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たのしい川べ

ケネス・グレアム著。
英国児童文学の名作として知られるこの作品ですが、読んだのははるか昔に1度きり、しかも英語で読んだ、というアブノーマルな出会いでした。
実際のところ、読みこなせたという自信もなく、改めて読んだら自分がどう思うのかが、ずっと気になっていたのです。
今回、きちんと(?)日本語で読んで、ようやくこの作品の感想というものを語れる状態になりました。


渋いじゃん。これを面白がれるのは、もしかしたら大人のほうかも。
子どもが夢中になるのは「プーさん」のほうでしょう。

なにしろ登場人物、もとい、登場動物がイギリス人そのもの。
人(?)づきあいが悪いけれど、実はとても良い人(?)で、いざというときに頼りになるアナグマ。
ヒキガエルは地方のジェントリーとか呼ばれるような家のボンボンですね。
川ネズミがむちゃくちゃいい奴で。気のつかいかたがすごい。こういう気の使い方をするのは大人です。で、大人が読むと、ほろっときてしまう。
もちろんモグラも可愛い。っていうか、冒頭のモグラの行動の唐突さにびっくりです。ま、そうしないと物語が始まらないし、そこがいいんだけど。

彼らの行動規範は英国紳士のそれです。
見栄っ張りのヒキガエルはどのようにならねばならないのか。

旅ネズミの話をきいて、正気を失い、どこかにでかけたくなる川ネズミ。
普通はそこで旅にでかけるんです。そして物語が始まる。冒険が始まる。
でも、この物語ではそうはならない。
何よりも大切なのは「かくあるべきもの」だから。

でも、なによりも感じ入ったのは、石井桃子さんの訳文。
私のいちばんのお気に入りの章である「あかつきのパン笛」から引用します。

大きな半円をえがいた白いあわ、きらきら光る、青い水のもりあがり---大きな堰が、岸から岸までよどみの水をせきとめて、しずかな水面にうずを巻かせ、あわをたて、そのおごさかな、こころよいとどろきで、ほかのいっさいの物音をかき消していました。流れの中ほどに、きらきら光る堰の両腕にいだかれて、水ぎわにヤナギや、ハンの木を繁らせた小島が1つありました。えんりょがちに、はずかしそうに、そのくせ、いかにも意味ありげに、ベールのかげに、なにか大きなひみつをかくしているようすをしています。

こんな日本語が書ける翻訳者は、今の日本にはもはやいないんじゃないでしょうか。

by foggykaoru | 2011-02-16 20:27 | 児童書関連

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