Nodame cantabile vol.13(追記あり)
2012年 01月 07日
この巻はノエルの巻でして、個人的には良いタイミングでした。
リュカが歌うクリスマスの歌に関して、原注には「賛美歌第二編219番」と書いてあるだけですが、フランス語版にはわざわざ「19世紀中ごろに2人のフランス人によって作られた歌である」と書いてある。へえええ。二ノ宮さんはそういうこともちゃんと調べてるのね。
久しぶりに帰ってきた千秋に「ピアノを聴かせろ」と言われてのだめが「後日」と言います。これは「後日」であるところが、なんとものだめ的で笑わせるのですが、フランス語では「plus tard」(英語の「laiter」)で片づけられてます。意味は合ってるけど面白くない。こういうのが翻訳の限界というものなのでしょう。
エリーゼの「試合に勝って勝負に負けた」は「Tu as gagne une bataille, mais pas la guerre(あんたは戦いに勝ったけど、戦争には負けた」)。なるほど。これは大変面白い。
ちょっとまずいのはマジノ先生の「やっぱり恋をしなくては! 結婚していても! 忙しくても!」
フランス語に訳すときは、主語が必要になるわけですが、この場合は「人」ですよね。
「人は恋をしなくてはいけない!」
それなのに「私」にしています。うーん。主語は難しいよねえ。
明らかな間違いはこれ。
「若くて安くてパリ在住の指揮者」としてマルレの代振りをまかされた千秋がシャワーを浴びながら心の中で絶叫する「もう誰も信じられない!」→「Faites confiance aux autres apres ca=これからは(←この訳、自信ありません)他人を信用しなさい」
エリーゼの台詞だと誤解したから、わけがわかんなくなったのでしょう。話し手を正しく認識していないために泥沼にはまるというパターンはこれまでもたびたびありました。
がっ、、、
変だな。エリーゼは千秋に「tu」で話しているから、動詞は「faites」ではなくて「fais」になるはずなのに・・・ いったいこれは誰の台詞なんだろう? 翻訳者、混乱しまくってるようです・・・
まっそれよりも、オーボエ奏者の茂木(もぎ)さんの名前が、いつまでたっても「SHIGEKI」のままであることのほうを、問題にするべきなのかもしれません。
[1/9追記]
「試合に勝って勝負に負けた」のフランス語訳のもとになっているのは、「La France a perdu une bataille! Mais la France n'a pas perdu la guerre!(フランスは1つの戦いに負けた。しかし戦争に負けたわけではない)」なのだそうです。
これはフランスの英雄ドゴールの言葉とされています。
フランスは1940年にナチス・ドイツの攻撃を受け、あっさりと占領を許し、ペタンによる傀儡政権が樹立されます。当時将軍だったドゴールはロンドンに逃げ、英国首相チャーチルと会談。そしてBBCを通じてフランス国民に戦いの継続を呼びかけるのですが、そのときの演説の「要旨」がこの言葉なのです。
この言葉は1944年の英米連合軍によるノルマンディー上陸大作戦の際の上陸の地アロマンシュに建てられた碑に刻まれ、あたかもドゴールが言った言葉そのままかのように1人歩きしています。
(ゆきみさん、ありがとうございました!!)
・フランス語版のだめカンタービレに関する記事のインデックス
by foggykaoru | 2012-01-07 21:24 | マンガ | Trackback | Comments(7)

おお、ドゴールがそんなことを言っていたんですか!
勉強になるわ~
・・・いつ言ったの?
私はてっきり、英語でもバトルとウォーを使った同じような表現があるのかと思ってました。
>逆
「のだめ」にはそういう表現が多いですよね。
「人を憎んで罪を憎まず」とか。
あけましておめでとうございます。
あんまりまともな読書ブログでなくてゴメンナサイ。
たまには何かの参考になるのだったら、とても光栄です。
今年もどうぞよろしくお願いします♪

DEGAULE/bataille/guerreで検索できます。

「肉を切って、骨を切られる」とかかな?と連想してしまいました。