ庵です。
前編見てないけど、原作読んでるから大丈夫?

たしかに音楽関係はマンガも本も損ですねえ。
たとえばバレエマンガなら絵で見ることができるけど、こればっかりは・・・。
バイエルで挫折した私はピアノ弾ける人がうらやましいです。
Commented by foggykaoru at 2010-05-21 22:04
ラッコ庵さん。
あらー 原作読んでて、どうして映画観ないんですか?!
もちろん原作知ってれば、ぜんぜん問題ないです。
Commented by ケルン at 2010-05-22 01:21
>「語学力」というのも条件のひとつとして挙げられています。
>そうだよね、フランスのオケとネイティブ並みのフランス語でコミュニケーションできたというのは、コンクール優勝の要因の一つだろうなあ。

以下、受け売りなのですが、奏者とのコミュニケーション以外でも言語力は必要みたいです。

というのは、例えばドイツの曲なら、ドイツ語特有のリズム(例えば多くの単語は1音節目にアクセントがあるとか)が自然と底に流れていて、特に歌曲などでなくても、明らかに違うんだそうです。

指示を何語で、ということだと、日本人がヨーロッパに行く時は現地語が望ましいでしょうけれど、日本に来る海外からの指揮者は(N響とかで)ドイツ語や英語が多いみたいですね。日本にいても、ドイツ語と英語くらいはできたほうがいい、ということ?
Commented by foggykaoru at 2010-05-23 11:48
ケルンさん。
それはとってもよくわかります。
日本語のリズムって「津軽海峡・冬景色」タイプらしいですよ。
ぢつはフランス語で歌詞を書いて作曲(の真似ごと)をしたことがあるんですが、日本語を頭に置いたときとは、できた曲のリズムが違うと感じました。

音楽で使うボキャブラリーは(音楽用語でなくても)ある程度限られているのかもね。
だから、ものすごい語学力はなくても平気かもしれないけれど、外国人指揮者の指示がわかる程度の語学力は必要なんでしょうね。(ボディーランゲージもあるだろうけど)
Commented by ケルン at 2010-05-24 23:45
かおるさん、

もうご存じかもしれないけれど、音楽に関する本で、曲を知らなくても(知ってるに越したことないけれど)楽しめた本をいくつか思い出しました。

岩城宏之 『フィルハーモニーの風景』
岩城宏之 『森のうた』
芥川也寸志『ぷれりゅうど』
それと、中丸美繪 『嬉遊曲、鳴り止まず』 (評伝)も、読ませます(桐朋学園&サイトウ・キネン・フェスティバルに興味があればなおさら)。

裏話の類が載っているのは『フィルハーモニーの風景』だったと思いますが、私が、ヴィオラはおろか、オーケストラも交響曲もろくろく知らない頃に読んでも面白かったのは『森のうた』。ご参考までに。
Commented by foggykaoru at 2010-05-26 20:58
ケルンさん。
ごめん。またコメント見落としました。
いろいろ教えてくださってどうもありがとう。
せっかく音楽モードになっているのだから、このチャンスを逃さないようにしなくちゃ。
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