メモリークエスト
2012年 09月 22日
「あなたの探し物を高野さんが探します」という企画もの。結果的に5人の人物を探す旅になる。
まあ、コンゴの密林の奥の湖で幻獣を探すとか、アヘン栽培地域に潜入するとか、2つの国境を非合法で越えるとかいう旅に比べたら、ぐんと楽な旅だから、まったりとしたムードで始まるのだけれど、読みだすとこれはこれで面白い。どこに行っても高野ワールドが広がるのがさすがだ。
高野さんは長年世界中を旅してきているのに、意外に旅慣れていない、というか、いざ現地に着いてみて、「しまった!」とか「あれ?」とか、「そうだった!忘れていた」ということが多いような感じがする。
これは悪口ではない。
旅行記を書く人間として、とても大切な資質なのではないか。
旅先で見聞きするものに敏感に反応するためには、スレてしまってはいけないのだから。
高級リゾートであるセーシェルでの苦労が笑える。世の中にはバックパッカーには身の置き所がない場所があるのだ。ヨーロッパだったらどういう旅のスタイルであっても大丈夫。四つ星ホテルでも、ユースでも、それなりに旅を楽しめる。逆に、1人旅だったらバックパッカーの旅が正解、というエリアもある。たとえばミャンマーとか。
結果的に、高野さんは5人の尋ね人のうち、4人を探し当てるのだが、豊富な旅のキャリアの蓄積があってこその成功。唸ってしまった。
世界情勢に翻弄されながら生きていく人間の姿も浮き彫りになり、この本は(というより、高野さんの旅本に共通して言えることだが)実はためになる。
巻末に「メモリークエスト第二弾」の応募要項があった。
締め切りはもう過ぎてしまっていて、あら残念。
と思ったけれど、高野さんに依頼するような探し物はいくら考えても思いつかなかった。
この本に関する情報はこちら
by foggykaoru | 2012-09-22 22:18 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)