言葉を育てる---米原万里対談集
2012年 08月 15日
前半はいまひとつだったので、読み捨てるのにちょうどいいと思いながら読んでいたら、中盤の養老孟司との対談あたりから面白くなってきて、つい日本にまで持ち帰ってしまった(苦笑)
イタリア語通訳の田丸公美子との対談は知的な漫談。
そして最後の糸井重里との対談。これが最高。これを最後に持っていった編集者は偉い。
ふつう、人は外国語と対峙することによって、言語に関する考察を深めていくものである。米原さんが言語について語れるのも、子ども時代に習得し、長じてからは通訳として言語と言語のぶつかりあいの現場でもまれてきたからこそ。その米原さんと、ほぼ対等に話ができるのは(同業の田丸さんを除いたら)糸井重里だけ。
というわけで、
糸井重里は頭がいい
というのが結論(笑)
ほとんど内容を忘れてしまったけれど、ものすごく印象的だったのは
「外交上、通訳の誤訳が問題になるのは、公務員つまり外務省の役人が通訳をしたときだ」という話。
役人はなにしろ無責任だから(!)、元原稿が変でもそのまま訳してしまう。
一方、プロの通訳は「これをそのまま訳したらまずいですよ」と指摘し、なんとか元原稿を訂正をさせようと努力する。(少なくとも米原さんならそうする)
だからと言って、プロの通訳のほうがいいのかというと、そうとも言い切れないかも、、、というのが米原さんのすごいところ。
なぜなら、直訳して外交上の問題になれば、その後の処理として、「日本ではこういうことを言いたいときには、こういう表現をするのだ」という解説がなされることになり(要するに、一種の情報開示がなされるということだ)、ひいては異文化理解につながるであろうから、というのだ。うーむ、深い。
ためになる本です。真面目な学生諸君に薦めます。
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by foggykaoru | 2012-08-15 23:22 | バベルの塔 | Trackback | Comments(2)

抗議なのか謝罪なのか良く判らない…
曖昧にしたいという意図がまるわかり
民間(マスコミ)は刺激的な事が欲しくて、より過激に訳してしまいますし…
もっとも普仏戦争の際には、プロシア政府は外交文書をワザと誤訳して国民の反仏感情を煽って開戦・勝利に持ち込んだとか?
言葉は武器ですものね