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「キングダム・オブ・ヘブン」と「キネマ旬報5月下旬号」

招待券が手に入ったので、善は急げとばかりに、公開初日に観てきました。
試写会を観た友人が「アメリカでは絶対にウケない」と言っていただけあって、実にまともな十字軍映画です。まともというのは公平だということ。公平だということは、キリスト教徒の蛮行をきちんと描いているということです。で、史実通りに、十字軍は敗退する。

「指輪」のレゴラス役でスターダムに躍り出たオーランド・ブルームくんが演じるのは、フランス人のバリアン・オブ・イべリンだと。うーむ。バリアン・ディブリーヌと言ってちょうだいな。
そして、エルサレムで彼を待つキリスト教徒たちも、みんなフランス人。
最後にリチャード獅子心王がちらっと顔を見せますが、彼だって、フランス語を喋って大きくなった、「なんちゃって英国人」。なにしろお母さんはアリエノール(エレアノール)・ダキテーヌですから。一応英国王やってますけど、「自分こそフランス国王になるべき人間だ」ぐらいのことは思っていたにきまっている。

こういう映画はフランスにこそ作ってもらいたかったです。
フランス語を喋るフランス人を観たかった。
それだけではありません。
イスラム教徒を蹂躙するフランス出身の十字軍の指揮官の醜悪さと、「聖戦」に名を借りた侵略が失敗に帰したという過去の事実を描くのだったら、フランスの映画人にやって欲しかった。
もしもこういう映画をフランスで作ったら、たぶんフランスの観客は受け入れただろうと思うのです。
フランスの観客だったら、「我が国は長い歴史の中で、良いこともしたし、愚かなこともした。でも、だてに長く国をやってるわけじゃない。失敗から多くを学んだのだぞよ。アメリカさんはお若いから、まだよくわからないのかもしれないけど、これを観てちいっとはものを考えてごらん」と思いながら観るのではないかしら。
それに、アメリカ一人勝ちの現代世界におけるフランスの、「存在意義」とまでは言わないけれど、「役どころ」は、まさにそれでしょう。
せめてフランスぐらいがアメリカをチクチクやらなくてどうする?
だから、こういう映画はフランスで作ってもらいたかった。

えっ? フランスには、こんなにお金がかかる映画は作れない? がぴーん。

おもしろいことに、この映画の登場人物の中で、いちばん魅力を感じたのは、素顔を見せない人でした。
仮面というのは不思議な力を持っています。ジャン・コクトーの「美女と野獣」では、コクトーが愛してやまなかった当時の二枚目俳優ジャン・マレーが、野獣の仮面をつけて演じているのですが、その野獣が、観ているうちにどんどん素敵に見えてくる。最後の最後に人間の王子の顔に戻った瞬間、非常にがっかりしたものです。この映画に登場する仮面の人物も、その人間性とあいまって、観る人の心を打ちます。

いけないいけない! 
今日の話題は映画ではなくて、雑誌のつもりだったんでした。

c0025724_1001977.jpgこの映画を観て、世界史の年表を調べてしまった私です。

第二回十字軍と第三回十字軍の間の時代。そう言えばカドフェルは、第2回十字軍の帰還兵でした。というのは大きな勘違いで、彼が行ったのは第1回十字軍だったのでした。(この間違いに気づかせてくださったのは「まめおの日記」さんです。感謝をこめて、トラックバックさせていただきます。)若かかりし彼のロマンスを思うと、この映画の感慨もさらに深まるというものです。

そして、「1187年、サラディン、エルサレムを奪還」とありました。
サラディンの名前だけは覚えていたけれど、彼のアイユーブ朝というのは、エジプトだったんですね。
エジプトかぁ…旧約聖書の時代からの長いつきあいです(遠い目)

高校生向けの年表だけでは、これ以上のことはわからなくて、何かちゃんとした本を読まなくちゃならないなあと思いながら本屋に入り、なぜか映画雑誌コーナーに行き、手にとったキネマ旬報。そこに載ってたんです。
これだけは知っておきたい『キングダム・オブ・ヘブン』をわかりやすく観るためのキーワード

筆者名を見たら「伊藤盡」とありました。伊藤氏はトールキン&古英語&北欧神話エトセトラの専門家。「指輪物語」三部作の、日本語吹き替え版のエルフ語指導者で、右の「ライフログ」にある「『指輪物語』エルフ語を読む」の著者でもありす。「二つの塔」と「王の帰還」が日本公開されたとき、キネマ旬報に解説記事をお書きになっていました。昨年の夏の「キング・アーサー」公開時にも。

キネ旬編集部ではきっと、「西洋史は伊藤先生に頼め!」が合い言葉になっているのでしょうね。

キングダム・オブ・ヘブン@映画生活

by foggykaoru | 2005-05-15 01:01 | 西洋史関連

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