世界屠畜紀行
2012年 02月 03日
この人の名前は「東方見便録」で覚えた。
なんてスゴイ人なんだろう!!と感嘆して。
で、これは内澤さんが単独で世界各国の屠畜事情(彼女は「屠殺」という言葉を使わない)をルポしてまわってまとめた本。もともとは『部落解放』という雑誌の連載記事だった。
実際に見てまわった国の数は少ないけれど、中身はとても濃い。
もともと彼女は動物をつぶす場面を見ても怖いとか気持ち悪いとか感じたことがないそうで(やっぱりスゴイ人だ)、なぜ日本では差別と結びつくのだろう? 他の国はどうなってるの?という、個人的な好奇心から入っていく。
屠畜を汚い作業とみなしたり、動物愛護を声高に叫ぶ社会よりも、「食べるため」として明るくやっている社会のほうがいいな、と単純に思った。
そして、どうやら、そういう社会のほうが「命をいただいている」という、自然界に対する謙遜な態度があるみたい。
さらに彼女はイスラム圏が大得意で、イスラムのおやじとからむのが楽しみなのだそうだ。
うーん、私にはできないことだ。とっても羨ましい。
というわけで、イスラム世界の「犠牲祭」も間近で観察している。この世界では屠畜は日常的な行為だし、差別されない。(ただし、インドにおけるイスラム教徒の事情は微妙に違うそうだ。)イスラムで蔑まれるのは人の心を迷わせるダンサーなのだそうだ。ベリーダンスが好きで習っている日本女性は少なくないし、日本人のプロダンサーだっていることを思うと、非常に複雑な気分になる。
この本はかなりの部分を日本に割いているけれど、これがけっこう面白い。
東京の芝浦屠場。機械化も進んでいるけれど、職人芸が生きている。感動的。日本も捨てたもんじゃないと思った。
(ところで、日本の場合、子どものときに愛読した本にならって、自分でウサギの皮をはいで料理したいと思っても、皮つきのウサギは入手できないのである。数年前、動物愛護団体が「そんな残酷なことをしてはいけない」と文句つけたから、市場には皮をはいだウサギ肉しか出回らなくなった。こんな事情を知っているのは、日本広しと言えども、アーサー・ランサム・クラブの会員ぐらいだろう。)
文庫本だとイラストとそこに書き込まれた説明が小さくて見づらいのが難点。
若い人には大丈夫だろうけど(自爆)
インドネシアと沖縄に行きたくなった。
この本に関する情報はこちら
by foggykaoru | 2012-02-03 19:25 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(13)


ウサギの皮を剥ぐ…『スカラブ号の夏休み』ですね!ウサギを飼ってはどうでしょう。ペットフードではなく新鮮な野菜やアザミを与えたら肉もそれなりになるかも。でも、情移ってしまって難しいなあ。食べるとは命を頂くのだと泣きながら屠畜…
さすがに屠殺現場は見たことがないのですが、
解体前の牛の胴体とか、皮をはがれた牛の頭部とかを見ても
なんとも思わない子供だったのです(^^;)
そういえば小学校の裏道通学路に屠殺場もあったのでした。
鳴き声は聞いたことないけれど、臭いはすごかったです・・・。




ようこそ! 「東方見便録」は名著(?怪著?)ですよね。